・余話 少女メープルの献身 2/2
で、あちらのことはさておいて、私は今、あの日ユリウスと一緒に歩いたスラム街にやって来ていた。
これは都市長のお手伝い。ついに、昔のコネを活用する日がやって来た……。
「そこなガチムチなおっさん……いい仕事、あるよ……?」
「誰がガチムチだっ、いきなり失礼なガキだな! ん……ありゃ、お前……まさかメープルか?」
「久しぶり……おっさん」
「おう、久しぶりだ。いやしかし、全然成長しないな、お前……」
昔ここで暮らしていた頃、悪いこともした……。
お金を手に入れないと、過酷なシャンバラでは生きていけないから、みんなと力を合わせて人から物を盗んだ。
「余計なお世話……。もう未来の、旦那様いる……」
「うわっ……ソイツ、ロリコンかよ」
「うん、そう……」
ユリウスはロリコン。私に向けるやさしい笑顔は下心あり。間違いない……。
「それでね、おっさん……」
「いや、いや待て……。それ、犯罪だろ……?」
「その話はもういい……。それよりね、聞いて、おっさん……大事な話……」
冒険者志望者を私たちは欲している。
だけど今の段階で外に情報が漏れると、迷宮の富を狙って、悪人や隣国が介入してくる。
……って、よくわからないけど、ユリウスと都市長が言ってた。
だからこうして、昔の仲間を呼ぶ口実が出来て
「迷宮に、シャムシエル都市長による、冒険者ギルドの創設だと……?」
「やってみない……? 悪いことして稼ぐより、ずっと、儲かる……。心も、痛まない……」
私は都市長に拾われたけど、普通の人はスラムから抜け出せない。
スラムで生まれたら、ずっとスラムで生きる……。
身体を売るか、奴隷になるか、犯罪を犯して生きるかしかない……。
「嬉しいけどよ、俺なんかに出来るかな……」
「軍のみんなが、訓練、付けてくれるって……。キツいと思うけど、でも……」
「わかった。やる!」
「ぁ……。そう言ってくれて、良かった……」
「あ、それならよっ、他の仲間にも声かけてもいいかっ!? まともなやつに絞るからよ……」
「口の軽い人間以外なら、おけ……。あ、旦那様にはね、口が軽いって、言われる……」
でもそうじゃない。ユリウスが面白いから、つい……いじめちゃうだけ……。
ユリウスはかわいい。かわいいから、悲鳴を聞きたい……。
ギャーとか、グエーとか、叫んで欲しい……。
「ははは、恋は盲目だな。その彼氏、大事にしてやれよ」
「恋……? これって、恋なの……?」
「鈍いやつだな……。ソイツのこと、気になるんだろ?」
「なんでわかるの……? うん、凄く、気になる……。何もしてないと、その人のことばかり、考える……」
もっと挑発したい。もっと姉さんに焚きつけたい。可能なら縛りたい。亀甲縛りがいい……。吊したい……。放置プレイも可……。
「それは恋だな。お前はソイツに恋をしてるんだ」
「恋……。性欲とは、別……? 私、ユリウスの悲鳴を聞きたいだけ……」
「変わんねーな、お前……。なんかソイツが可哀想になってきたわ……」
「うーうん、ユリウスは、幸せ者だよ……?」
これは恋。この気持ちは恋。つまり私はユリウスが好き。出会ってばかりなのに、そんなの変……。
でも、私はユリウスの、うめき声と、悲鳴と、痛がる姿がもっと見たい……。
あと、私に笑いながら、頭を撫でてくれると……もっともっと嬉しい……。
だからたぶん、私はユリウスに恋をしている。その日、私はそう気づいた……。
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