・第二部エピローグ 外堀りを埋められた錬金術師あらため、セミ - 遅れた上にまとめてやってきた初夜 -
で、そろそろ自分をごまかすのが辛くなってきた……。
そんな色々な出来事が今日まであったが、今夜の俺は超超超ピンチだ……。
このままでは、俺はコロッといってしまうかもしれない……。
どうしてこんなことに……。
まさか、普段潔癖気味なグラフまで、この悪い冗談に加わるなんて、現実がとても信じられない……。
いや、だが、どうやら彼女たちは本気も本気だった……。
俺は完全に、精神的にも肉体的にも空間的にも全てにおいて追い詰められていた。
・
その夜、俺は謀られた……。
「ねぇ、ユリウス……」
「むふふ……我慢しなくても、いいよ……? 今こそ、エロ神の獣欲を、世に解き放つとき……」
「じ、じれったいやつだ……っ。早く覚悟を決めろ……っ、こっちが恥ずかしいだろ……っ」
今日はシェラハたちが外泊をするので家に俺1人のはずだった。
俺のベッドに花瓶の水をこぼしてしまったので、今日は2階のベッドを使えばいいと、まんまと誘導されていた。
罠だった。彼女たちは最初から、外泊する気なんてなかったのだ……。
「ユリウス……姉さんの、おっぱいばっかり、見てないで、こっち向いて……?」
「あ、あたしは……み、見られても、別にいいわ……。夢中になってくれるの、嬉しいもの……」
「キミはやっぱり、むっつりスケベだ……」
それが大きくてふかふかのベッドで眠りに付けば、左にシェラハ、右にグラフ、のしかかるようにメープルが俺の腹の上に寝そべっている。
少し前、なぜこんなことをするのかと俺が聞けば、彼女たちはこう言った。
「ユリウスは、はかない……セミ?」
「人を昆虫扱いすんな」
お前はセミだと。
「けど、セミは交尾して死ぬ……。交尾しないで消える誰かより、ずっと偉い……」
「こ、ここここ、交尾ぃぃっ?! ぇ……ま、まさか、お、お前ら……っ!?」
いやお前はセミ以下だと。
メープルは甘い吐息をはきながら、俺の上でモジモジと身を擦り付けた。
「私たちは、生物として正常……。別に、何も間違ってない……」
「ッッ……そ、そうよ。それにあたし、もう、イヤだもの……。いつか貴方が別の世界に飛ばされて、帰ってこないかと思うとっ、堪えられないわ……。だからっ、こうするのよっ!」
シェラハがまた少し身を寄せて、ふにゅりとやわらかな感覚が強くなった。
セミみたいにはかないユリウスが悪い。それが彼女たちの言い分だ。
長寿を持つエルフらしいといえば、エルフらしい感性だろうか。
「ボ、ボクは仲間外れはイヤだから……加わってみた……」
「いや待て、なんでそうなるっ!? ノリでするような行為じゃないだろ、これっ!?」
「なんでって……君はボクの主だろっ!」
「……え? いや、確かにまあ、形式上はそうなのかもしれないが……」
あれって封建主義的な意味合いじゃなかったのか……?
主って、そういう重い意味も含まれていたのか……?
にじりと、白百合とまで言われたグラフまでもが距離を詰めて、俺の心臓は動揺を隠しようもなく高鳴った。
「ユリウス、お願いよ……」
「ボ、ボク……覚悟は出来てるから……」
「へーいへーい……旦那さん、ビビってる……。姉さん、ここ触ってみて……心臓、バクバク……」
「ちょ、止めっ、うっ?!」
メープルな小柄な手と、シェラハの日焼けした手、グラフの白く細い手が重なって、俺の心臓を肌の上から触れた。
興奮、動揺、好意で溢れた強い感情。全てが暴かれた。
それでも彼女たちは、こちらが誘惑に負けるのを待っているのか、辛抱強くこちらの動きを待っている。
シェラハが暑そうに胸元をはためかせたり、メープルが人の胸に頬ずりをしたり、グラフが無言で人の横顔を凝視している。
さすがに俺も理解していた。彼女たちの想いはただ一点だ。
ユリウスという男があまりに命知らず過ぎて、本当に失ってしまう日が訪れるのが恐ろしくなり、形となって大きくなるものを欲した。
その気になれば俺はシェラハの大きな乳房にも、グラフのスレンダーで引き締まった肢体にも、手を伸ばそうと思えばいくらでも伸ばせる。
彼女たちはきっと拒まない。俺が明日死ぬか、あるいは迷子になるかもしれないセミちゃんだからだ……。
小柄なメープルの身体は少しゴリゴリと硬いが、色々と密着して非常にまずい状態だ。
彼女は俺の筆舌しかねる状態を、その身で全て把握してしまっていた。
「ユリウス……夫婦らしいこと、しよ……?」
「お願い……あたし、あなたを失うのが怖いの……」
「ボクは、仲間外れだけはイヤだ……。この世界で真実ボクが所属出来る場所は、この家だけだ……。だから頼む……」
必要だからそうする。これほどまでに理性的な行動があるだろうか。
断じてこれは獣欲ではなく、必要だからしなくてはならないことだ。
ようやく覚悟を決めた俺は、長らく抑圧してきた欲望を解き放ってまずは腕を伸ばし、メープルの背中を強く抱きしめた。
これは必要だからしょうがないんだ。
そう自分に思い聞かせた。
こうして俺たちはその夜、ようやく夫婦の第一歩を踏み出したのだった。
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ちなみにだが……。
結婚初夜で鞭から繰り出される真空に恐れをなして逃げた旦那はその翌日、腰の折れ曲がった老婆のような滑稽な姿勢で、錬金術工房のオーブの前で腕をかざしていたという。
シャンバラは天国だ。ベッドの上で見上げるシェラハは、湖水で踊るあの姿よりもずっとずっと美しかった。
【第三部に続く】
第二部完結まで呼んで下さりありがとうございます。
感想返しが出来なくてごめんなさい。私生活がしっちゃかめっちゃかしています。
というのも本作、新作Lv0の元傭兵、来月公開の新作と、3つ同時に進めなければならないため、あらゆる部分に手が回っていません。
それでもこの続きが書きたいので、どうにか時間を作ってがんばってゆきます。
第三部については、初心に返ろうかと考えています。
まだ大まかな構想だけですが、シェラハゾとメープルとのイチャラブ部分をメインにして、ツワイク本国との経済戦争をするような展開もいいなと、大まかに。
第二部は、シェラハゾとメープルの出番が減りがちだったので、ここからは積極的にカバーしてゆく構想です。
といったわけで、第三部を作ります。楽しく作ります。運営さんに怒られない範囲でさわやかエロスに盛ってゆきます。(本当はもっと過激にしたい)
プロット制作中は連載が止まりますが、どうか連載開始を待っていて下さい。
最後に余韻を乱すような宣伝となってしまいますが、新作Lv0の元傭兵がHF日間のいいところに入っています。
読んで損のない軽快な娯楽作品になっていますので、よろしければこちらも読みにきて下さい。
ステータスがインフレするのが苦手な読者さんも、新境地として楽しめる味付けになっています。
それでは連載再開まで短くて約一週間ほど、これよりプロット作りに行ってきます。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
これからもやりたい展開を詰め込んで、楽しく作ってゆきます。




