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・6年目 夢の在処 - 棺の奥で俺たちを待つモノ -

 パンドーラの棺は開かれた。翌日の夜、俺たちは艶やかな薔薇の大輪となったガラスの大地を訪れ、その虹色の輝きに目を奪われた。

 夜まで待ったのは休息を取って万全を期してのもあったが、ガラス化した大地の冷却を待つためでもあった。


「不思議な感覚ですね。これから死地におもむくというのに、少しも怖くありません」

「大丈夫……いざとなったら、ユリウスと一緒に……私たちみんなで、迷子になればいい……」

「ダメよっ、子供たちが悲しむに決まってるでしょ!」


「あ、忘れてた……」

「いや、自分の腹を痛めて産んだ子を忘れるなっての……」


 俺たちはガラスの大地を歩き、滅亡の寸前に引きずり込みかけた憎き遺跡を見た。ドロドロに融解して見る影もなかったが、壁にポッカリと暗い空洞が生まれている。


「みんなしっかりしてるし……大丈夫。私とユリウスより、しっかりしてる……」

「まあ、それはあるかもしれないが……。縁起でもないことをそれ以上言うな」


 メープルは俺の苦笑いが大好きだ。嬉しそうにこちらに微笑み返して、危険なガラスの大地を後ろ歩きで歩いた。


「危ないわよっ、一面ガラスなのよっ!?」

「ええ、刃の道を歩いているようなものですよ。メープル、危険ですのでちゃんと歩きなさい」

「ん……じゃ、ユリウスに足払いを……」

「旦那を殺ろうとするな」


 美しいが恐ろしい大地を進み、俺たちは棺の内部へと入った。

 その構造に俺とシェラハは見覚えがある。互いに目を向け合い、確信した。エルフの女王と邂逅したあの場所にそっくりだった。


 扉の前に立つと入場制限が満たされた。何人たりとも侵入を許さなかった古の遺跡が、ゆっくりと開いて俺たちを奥へと招いた。


「ご心配なく。私たちがここで死んでも、万事つつがなくことが運ぶよう工面しておきました。私たちはここで全力を尽くし、奥で待つ存在と決着を付けるのみです」


 都市長は奥で何が待っているのか既に察していた。彼が選ばれたのは、今日までの時代の観測者だったからではないかと思う。


 率先して俺とシェラハが並んで迷宮の扉をくぐり、光の向こうの世界に入り込んだ。その先の世界も外側と同じ冷たい水晶なようなもので構成された場所だった。


「ユリウス、この迷宮かなりまずいわ……」

「そうらしいな。おっと……大丈夫か、メープル?」

「うん、わざとだから……大丈夫……」


 腰にしがみついたメープルを引っ張りながら迷宮を進んだ。構造は子供たちと攻略した迷宮のようにシンプルだ。すぐに1つ目のフロアに行き着き、扉の向こうをうかがった。

 フロアにいたのはキマイラが1体だ。メープルと一緒に潜ったときもコイツがボスだった。


「コイツ、また金と銀と黒の宝石を落とすかもな」

「運命だと、思ったのに……」


 俺たちは誰かに作為されて結び付けられた。理由は、会ってみないとまだわからない……。

書籍版初稿、まだ完成していません。

次回更新、次回投稿日に間に合いません。気長に待って下さるとありがたいです。

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