表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/308

・そしてついに、結婚初夜――

「し、しししっ、舌入れんなよっ、人前だぞこらっ?!」

「あ、人前じゃなかったら、おっけー……?」


「よくねーよっ、よくねーよっ! お前今、大人の階段3段くらいすっ飛ばしたからなっ!?」

「へへへ……その反応が、嬉しい……。ユリウスは、乙女心がある……」


「公開処刑かよっ!」


 お師匠さんがお腹を抱えて転げ回っている。

 やったね、ユリウス。師匠はユリウスのこと愛してるよ。


「ごめん、私、育ち悪いから……。あ、次は姉さんの番ね……」

「は、はいっ……!」


 姉さんが上擦った声でガチガチに固まった。

 そんな姉さんの頬に私はチューして、それから腰を押してユリウスの正面に運んだ。


「ユリウス、してあげて……。ベロチュー?」

「ひっ!? む、むむ、無理よっ!?」


 姉さんが逃げようとするから、私は腰をユリウスの方に押し戻す。

 この2人はくっついたり離れたり、見ててまどろっこしい。もっと押し込んだ……。


「シェラハ、こっち向け」

「で、でも……人前で、人前でするなんて私……。んっっ……!?」


 残念、ユリウスは舌を入れなかった……。

 だけど情熱的に姉さんの背中を抱いて、のけぞって逃げる姉さんの唇を荒々しく奪った。これはこれで、エロい……。


「フミャァァ……ウミャァァァ……ッ」

「よしよし、気持ちはわかる……。んちゅー……」


「ブミャァァッッ?!! ななななっ、何するミャァァーッッ?!」

「えと……おすそ分け……?」


「ありがとミャ♪ じゃなくて、なんてことするミャーッッ!」


 なんてカオスな結婚式……。

 安心して、8割私のせいだって自覚はある……。


「しっかし、いきなり重婚選ぶとかさすがだねぇ……カカカッ!」

「どちらか片方だけなんて、そんなの選択肢に最初からなかっただけです」


「お、おう……言うじゃねーか……。そこまで開き直れるなら大したもんだ……」

「ユリウスさんたちには、これが最も自然な形なのでしょう。ユリウスくん、メープル、シェラハ、ご結婚おめでとうございます」


 それはそうと、私は用意しておいた小道具を取り出した。

 ユリウスにそれを見せると、口があんぐり開けっ放しになった……。


「買っちゃった……今夜のために……」

(ウィップ)っっ!? お前は俺に何をするつもりなんだよっ!?」


「だって、初夜が来ますよ、旦那様……?」

「しょ、初夜……っ。や、止めてよっ、せっかく考えないでいたのに……っ」

「だからさ、なんでそこに鞭が出てくるかと聞いているんだが……?」


「ユリウスに、使うため……?」

「使うなっ!」


「え、なんで……? 初夜といえば、緊縛プレイ……エルフの常識……」

「んなの聞いたこともねーよっ!」

「もうメープルッ、勝手に変な風習作らないでよっ!」


 小道具の効果は抜群だ……。

 はぁ……本気だったのに、残念……。まことに残念……。

 縛りたい、吊したい、ユリウスの悲痛なうめき声が聞きたい……。それだけで長パン一本はいける……。


「私はメープルを応援しますよ。新しい孫の顔を1日でも早く見たいので」

「気に入ったぜ、やっぱお前最高だぜ! 俺の分もバカ弟子をからかってやってくれ!」

「おっけー……ユリウス、夜は気を付けて……」


 鞭を引っ張って見せると、ユリウスがちょっと青ざめた。

 ユリウスはやさしい。やさしいからしばきたい……。


「もうっ、いい加減にしなさいっ!」

「あて……。へへへ……姉さんに、ゲンコツ食らったの久しぶり……」


「あ、ごめんなさい、つい……。痛かった……?」

「平気……。姉さん……一緒にしばかない……?」

「誘うな……っ」


 ユリウスの手をかわして、私は彼のたくましい胴にしがみついた。

 こうすると安心する……。


 姉さんに手招きして誘うと、姉さんはユリウスと手と手をつないだ。

 子供同士のカップルだって、もうちょっと積極的だと思う……。


 結婚おめでとう。祝福の言葉が式場に木霊した。

 みんながニコニコしていて、幸せいっぱいなひとときが過ぎていった。


 美味しいご飯を食べて、ふざけて笑いあって、無事でいる今を喜んだ。

 誰もが帰宅を惜しむくらい、とてもいい結婚式だった。


 そして――ついに初夜が来た……。



 ・



「姉さん、姉さん……ユリウスは……?」

「逃げられたわ……」


「え……」

「あたしね、冗談であなたの鞭をユリウスの前で振ってみたの……。そしたら……」


 見ると窓際のカーテンがスッパリと斬れていた……。

 姉さんが真空波を会得した瞬間だった……。


「これ、死ぬね……」

「そ、そんなつもりはなかったのよっ! あたしは普通に……普通に甘い夜を……な、なんでもないわ……っ」


 私なら逃げる。私だって命は惜しい……。

 姉さん、恐るべし……。


「私が慰めてあげる……。一緒に寝よ、姉さん……。だって今日からは私たち、本当の家族だよ……?」

「ふふ……そうね、そうしましょうか。夫婦らしいことは、ゆっくりやってけばいいわよね」


「それは、賛同しかねる……。けど今夜は、姉さんとずっと一緒にいられる幸せ、噛み締める……」


 初夜は姉さんのぬくもりに包まれて終わった。

 ユリウスが夜の町のどこかで、姉さんの鞭さばきに恐怖していると思うと面白くて、ぐっすり眠れた……。


 こうして私たちは、いつまでもいつまでも、家族として笑顔を絶やさずに幸せに暮らしていきました。

 めでたし、めでたし……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もう終わりなん?悲しいなぁ面白いお話だったのにまあ変に引き伸ばしてグダるより良き
[一言] えっ終わり?www
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ