・土の迷宮で素材を集めよう 2/2
「どうした、行くぞ?」
「め、迷宮って、怖いミャ……凄く怖いミャ……」
「ヤバ過ぎ……。亀さんも、ユリウスも、どっちも、ヤバ過ぎレジェンドだ……」
「いや、アレはレアモンスターだから安心しろ。もしあんなのばっかりだったら、モンスター同士のケンカで迷宮がぶっ壊れるだろ」
「そ、そう……。あら、でも綺麗ね、これ……」
色とりどりに透ける鼈甲と、サファイアを彼女たちに渡して探索を再開した。
探索を進めてゆくと、泥人形ことアースマンや、ジャイアントバッド、人型ネズミのラットマンが立ちはだかったが、そんなものは俺たちの敵ではなかった。
「アースマン、燃やすの、おもろ……」
シェラハゾの細剣は泥の肉体を持つアースマンには無効だったが、メープルのファイアボルトの連発により砂岩へと戻った。
「ミャァァァーッッ、ネズミ怖いミャァァーッッ!!」
「ネコヒトがなんでラットマンを怖がるのよっ、普通逆でしょっ?! 痛っ、こ、このぉっ!」
白いネコヒトが巨大ネズミに追いかけ回されていたが、救援のシェラハゾの細剣が急所を貫き、ラットマンを瞬殺した。
その際に脚をラットマンに引っかかれてしまったようだ。
しかし俺たちに負傷という後退はない。
すぐにシェラハゾが持参したエリクサーほおばると、その傷口がみるみるうちにふさがって、最後は綺麗に消えてくれた。
こんな超回復薬を持った冒険者たちが迷宮を下ってくるなんて、モンスターたちからすれば理不尽でしかないだろう。
思えば母国で長らくくすぶっていた俺が、こんなチートアイテムを量産してしまえるなんて、今でも現実が信じられなかった。
「フミャァァァーッッ、大きいコウモリも怖いミャァァーッッ!!」
「とか言いながら、余裕で、やっつけてるし……」
ジャイアントバッドはネコヒト族の機敏さには敵わず、次々とレイピアの餌食になった。
キャラは濃いが、白ネコの俊敏さや的確さは、他のネコヒトたちをも凌駕していた。
「起爆させるぞ、フロアから離れろ!」
「ちょ、ちょっと待つミャッ、ユリウス様ァァッッ?!」
「待って待ってっ、やるならもっとゆとりを持って……っ! あたしもうルインタートルはイヤよっ!!」
それとルインタートルは俺が受け持った。
レアモンスターのはずなのだが、これはシャンバラの土地柄か何かだろうか。
俺は背の宝石から放たれる魔法マジックアローを短剣で弾き返して仲間を守り、転移と急所突きで迷惑な亀を自爆させた。
撃破後、その爆心地に残っていたのは親指大のルビーだ。
悪くない。ルインタートル大盛りという難点こそあるが、いずれこの迷宮はシャンバラの産業に大きく貢献してくれるだろう。
「マジでガクブル……。あの亀、トラウマに、なりそ……」
「そもそもなんで自爆するのよっ!?」
「存在そのものに神様の悪意を感じるミャ……」
死なば諸共。昆虫などの群生生物の世界では希にあることだ。
その後もモンスターの群れと出会ってはドロップを回収していったが、目当ての『大地の結晶』とはまるで出会えなかった。
・
それでも諦めずに暗闇の迷宮を進んで、進んで、進んでゆくと気づけば地下5階だ。
俺たちは俗に言われる、ボス部屋の前に到着していた。
脆い土の扉を崩して中をのぞいてみれば、3人の顔が青ざめるのを目撃することにもなった。
「でかいな……。土の迷宮あらため、宝石亀の迷宮とでも名付けるべきか」
大部屋の中央に、体長3、4mはあろう『キング・ルインタートル』とでも名状し得る巨体が、俺たちを待ちかまえていた。
「ま、待って、待ちなさいよ、ユリウスッッ! あたしあんなの絶対イヤよっ!」
「爆発したら、この階層ごと、潰れちゃったりして……」
「ダメミャッ! アレだけは、アレだけはシャレになってないミャァァッッ!!」
左右からメープルとネコヒトに腕を掴まれ、シェラハゾには羽交い締めにされた。
その大きな胸が背中にムニュリと当たると、スケベ心に負けて闘争心が鈍るから困ったものだった。
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これから第二部の量産体制に入ります。
開発速度によっては、第一部(15万字)完結後に、数日のおやすみをいただくかもしれません。




