・闇の婚礼 1/2
祭壇に進みながら頭上を仰ぐと、そこには青く晴れ渡る空と、脆くひび割れた天井があった。
神殿の佇まいは何もかもが洗練されていて、あちこちに細かなレリーフや彫刻が刻まれ、仰々しい柱が天へと無数に伸び、祭壇の奥には天秤を持つ女エルフの彫像が刻まれている。
しかし今やあちこちに砂塵が降り積もり、崩落した天井が瓦礫となって神殿を埋めて、祭壇のエルフ像も高く掲げた右手を失っていた。
見れば見るほどに、その神殿は滅びと栄光の残滓が入り交じる悲しい場所に感じられた。
邪魔な瓦礫を迂回して、ゆっくりと祭壇に近付いてゆくと、壇上に白くて小さなゴーレムが2体立っているのが確認出来た。
「ジョン(・_・)」
「ニーア、タチガ、神官ヲ、務メマス。マ、任セトケ(・_・)」
「サ、コチラヘ……(=_=)」
「あ、ああ……。俺はユリウスだ」
言われるがままにニーアにとってのジョンとやらは祭壇に近付く。
祭壇の左右には絹のドレスをまとったメープルとシェラハゾがいつもよりも慎ましげに立っていて、俺は彼女たちの間に挟まれる構図となった。
「よっ、ジョン……」
「いい加減そのネタしつこいぞ、お前ら……」
「でも……ニーアにとって、ユリウスはジョンだよ……?」
「……この状況で、そんな哲学的なことを言われてもな」
左を向けば薄桃色のウェディングドレスをまとったメープルがいる。
霧のように透けるベール越しに目と目が合うと、さすがのメープルも熱い恥じらいを覚えたのか、慌てて視線を外してきた。
ドレスは薄着を好む彼女らしくカットが多く、特に大きく露出した背中はまるで赤子のように綺麗だった。
「しかし、まさかお前まで爺さんとグルだったとはな……」
「ち、違うわよ……っ。だって、メープルと都市長が、強引で……。気付いたらこうなってたの……っっ!」
右を見れば、ブロンドの美しいエルフが胸を隠すように身をよじっている。
ドレスは胸の上部が大きく露出するもので、否応なく男の目を奪う魔力を秘めていた。
彼女の水浴びをのぞいてばかりいるこんな俺だが、近くで見ると取り分けに強烈だ。
シェラハゾはシャンバラの誰よりも美しく、刺激的な容姿を持った女性だった。
「とか言いいながら……さっきまで、ドキドキ……ウキウキ……お尻と胸、揺らしてた……」
「そ、そんなことしてないわよっ!?」
「してた……ぶっちゃけ、超、エロかった……。はぁはぁ……辛抱たまらん……」
「ううっ……だって、しょうがないじゃない……っ。こんなの、緊張しない方がおかしいわよっ!」
「お尻、振りながら……?」
「メープル、ソレ以上ハ、イケナイ(=_=)」
「非常ニ、ニーア、モ、ワカリマスガ……。イケマセン、旦那様、ヨヨヨ……(=へ=)」
後ろを振り返れば、都市長がニコニコと満面の笑顔でこちらを眺めている。
養子とはいえ大事な娘なんだろ? 俺なんかで、本当にいいのか……?




