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・第一期生 - オドのタラ -

 翌朝、朝食の席でスカウトの旅に出る予定だと家族に報告した。


「うち、行くっ!!」

「ま、そうなるよね……サンディだし……」


 皆がメープルの言葉に賛同した。

 誰もサンディのわがままに反対することはなかった。


 ユリウスはサンディ以上に危ういやつだと、家族にそう思われているからだ。


「父、かわいい子を頼むのじゃ。ブ男は要らぬ」

「その通りだとも。かわいい女の子以外はスカウトしてこなくていいよ」


 この親あってこの娘ありだった。

 グラフとスクルズは本当によく似た親子だった。


「ユリウス、サンディを連れて行ってあげて」

「お願いパパッ、いい子にするからお願い!」

「お父さん……ダメって言っても、サンディはついて行くと思う……」


 みんな同じことを言うんだな。

 小さなシャンバラのお姫様を、俺は厳しい態度で見つめ返した。


「わかった、頼りにさせてもらう」

「やったぁーっ!! それでどこに行くのっ!?」


「そこは都市長の手腕次第だな。以前のように外交官として国を訪れ、許しを得て修学の誘いを行う」

「そう! 説得ならうちに任せて!」


「お前の行動力や社交性の高さは認めるが……。相手の機嫌を損ねないようにな?」


 サンディを連れて行くことに決まった。

 朝食を済ませた後は、一緒に都市長のところを訪ねて段取りを詰めた。


 出発が1週間後に決まり、それまでは錬金術師として品物の納品に努めることになった。

 その間に正規の外交官が各国で根回しを行い、段取りを整えてくれるという。


 どこの国におもむくかも、政治家である都市長の判断に委ねられた。



 ・



 融和にも繋がり、才能を持つ若者も支援できる。

 これは最高の計画だと思い始めていたが、俺の計算違いは家族だった……。


「やあ、ユリウス。君の本当の正妻はもしかしたら、シャムシエル様なのかもしれないな」

「待ってました……うずうず……ハスハス……」

「ユリウス、子供たちはもう寝たわ。もう、寝たの……」


 その晩も夜遅くまで、都市長と打ち合わせを行うことになった。

 同盟国から半分、それ以外の国から半分、試験による除いて、合計で10人ほど集めたいということになった。


 だが昨日のように寝室に戻ると、俺は三歩後ずさった。


「ユリウス、君は僕の好みではないが……居ないと居ないで、とても寂しい……」

「ごめんなさい、しばらく帰ってこないと思うと、少しだけわがままを言いたくなるじゃない……」

「姉さんは、昨日お楽しみだったけどね……」


「そ、それは……っ。だ、だって……仲間外れは嫌だもの……」

「そうだ、いっそあの薬を飲ませるというのはどうだい?」

「あ、これ……?」


 そうそう気付かれることのない棚の奥に封印したはずなのに、メープルがシレッとあの若返り薬(半日)を取り出すと、俺は冗談抜きで凍り付いた。


「ユリウス、君は贅沢にも3人の女を妻にしたんだ。その意味がわかるよね、わからないはずがない」

「あーんして、ユリウス……」

「ユリウス、飲んでくれても、いいのよ……?」


 俺が転移魔法で行方をくらます前に、メープルがハイドで忍び寄って俺の背後に張り付いた。彼女を連れて転移は出来ない。俺はこの場から逃げられない。


「さあ、飲むんだ、ユリウス!」

「ふへへ……たまりませんな、へへへ……♪」

「あ、あたし……小さなユーリも、嫌いじゃないわ……」


 その日もまた俺は逃げられなかった。

 就寝は空がうっすらと青みがかった早朝になったとだけ、断っておこう……。



 ・



 一週間が過ぎ去り、その間に日程と訪問国が決まった。

 最初の訪問国は同盟国にあたるオドだ。

 シェラハに見送られ、俺とサンディは輸出品と共に転移門に入った。


 奔流に流されるような感覚が走り、少しそれに堪えるとオド王国に到着だ。


「ごぶさたしております、錬金術師ユリウス様、ウェルサンディ様」

「ついこの前も会っただろう」

「オド王様、きっと喜ぶね! 王様、パパのことが大好きだもん!」


 オド王の保護者と言っても差し支えのない、あの女官が俺たちを迎えてくれた。

 オド王は相変わらず、この女性に精神的に依存しているようだ。


「そろそろ陛下のお世継ぎが欲しいところなのですが……。難しいものです」


 彼女に導かれてオドの転移門を出ると、馬車に乗せられて城に運ばれた。

 サンディは馬車から首を出して、外の景色に目を輝かせていた。


 外から見たら、きっとメチャクチャに目立っていただろう。

 城に運ばれ、玉座の間に案内された。


「あ、ユリウスお兄ちゃん……!」

「王が玉座から離れてどうする……」


 玉座の間に入るなり、オド王は玉座から飛び上がって目の間に駆けてきた。

 彼に自信をもたらすあの魔剣は、玉座の隣に立てかけっぱなしだった。


「いつかは剣を貸してくれてありがとう。おかげでシャンバラが救われた」

「光栄です、ユリウスお兄ちゃん……。貴方が望むなら、オドの全てをお兄ちゃんに……」


「さらっと国を売ろうとしないでくれ……。それで今回の訪問だが……」

「あ……。少し、待って下さいね……」


 オド王が内股走りで玉座に戻った。

 そしてビクビクと、闇のオーラ(のようなもの)を放つ魔剣を手に取った。


「見苦しいところをお見せしました、ユリウス兄上。ウェルサンディお嬢様もお元気そうで何より」

「あ、ああ……」

「先月ぶりね、王様! 相変わらずその剣を持つとカッコイイのね!」


「ええ、お父上のくれたこの剣が僕を変えてくれたのです」


 オド王が剣を振ると、闇のオーラが流れ、残像がとなって剣が何本も見えた。


「オドは王家のみならず、多くの人材が討ち死にしました。兄上の提案、オドが拒む理由はありません、選りすぐりの若者をご用意しました」

「それだと俺の仕事が終わってしまうのだが……まあいいか」


 その選りすぐりとやらをオド王が謁見の間に招き入れた。


「タラと申します。ユリウス様はご存じないかもしれませんが、多少の因縁がございます」


 まずその口から女の声が出てきたことに驚いた。

 あまりに髪を短く切りそろえているので、美形の青年かと勝手にこちらが勘違いしていた。


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