・吹っ飛んだ家を最硬の補修剤で直そう 1/2
当然といえば当然だが、朝食を作っていると都市長とその執事が家に押し掛けてきた。
寝ぼけているのかと、どちらも俺たちの報告を最初こそ疑った。
しかしシェラハゾが恥ずかしげに少し落ち込みながら、あの背筋のゾッとする握力でメキリと薪をへし折って見せると、納得する他になかったようだ。
「良かったら一緒に食ってくか? 爺さんの分も作ったぞ」
「おやおや、気づかいの出来るやさしい旦那様を見つけましたね」
「誰が旦那様だ、食わんなら帰れ」
「そんなこと言わないで下さい、もちろんいただきますよ」
朝食はパンと、ベーコンエッグと、干し肉にコショウとタマネギを加えてゆでただけのスープだ。
ハッキリと言って雑だったが、都市長と執事は喜んで食卓に加わってくれた。
「壁の修復ならもう手立ては付いている。実は昨晩、例のコンクルが完成してな、実験にはおあつらえ向きだ」
「あっ……。それがあればっ、やっとマク湖のみんなが家に帰れるのねっ!?」
「それは素晴らしい……。貴方はやはり天賦の才をお持ちです。いえ、世紀の大天才錬金術師と言っても、既に差し支えない域でしょう」
俺はエリートだ。ちょっとくらいおだてられたところで、決してニヤケたりなどしない。
賞賛には――あまり慣れていないので、だいぶ落ち着かないところではある……。
「試しに使ってみないと結果はわからない。爺さん、工員を何人か回してくれるか?」
「もちろん、すぐに動ける人員に心当たりがありますので、お任せを。フフフッ、朝から胸が躍りますね。貴方と一緒だと童心が蘇りますよ」
爺さんが執事に何かを耳打ちすると、彼は出された朝食を綺麗に早食いして、雅やかなお辞儀と共にうちの家を去っていった。
出された物をしっかりと食べてから行くところが気に入った。アイツは物静かだがいいやつだ。
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その後、食事を終えてしばらくすると、非常に残念なことがあった。
工員がここを訪れることになったので、シェラハゾが今日の水浴びを止めてしまったのだ。
いやそもそも俺は、彼女の水浴びをのぞいていたことを昨日に自白している。
非常に残念だ。もう二度とあの美しい光景を見られないのではないかと思うと、非常に残念でならなかった……。
「ユリウス、お手伝いさんが来たわ」
「早いな……」
「それもそのはずよ、正規の工員じゃないもの」
「どういうことだ……?」
「そんなの見ればわかるわ! い、いきましょ……っ」
明るい言葉とは裏腹にシェラハゾは俺の手を迷い迷いに握ると、薄暗い工房の外へと引っ張り出した。
「よっ、手伝いに来たぜ、錬金術師様!」
「アンタの作ったエリクサー、あれ最高だよ!」
「ああ、あれのおかげで俺たちゃまったく死ぬ気がしねぇ! だからお返しによっ、今日はお前んちの修理を手伝ってやるよ!」
「アタイも来たミャ!」
そこにいたのは正規の労働者ではなく、市長肝いりの冒険者たちだった。
あの姉御肌の白いネコヒトもいる。誰もが腰に武器を吊していて、目立つものでは魔法帽をかぶったネコヒト族もいた。
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投稿が定時より遅くなってしまってすみません。




