・白銀の導き手で迷宮を発掘する 2/3
出発するなり、俺たちはとある深刻な問題に気づいた。
俺たちの潤滑油となっていたのは都市長やメープルであり、いざ無人の砂漠で2人っきりになると、言葉が何も出てこなかった。
俺たちは無言でラクダに揺られ、午前の日差しに光るダウジングロッドを見下ろしている。
「あー、なんだ。その……いい天気だな」
「と、当然よ……っ。滅多に砂嵐が吹かない土地だから、シャンバラは栄えたの……っ」
「言われてみればいつも晴れてるな」
「ちょっとっ、あ、当たってるっ、当たってるからっ! う、ううっ……」
「す、すまん……。いや、ところで何が当たってたんだ?」
「ちょっとっ、無自覚だったの!?」
「だから何がだと聞いている」
「それは――い、言えるわけないでしょっ、もうっユリウスのバカッ!!」
探索を行うには、片方が手綱を引いて、もう片方が白銀の導き手を両手に持たなければならなかった。
加えてラクダの機動力を使わないというのも効率が悪い。
よって、シェラハゾはラクダの背の上で、俺に背中を抱きすくめられる構図に陥っていた。
密着した身体と身体が蒸れて、なんだかずっと変な感じだ……。
「なぁ、やっぱりこれ、再考の必要があるんじゃないか……? なんか、クラクラしてきたぞ……」
「そうだけど……あ、あたしは、我慢出来るわ……。あたしも、クラクラするけど……へ、平気よ……」
「平気じゃなくないか……?」
「へ、平気ったら平気よっ! オアシス復活のためにも、あたしたちが、がんばるのよ……っ」
そうは言うが白銀の導き手に反応はない。
失敗作だったりしないか、少し心配になって来た。
「その気持ちはわかるが、こっちは気が変になりそうだ……」
「あ、あたしだって好きで、こ、こんな……。だってしょうがないじゃない……っ!」
互いにマントをまとって肌を保護しているとはいえ、密着は密着だ。
汗ばんだシェラハゾの匂いが甘く鼻孔に広がって、やっぱりこんなの気が変になりそうだった……。
「お前って、結構上品だよな……」
「な、何を急に……」
「水浴びを済ませるといつも髪をとかしてるだろ」
「ぁ……っ」
彼女は急に何を驚いたのだろう。
俺は最初こそ不思議に思ったが、すぐにそれが過去最悪の大失敗であることに気づいた。
なぜユリウスは、シェラハゾが水浴びの後に髪をとかすことを知っている?
いつものぞいていたからだ。
それは間接的な自白も同然だった。
「ち、違うっ! 髪が濡れてたら、水浴びの後だってわかるだろっ!? い、いや、もしかして、これも、墓穴か……?」
ここでうろたえること自体が追加の自白だった。
潔白ならば平静にしていればいいだけのことで、これでは見ていましたと、そう答えているにも等しい。
「小さい頃、母様がいつもしてくれたから……。とかすのは、習慣かな……」
「習慣か……」
「うん……」
俺の目の前で、シェラハゾのブロンドの後ろ髪が透けるように輝いている。
それを見ていると、いつも心には思うが、言葉には出来ない言葉が喉からはい出してきた。
「前から思ってたんだが……そんなに綺麗な髪、初めてだ……」
「ぇ……。ぁ……ありがとう……。ふふふっ、それ、メープルにもよく言われるわ……」
「い、いや、北方のツワイク人は剛毛だから、特にそう見えるだけで……っ。俺は、こんなに綺麗に見えた人は、お前が初めてなだけで、別に……。いや待った、やっぱり今のなしだっ、なんでもない!」
「あ、ありがとう……あたし、嬉しい……」
何を言ってるんだ、何を言ってるんだ、俺は何を言ってるんだ……!?
長い沈黙が生じて、俺はその間もずっと心臓の鼓動を激しく脈打たせていた。
クラクラするのも当たり前だ……。
頼む、白銀の導き手。そろそろ反応をくれ……。
「あっ、動いたわ! どんなに揺れても全然動かなかったのが、ロッドの先があっちの方に……!」
「よし来たっ、行くぞ、シェラハゾ!」
「うんっ!」
彼女にしては嫌に素直な返答に戸惑いながらも、ダウジングロッドが示す方角にラクダを導くと、まるで磁力で引かれているかのようにロッドも向きを固定させた。
やがてあるところまでやってくると、正面方向を指していたロッドがクルンと真後ろに反転した。
それは俺たちが心待ちにしていた契機だ。
シェラハゾは逃げ出すようにラクダを飛び降りて、俺も背の上で開放感を満喫した。
嬉しいシチュエーションだったのは認める。
だが気が気じゃない状況が続くのは、甘ったるかろうとそれはストレスだ。
心臓が落ち着くのを待ってから、俺もラクダを少し離れた場所で休ませて背から降りた。
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