・吹っ飛んだ家を最硬の補修剤で直そう 2/2
「手伝ってくれるのは嬉しいが、みんな仕事はいいのか……?」
「ユリウス様のためミャ! おみゃーらっ、アタイに恥かかせるんじゃないミャ、しっかりやるミャァ!」
「へいっ姉御!」
小柄なネコヒト族が長身のエルフたちを従わせている。
もしかしてこの白いネコヒトは、シャンバラでは大物だったのだろうか。
図体のデカい屈強な鎧男まで、その白くて綺麗なネコヒトに心まで平服していた。
「今日はヒヨッコどもを実践投入させるから、気にしないでいいミャ」
「そうか、だったらお願いする。直して欲しいのはあの壁だ。まずは木材で骨組みを作って、そこを錬金術で作った特別な泥で塗り固める。落ちないよう気をつけてくれ」
「ネコヒトにはなんでもない高さミャ」
「そそ……。ネコちゃんたちは、3階から落ちても、大、丈、夫……」
「本当かよ」
「やってみせるかミャ?」
「見ていておっかないから遠慮しよう」
ともかくそういう段取りになったので、骨組み作りを彼らに任せて、俺たちは壁材の準備に入った。
材料は砂だ。オアシスを少し離れるとそこら中に転がっている粗い砂を、壷に入れてかき集めた。
「ジョン。ニーア、モ、砂、集メマシタ(・_・)」
「だから俺はユリウスだって言ってんだろ……。ここに入れてくれ」
小型ゴーレムのニーアがどこからともなく現れて、砂集めを手伝ってくれた。
俺はその小さい割にやたら重い身体を持ち上げて、ニーアが木椀で抱える白い砂を壷へと移す。
そこにコンクルという名の白いキューブを加えれば、後は水を入れて混ぜるだけだった。
これで固まらなかったら大恥だな。
「コンクリート、トハ、似テ非ナル物、デスネ。不思議デス……(・v・)」
「なんだそれ?」
「混ゼルト、固マル石、デス(・_・)」
「へー……」
そうしていると、あの姉御肌のネコヒトが2階からこちらに声を上げて、ひょいと俺たちの前に飛び降りて来た。
あんなに高いところから飛び降りたというのに、彼女はなんでもない様子で立ち上がった。
「準備OKミャ! 次は何をお手伝いすればいいミャ!?」
「ネコヒト族って何気に凄いな……。ああそれで、これに水を加えて混ぜ合わせるから、それであの壁を塗り固めてくれ。固まるとき熱が出るから直接は触るなよ」
「かしこまったミャ! フ、フミャァッ?!」
「ああ、すまん。綺麗な毛並みだからついな……。いつも手伝ってくれて助かるよ」
猫にするように頭を撫でると、白いネコヒトが飛び上がった。
どうにもこいつらは、直立歩行をするでかい猫にしか見えない……。
「ユリウス、それ、セクハラ……」
「そうよ、勝手に女性の身体をベタベタ触るようなものよ。猫にしか見えない気持ちは、あたしもわかるけど……」
「ユ、ユリウス様になら、な、何されてもいいミャ……ミャッ、な、なんでもないミャァッ!」
許可が出たのでもう1度白いネコヒトをモフると、俺はオアシスから水をくんで壷に流し込んだ。
それを木の棒で混ぜ合わせて、これを運んでくれと彼女たちに依頼する。
白いネコヒトは長身のエルフたちに囲まれながら、壷を抱えて2階へと上がっていった。
「ネコヒト族って、かわいいな……」
「それって、女の子として……?」
「なんでだよ……。なんで動物としてかわいいって、言い直さなきゃいけないんだよ……」
「そ、そうよね……。はぁっ、正常な趣味でよかったわ……」
「なんでシェラハゾまで疑うんだよっ!?」
「だって……シャンバラだと……。そういう性癖の人、別に、珍しくない……。そういうお店も、あるよ……? 紹介する……? 控えめに言って、ニャンニャンパラダイスだよ……?」
知りたくもない情報をありがとよ。メープルの額を小突いた。
こうして俺たちはコンクルを混ぜ合わせた白い泥を作っては、それを冒険者たちと一緒に2階へと運んで、吹っ飛んだ壁の補修を進めていった。
投稿が遅れて申し訳ありません。
現在、たくさんのブックマークへの感謝の第二部製作中です。
これからもじっくりと続きますので、じっくりとお付き合い下さい。




