・消えたオアシス 2/2
「ユリウス……氷魔法、私に撃って……」
「もうそろそろ正午を迎えるわ……。日が落ち着くまで建物で休まないと、あたしたちが干物になっちゃうわ……」
カラカラの太陽の下、俺たちは根気強く調査を続けた。
だがむなしくも何の物証も得られていない。悔しいが状況はシェラハゾの言うとおりだった。
「わかったことと言えば、ここが無人で、水が一滴すらないってことか……」
「悔しい……ムカつく……。ユリウス、つねってもいい……?」
「人に当たるな」
「違う……。ユリウスの悲鳴、聞いたら、がんばれる……」
「この子、昔からこうなのよ……。ねぇ建物に入らない? あたしもうクラクラしてきたわ……」
「いてっ……」
不意打ちで手の甲をつねられた。
「違う……。もっと、苦しそうに言って……キャッ?!」
仕返しに腹をつねり返してやると、メープルが悲鳴を上げてうずくまった。
やるのはいいが、やられるのには弱いようだ。
「何やってるのよ……。頭がゆで卵になっちゃう前に戻りましょ……」
「ん……待って。今の、ちょっと、感じた……」
「んなこと誰も聞いてねーよっ!?」
「あ、じゃなくて……なんか、この下……。変な魔力、感じない……?」
「魔力……? お……」
言われて初めて気づいた。確かに系統不明の妙な力が足下から感じられた。
「お前も感じるか?」
「私はそういうの苦手なの。剣と弓の方が得意かしら……」
「あのねあのね、ユリウス……。姉さん、おっぱいに、弓の弦が……」
「その話は止めてよっ、メープル! あれ凄く痛いんだからっ!」
「私の汚れた心には……自慢に、聞こえる……」
巨乳は弓手に向かないと、昔からよく言われる。
俺の注目がマント越しの胸に集まると、シェラハゾが隠すように腕で覆って、首をしきりに左右に振って恥じらうのが愛らしかった。
「……バカやってないで離れてくれ。ちょっとぶっ放してみる」
「おけ……」
「ぶっ放すってどうするつもり……? あ、こらメープルッ、変なところ引っ張らないで……」
話が早くて助かる。メープルがわざとマントがはだけるように引っ張ると、すぐにその場を離れてくれた。
一方の俺は息を大きく吸って、意識を集中し、足下の魔力を見下ろす。
ナイフを杖代わりにして、俺は最大出力まで魔力を増幅すると、宣言通りにぶっ放した。
「アースグレイブ!!」
アースグレイブは大地を槍にする魔法だ。
ぶっ放せば地面が隆起して、隆起したやつを吹っ飛ばせばそこに空洞が生まれる。
俺は隆起した土と砂の槍を、算段通りに爆裂魔法で吹き飛ばして、地下へと続く空洞を完成させた。
「あなた……つくづくとんでもないのね……。なんでそんなに魔法が上手いのに、左遷なんてされたのよ……」
「それはこっちが聞きたい。それより見てくれ、地面の下に、空洞がある」
「おお……ビンゴだね……。もしかしなくとも、私のお手柄……?」
「まあな。行ってみよう」
「ま、待って、戻れなくなったらどうするつもり……!?」
「そう言えばそうだな……。まあ、そのときは全て吹っ飛ばせばいいだろう」
「へへ、それ、ゾクゾクする……」
不安がるシェラハゾを説得して、俺たちは空洞を滑り下りた。
するとその空洞の先には、マク湖消滅の答えがあった。
迷宮だ。枯れたオアシスの底に、迷宮が眠っていた。
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今夜ももう一度更新します。




