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・おっぱいの大きい人型ホムンクルスを作れと言われても…… 1/2

 師匠を工房の中へと招くと、興味深そうにあちこちを見回すので、元弟子として少しだけ誇らしい気分になった。

 しかし注文の方は最低だ。せめて『おっぱいの大きい』というオーダーさえなかったら、同じ男として、魔導の道を行く者として理解出来なくもなかった。


「ポーション工場のアレをパクったのか。やるじゃねーか」

「ええ。ちなみにあそこのオーブはメープルとシェラハが工場から物理的にパクってきたやつですよ。それより、本当に作るんですか……」


「おう、作れ」

「……だったら取引をしましょう。正式に俺たちの仲間になって下さい」


 この男は天才だ。それに魔導師というものは、単体で運用するよりも複数人で行動させた方が能力が輝く。

 俺たちの一人一人が最高の伝令役だからだ。


「いいぜ、ただし上下関係はなしだ。そういうのはツワイクの王宮でもううんざりだからな……」

「わかりました、師匠にしては折れた方ですから、それで妥協します」


「んだとテメェ……?」

「引き替えに俺は師匠のために、巨乳のホムンクルスを作ります」


「俺はジジィのために動く。テメェは俺のためにかわいい巨乳ちゃんを作る。よっしゃ決まりだ!」

「本当にそんな条件でいいんですか……」


 所属国の決定はその者の人生を変えるというのに、師匠は本気でこの条件で飲むようだ。

 条件が釣り合っているようには思えなかった。


「俺もそろそろ嫁さんが欲しくてな。テメーら見てたらなんかよ、そんな気になっちまったんだよ」

「だったら普通に相手を探して下さいよ……!? 町に出れば美人のエルフが山ほどいるじゃないですか!」


「うるせー! 作るのか作らないのか、どっちなんだっ!?」


 多大な恩があるのは事実だ。

 ところどころというか、全体的に尊敬出来ないだけで、恩返しはしたい。可能ならば普通の形で……。


「ツワイクを首になって開き直ってませんか……」

「それはテメーだろ」


「まあ、そこは否定しません」


 本棚から、ホムンクルス関連の研究本を取り出した。

 作業用のテーブルを置いて、師匠と一緒にそれをのぞき込む。


 昔は彼に教わるだけだったけれど今は違う。

 注文はやはり最低だが、師匠に立派になったところを見せたい。


 ページをめくってゆくと、ようやく人型ホムンクルスの項目を発見した。


「これですね。材料は――これと、これが足りません。どちらもかなりのレアアイテムらしいですよ。ああそれと、理想の女性の髪の毛も必要だとあります」

「コイツを手に入れてきたら作ってくれるんだな?」


「いいですよ。もし材料があれば、俺だって試してみたいですから」

「その言葉、忘れんじゃねーぞっ! おっ……」


 するとそこに来客があった。確かこの人は、メープルの昔の知り合いだったはずだ。


「よう、探したぜアル。小金ができたんでよ、ちょいと飲みに行かねーか? 錬金術師様も元気そうだな、いつもメープルが世話をかけるわ。いやぁ……アイツってあの性癖だろ? 嫁の貰い手があって良かったわ、マジでよ……」


 冒険者のおっさんにポンポンと肩を叩かれて、唐突に感謝されてしまった。

 その気持ちはわからないでもない……。


「飲みの誘いは嬉しいが……テメェを男と見込んで頼みがある……」

「なんだよアル、水くせぇな。俺とお前の仲だ、なんでも言えよ」


 そのおっさんの前にうちのおっさんが迫って、深刻な眼差しを向けた。


「実はよ……ここにある材料を集めると……。ぶつぶつ……」

「な、何ぃぃっ!? 従順な、きょ、巨乳のお姉ちゃんまで作れるのかっ!? よしやろう、ぜひやろうっ、こりゃ飲んでる場合じゃねぇっ、いくぞ相棒!」


「そう言ってくれると思ったぜ。んじゃぁな、バカ弟子! 材料が集まったらだだ捏ねるんじゃねーぞ!?」

「捏ねませんけど、全力で呆れてはいますね……。どうしてあなたはそうなんでしょうね……」


 俺は師匠と気のいいおっさんを見送った。

 あのおっさんは最近メキメキと頭角を現しているギルドの成長頭だそうで、遅咲きの成長期が来ていると、受付のカマカマ野郎が言っていた。


 しかしそうそう簡単にレア素材が集まるわけがないので、今日はもう休みで確定的だ。




 夕方。夕飯がもう一品増えたらいいなと、湖にメープルと一緒に釣り竿を垂らすことになった。

 二人で桟橋に腰掛けて、必要もないのにピッタリとくっついてくるのを好きにさせて、夕日にキラキラと琥珀色に輝く湖水を見ろした。


「今日も一日が終わるな」

「うん」


「腹減ったな」

「うん」


「シェラハは良い嫁さんだな」

「うん……ユリウスと結婚して、大正解……」


 最初はあれこれと言葉を交わしていたけれど、段々と話題がなくなって、無為の時間を過ごすことになった。

 それでもメープルは好意を示すように、人の肩に頭を寄せてくる。


 嫁さんっていうより、まるで娘か妹みたいだった。


「ユリウス。こっち向いて……」

「なん――ンブッッ?!」


 そう思っていたのは数秒までのことで、メープルは振り返った俺に不意打ちのキスをお見舞いしてくれた。


「な、何をする……」

「喋らないのもなんだし……夫婦っぽいこと、してみた……」


「今の、夫婦っぽいか?」

「ん……もっと過激な方が、夫婦っぽい……?」


 彼女はなんでもない様子で首を傾げて見せるけれど、興奮に頬が色づいていた。

 可愛らしいを嫁さん貰ってしまったものだ。頭をポンポンと撫でると、幸せそうな笑顔が返ってきた。


 幻の世界に迷い込んでしまったかのような、ツワイクであくせくと生きていた頃からすれば嘘みたいな気分になった。

 俺たちヒューマンからすれば、正しくここは幻想の国シャンバラだった。


「そういうのは日が沈んでからにしてくれ……」

「ぇ、それって、前フリ……?」


「ただの言葉のあやだ。痛っ……!?」

「はぁ……失望した……。やっと、誘ってくれたとばかり、思ったのに……」


「そういうのはゆっくりやりたい。まだ出会って二ヶ月だぞ」

「それ、男のセリフ……? メープル、お前をメチャクチャにしたい……とか、言えばいいのに……」


「メチャクチャにしたい」

「ッッ……!?」


 最近、メープルのことがよくわかってきた。

 自分から人を挑発する分には平気みたいだが、こちらから迫ると意外と純情だ。

 だからなおさら、まだ手を出す気になれない。


本作の宣伝拡散に協力して下さり、みなさまありがとう!

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