・休日と買い物 シャンバラに帰国してから姉妹の様子がどうもおかしい 2/3
暖かくなってきたのでメープルを真ん中にして街に買い物に出た。
両手に花みたいなのは困るが、大好きな姉と俺に挟まれて、銀髪のエルフが足取りを弾ませているのをのぞき見るのは……うん、これはなかなか悪くない。
俺たちが暮らすオアシスは行政区画と呼ばれていて、全てのオアシスのほぼ中央に位置しているそうだ。
そこから朝日に白く光る砂漠を抜けて、一帯で1番大きなオアシスに向かった。
都市長はまたラクダを貸してくれると言っていたが、それだと1日がすぐに終わってしまいそうで、歩きを選ぶことにした。
「で、何を買うんだ? 食料とかか?」
「それは都市長が、回してくれる……。もっと、凄い買い物、だよ……」
「だったら俺もなんか衝動買いしてみるか。……しかし、なんでこっち見ないんだ?」
「えっ!? べ、別に……な、何も見てないわよっ、みてないからっ、あたしっ!」
「むふ、むふふ……♪ よきかな……♪」
今日は特にシェラハゾの様子がおかしい。
また何かあったのか俺に視線を合わせてくれなくなって、だがこちらを隙を突いては視線を送ってくるようになった。
よくわからん……。
「メープル、お前何を知っているんだ?」
「ダメよっ、言っちゃダメッ!」
「言わないよ……。姉さんには、そうする権利、あったし……むぐぅっ」
「今の忘れてっ、なんでもないからっ!」
「その様子はなんでもある態度だが、わかった、そうする」
朝の砂漠は白く、昼は黄色くて、夕方になると黄金色になる。
その砂漠の彼方を見つめると、一際目立つ大きなオアシスが見えてきた。
「あっちのバザーとは毛色が違うな。建物が多い」
「職人や労働者が集まる街よ。宿屋も多いわ」
「あと、いかがわしいお店も、ある……。行く? ぼいんぼいん、だよ……?」
「行かない。この3人で行ってどうするんだ……」
「おお……それは盲点……」
メープルのおかげで話題が絶えない。
変な方向に脱線しがちな面はあるものの、俺たちは仲良く言葉を交わしながら大きな街へと入った。
目当ては職人が集まる職人街だそうだ。
最初に入った場所は宿屋がひしめくエリアで、時間帯もあってか慌ただしかった。
「ユリウス……ずっと黙ってる。何考えてる……?」
「え、ああ、すまん……。不覚にも休みなのに仕事のことを考えていたよ。……コンクルの材料調達も出来ることなら、やっておきたくてな」
「そっちはあたしたちがやっておくから、ユリウスが気にすることじゃないわ」
「そうもいかない。俺は新米だからな、一通り自分でやりたいところだ。必要になるのは大地の結晶に、石灰石に、トレントの魔琥珀、あと砂だったな」
「砂ならそこら中、腐るほどある……」
「石灰岩も国内で取れるわ。後であっちのバザーに寄りましょ」
ならば必要なのは大地の結晶だ。
これは土か岩系の迷宮で主に手に入る。そう師匠がくれた教本に書いてあった。
「大地の結晶は……?」
「そっちはギルドの連中次第だな。既に手に入ってるならこっちの手間が省けるんだが……。そうでなければ、輸入。あるいは土か岩系の迷宮そのものを、新規に掘り当てるしかないか」
「迷宮を新しく発掘って……それが出来たら苦労はないわよ」
マク湖の民を救ってやりたいが、現状は前途多難だ。
場合によっては、別の方法で迷宮の大穴を塞いだ方が早い。
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