・変ワラヌ、愛ヲ
「あれは……あれはその、つい……。ついお前が、だって綺麗で、どうしても、その、衝動が止まらなかったみたいだ……」
「わお……」
「そ、そう……そうなの……っ。あ、あんまり悪い気はしないわ……っ」
正直、嫌な気分ではない。いやむしろ心の奥底で、俺は2人から愛の告白に感動していた。
喜びのままに、もはや逆らいようがないほどに一時の感情に流されかかっていた。
人生を左右させる大きな決断を迫られているというのに、なぜかそこに不安はなく、あるのは期待と、ワクワクと、抑え切れない激しい喜びだけだ。
もしも人目がなければ、床の上で転がり回った後に、両手を上げて飛び跳ねて、それから踊り回りたくなるほどに、色ボケした感情が胸の中で大爆発していた。
「ユリウス、私たちと結婚して……?」
「あ、あなた以外はもうイヤよ……。あなたが、あたしにあんなことするから……ッッ……、もうっ、責任取りなさいってば……っ!」
ああそうだな、もう無理だ、このまま流されてしまおう……。
後悔するのは後でいい。後でどうとでもなる。感情に身を任せて今こそ返事を返そう。
「俺もずっと、一緒に暮らせたらいいなと思っていた。二人といると、とにかく毎日が楽しい。ワクワクする。朝から浮ついた気分になって、まるで夢の中にいるかのようだ! だからどうか、メープル、シェラハ、俺と結婚してくれ!」
ニーアと都市長が興奮の歓声を上げた。
シェラハゾは高ぶる感情に耐えきれなくなったのかショールで顔を覆い、メープルは得意げに笑っていた。
「では神官さん、お願い出来ますかな?」
「ハイハイ、オ任ヲ……(・へ・)」
「汝、メープル、シェラハゾ、ソシテ、ジョン――(ー_ー)」
だから、ユリウスだっての……。
「暑サデ、熱暴走シソウナ、日モ。寒サデ、基板ニ、結露ガ滴リソウナ、日モ。砂嵐デ、塗装ヲ剥ガサレソウナ、悲惨ナ日モ。変ワラヌ、愛ヲ、誓イマスカ?」
「それ全部ゴーレム視点じゃねーかっ!」
「違イマス。ニーア、タチハ、ロボデス(・へ・)」
これは人選ミスだな……。
ニーアたちは祭壇の上で、抗議するように跳ね回った。和む光景だが、愛を誓う雰囲気ではない……。
「誓う……。シバきたくなる日も……吊したくなる日も……私は、ユリウスに永遠の愛を誓う……。だって……おでこ叩かれると、幸せになるから……」
「はは……お前らしいな。てか人をシバくなっ、吊すなっ!」
「でも、夫婦は……性癖レベルで、分かり合う必要が、あると、思うよ……?」
「……いきなり真顔で正論っぽいことを言うな」
悪いがそっちの趣味には付き合えない。
ははは、今さらだが、少しだけ後悔して来た……。
「あたしも誓うわ。どんな辛い日も、悲しい日も、ユリウスがボケたお爺ちゃんになっても、あたしは最後まであなたを見守るわ」
「なんでお前らは、いちいちツッコミどころを作らなきゃ気が済まないんだ……」
エルフとヒューマンでは寿命が違い過ぎる。
それを承知で俺を選ぶというのだから、それはとても光栄なことだ。
「ジョン。アナタモ、誓イヲ(・ ・)」
そう言われて俺は一歩下がると、心臓に胸を当てて片膝を突いた。
「ああ……。ヒューマンとエルフの神、2つの神に誓おう。死ぬまで俺は、メープルとシェラハゾを支えて生きる。まだ愛を誓えるほど俺たちは時間を重ねてはいないが――だが必ず幸せにすると、2つの神に誓う。俺はシェラハゾが好きだ、メープルが好きだ、これからも一緒に居たい」
バカ正直な誓いは、姉妹を少しだけ呆れさせた。
どうにも歯切れが悪いが、誓いだからこそ嘘は吐けなかった。
「大丈夫だよ、姉さん……ユリウスは、ツンデレ……。ポーション工場で、3年間くすぶるくらい、超バカ正直なだけ……。本当は姉さんのこと、大好き……今夜、メチャクチャにしたいって、言ってるよ……」
「言ってねーよっ!? メ、メメメ、メチャクチャだなんて人聞きの悪いこと言うなよっ、おいっ!?」
「え……夫婦ですが、何か……?」
「何か、じゃねーよっ!」
「オ孫ノ顔ガ、楽シミデスネ(^へ^)」
「はい、とても。さぞや魔法や武勇の才に飛んだ優秀なエルフとなるでしょうね、フフフ……」
続いてニーアが祭壇に置かれた小箱を、小さな身体で持ち上げた。
小箱は3つ用意されており、どこからどう見てもそれは『最も重い契約の象徴』、結婚指輪に見えた。
この指輪をはめればもう後戻りは出来ない。
絶対に俺を逃がさない。だから婚姻で縛る。という、シャムシエル都市長の心配性な願いが叶うだろう。
「デハ、指輪ノ交換ヲ(=_=)」
それぞれのニーアが姉妹に小箱を手渡して、それが終わると俺の番だ。
覚悟を決めて、俺は自称ロボの変なゴーレムに手のひらを差し出した。
「……いや、待て。……外から何か音が聞こえる」
それは足音だ。1つや2つではない大勢の足音と、カチカチと金属がぶつかる物音が聞こえる。
直ちに転移して神殿の小窓から外をのぞけば――見渡す限りのモンスターの群れが、こちらに迫って来ていた。
さらに四方の小窓に飛び回ると、俺たちが極めて危険な状況にあることがわかった。
「な、何この足音……? 外に何がいたの、ユリウスッ……!?」
「静かに。そして落ち着いて聞いてくれ。……俺たちは今、モンスターに囲まれている。敵はゴブリン、ホブゴブリン、コボルト、オーク、トロル、ざっと亜人系が4、500体。突然だが、死の覚悟がいる状況だ」
どこからともなく現れた亜人系モンスターの群れに、崩れかけの神殿が囲まれていた。
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