・面接官メープルと入学志望者たち - ユリウス像デビルタイプ・フォーム2 -
・メープル
ユリウスはサンディの才能を危ぶむけれど、私たちはサンディに転移魔法の才能が目覚めてとてもよかったと思っている。
だってユリウスはああいう人。
今でこそ落ち着いてきているけれど、ユリウスは好き好んで危険に飛び込む悪い性質がある。
サンディはそんなユリウスを監視してくれる。
ぶっちゃ私はサンディの才能は、ユリウスを見張るためにあると思っている。
ユリウスもサンディも、どっちもどっちなところはあるけれど、2人一緒に居てくれたら私たちは安心だ。
今回の遠征もユリウスがサンディと別れて、勝手にガルツランドに乗り込んで行ったと知ったときは、ドン引きだったけれど……。
やっぱりあの人は、危険を冒すことが大好きなんだろうなと思った。
さてそれはそうと。
話は変わるけれど、今日でユリウスが帰ってきてからだいたい半月が経った。
学校作りは超順調。
というかもう完成した。
正式な名前も決まって、【森の園ミズガルズ】と呼ばれるようになった。エルフの古い言葉で、『真ん中の国』って意味らしい。
命名者は都市長。名付けられたのは今から2年前。
計画の草案段階で、既にもう都市長の中でミズガルズは名前を与えられていた。
第一期生の学舎である分棟は、まるで地面から生えてきたかのような超突貫工事で建てられた。
ちょっと前まで整地と土台作りをしていたかと思ったら、たった3日で立派な分棟がそこに生まれていた。
学校設備の納入の方が遙かに手間がかかったと、建築家のおじさんもおかしそうに笑っていた。
『お噂はかねがね……。しかし素晴らしい造形ですなぁ』
『あ、わかる……?』
もちろん、ユリウス像デビルタイプ・フォーム2も分棟の敷地に置かせてもらった。
『まるで動き出して暴れ回りそうな、この躍動感が素晴らしい……。片手間に作った作品とは思えませんぞ……』
『へへ……』
『いや素晴らしいオーク像だ!!』
建築家さんはわかってくれたけど、わかってくれなかった……。
ユリウス像だと説明したら、嘘くさい愛想笑いで褒めてくれた……。
とま……。
こうして分棟が完成し、このシャンバラに入学志望者たちが試験に集まってきた。
募集枠は30名。優秀な成績を残せば第一期生に選ばれる。
それに漏れても、第二期生への内定のチャンスがある。
面接会場でもある森の園ミズガルズ・分棟の前は、ヒューマンの若者たちでいっぱいになった。
みんなが学舎とユリウス像の威風に目を見開いていた。
学者の外装は、翡翠をベースにしたクレイ・ジェムをコンクルの上に塗ったもので、廊下は落ち着きのある瑠璃、教室は大理石をベースにした物使っていた。
窓はサファイアと、私の指輪と同じ無色のコランダムが使われた。
中庭は吹き抜けになっていて、雨天でも楽しめるように、ここにもコランダムの屋根が使われていた。
でも、孔雀石を使ったトイレはちょっと趣味が悪いと思う……。
便器まで赤いと、なんだか不安になる……。
・
「あ、ども……。楽にして。私、堅苦しいの、苦手だから……」
「よ、よろしくお願いします!」
その日、私は面接官として、小さな用務員室で生徒の面接を行っていた。
なんで都市長が私にこの仕事を振ったのか、最初の生徒を面接するまではイミフだった。
姉さんの方がずっと人当たりがいいし、ユリウスの方がずっと人気がある。
「じゃあ、最初の質問です。今……」
「は、はい……っ」
「どんなパンツ、履いてるの……?」
「……え? パ、パンツゥッッ?!」
でもやってみたらわかった。
こういうのは、ユリウスにも姉さんにも向かない。
姉さんは人当たりがよすぎるし、ユリウスは不器用だ。
グラちんは……うん。
女の子ばかり優遇しそうだからNGかな……。
グラちんは、男はみんな不採用にしかねない。
あれは、そういう人……。
グラちんは、ユリウス以外の男には見向きもしない。
「じゃ、パンツ見せて……?」
「こ、困ります……。でも、脱がなきゃ、不合格ですか……?」
「うーうん、もう、合格だけど?」
「は……はぃぃーっっ?!」
今回の私の仕事は、筆記や魔法の試験を通過した子たちの、本質を見抜くこと。
斜め上の質問をして、どんな反応をしたのかメモをして、その子の性質を先生たちのためにまとめること。
これ、結構面白かった。
投稿が遅くなりました。
向こう3話分は安定供給できます。
追記
別作品の投稿をこちらにしていました。
お騒がせしました。
愉快犯さん、ナナシさん、D祐さんご報告ありがとうございました。
皆様、ごめんなさい!!




