・余話 少女メープルの献身 1/2
私はメープル。ついこの前まではスパイをやっていたけど、今は新米にして天才錬金術師ユリウスのお手伝いさん。
姉さんさえその気になったら、私はこの状況に流される覚悟がバッチリだから、お嫁さんと名乗るのも別にやぶさかじゃない。
だって、ユリウスを選べば、私と姉さんはずっと一緒にいられる。だから私は今の生活に期待していた。
あ、少し脱線した……。
これは、私と姉さんが冒険者ギルドを創設しようと、都市長を手伝っていた頃の話。
同じ頃、ツワイク王国の工場では、実は縁の下の大巨人だったユリウスが消えて、ゾクゾクするくらい、大変なことになっていた……。
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あの殺風景なあのポーション工場の冷たい床に、ユリウスの同僚たちがはいつくばっていた。
工場の人々がユリウスに押し付けていた仕込みは作業は、実は大量の魔力と集中が必要な超重労働だった。
「は、はぁっはぁっ……や、やっぱきつい……。なんでこんなきつい仕事、休みなしで……っ」
両膝を突きながら、ユリウスをいじめた悪いやつが息を乱していた。
水に魔力をかけて、魔物素材を溶かす工程を、ユリウスがたった1人で受け持っていたから、それが消えたら大変なことになるに決まってる……。
そこまでは、私たちの想定通りだった……。
「なぁ……アイツ、実はメチャクチャ凄かったのかな……」
「そりゃそうだろ……全部1人でやってたんだぜ、怪物かよ……」
今さら気づいてももう遅い……。
あまりに仕込みが大変だから、3人が代わり番こで魔力をかけることになっていた。
「もう無理だっ、交代だ、交代してくれよっ!?」
「ふざけんなっ、さっき交代したばっかりだろ!」
「じゃあさ、もうちょい、手抜いちまうか……?」
「ああ……。それもそうだな……」
「いや、そうしようぜ……。じゃないとこっちが続かねーだろ……」
お城から増産の命令が来てからは、工場から休日が消えちゃった。
だったらそんな仕事辞めて、逃げちゃえばいいのに。
いずれは私たちが作った新型ポーションが、この人たちの粗悪品を駆逐しちゃうんだから、我慢したって未来なんてないのに。
「ユリウスのやつ、どこに消えたんだろな……」
「戻って来てくれねーかな……」
「嫌だ嫌だ……もうこんな仕事嫌だ……いつか壊れちまう……。ユリウス、笑ったの謝るから、帰ってこいよ……」
無理……。ユリウスはもう、姉さんにメロメロ……。
昨日も姉さんの水浴びをずっとのぞいていたくらい、メロメロのあまーいハニートラップに、カニばさみでガッチリキープだから……。
私は潜伏魔法で身を隠して、そんなユリウスと姉さんを眺める。
姉さんは……のぞかれていることに、もう気づいている……。
でも、明日も同じ時間、同じ場所で服を脱いで、オアシスで踊ると思う。
私は美しい姉さんと、ユリウスという危ういピエロを見るのが好き。
2人の情欲を感じて、ドキドキするから……。
今夜もう一度投稿いたします。
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