・祝福の日 1/2
私たちのユリウスはシャンバラの歴史にその名を刻んだ。
ユリウスの天才的な転移術が各地に窮地を知らせ、それが救援部隊の到着を大幅に早めて、バザー・オアシスの防衛を可能にした。
彼のポーションとエリクサーが前線の兵を不死身に変えた。
軍と義勇兵と冒険者による連合軍は、10倍の敵兵力を平野で受け止めた。
救援が到着して兵力が膨れ上がるまで、戦士たちは肉を引き裂かれようと、腕を落とされようと、勇敢に戦った。
彼らは、エルフが死を恐れる弱い種族ではないと証明した。
非力で小柄なネコヒトが戦場で活躍出来ることも、シャンバラの民が強いと証明した。
でも、後世の歴史家はこの戦いを、大げさに話を盛ったと評価すると思う……。
それはきっと避けられない。
だって、ユリウスが最後に切ったカードは、まるで神話の神々が放ったとされるメギドフレイムを再現するような、あり得ない力だったのだから……。
前線で戦っていた兵士たちは、口々にこう言った。
まるで世界を焼き払う終焉の炎のようだった。
自分たちまで巻き込まれそうで怖かった。
神の奇跡だと思った。神々が悪しき軍勢に天罰を下してくれたと思ったと。
3つのメギドジェムは、合流するはずの敵増援をも巻き込み、最前線だけを残して全てを焼き払った。
砂漠は神の炎を受けて終末の世界のように赤熱し、やがて冷めて、一帯をガラスの大地に変えた。
こうして私たちは53名の尊き戦死者を出したものの、圧倒的な快勝でシャンバラの民を守り抜いた。
回復薬の切れた前線に、爆発式のエリクサーによるオーロラのように輝く霧と暴風が現れて、多くの命を救った点も、モチのロンで外せない……。
凄過ぎる……。嫁として鼻が高い……。
天より降臨した神にも等しい活躍に、シャンバラの人々はユリウスをあがめた。
その後は残党探しの追撃戦が始まり、闇の迷宮で抗戦していた私たちを救援部隊が助けてくれた。
歳の離れた兄さんが泣きそうな顔をしてて、なんからしくなくて笑えた……。
都市長の胸に飛び込んで、父さんと何度も呼んで涙を流す姿を見たら、同じ父親に拾われた養子なんだって実感も湧いた……。
それからしばらくは、軍と冒険者たちがシャンバラ中の砂漠を回って、残党探しと原因探しに努めたけど――結局、地上にモンスターがあふれた原因はつかめなかった。
きっと迷宮がシャンバラに現れたことと、今回の未曾有の危機は繋がっている。
ユリウスと都市長はそう推測している。
私もそう思う。迷宮から富だけ吸い上げることなんて、きっと出来ない。
都市長が議会に軍の増強を提案すると、反対ゼロで法案が可決した。
私は、私たちのシャンバラが変わってゆくのを感じた。
でも怖くない。ユリウスと姉さんが隣にいるから、きっと大丈夫。
ユリウスと姉さんがもっと笑顔になれるように、エロい方向も含めてがんばろうと決めた。
エロは正義……。エロは不可避……。そこは絶対に譲れない……。
そして、あれから約10日後――
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