・新しい友情と晩餐とお義父さん
昨日の晩餐は存外に楽しめるものだった。
てっきりお偉方に囲まれるような退屈な席かと思いきや、席にあったのは都市長と眉目秀麗な秘書だけで、そこにあの姉妹が加わると、温かく家庭的な空気がかもし出されていた。
それに加えてここはオアシスの国とは思えないほどに食材が豊かで、特に豆と塩漬け肉と煮込みが、シャンバラ産の冷えた地ビールとよく合った。
後半は市長邸のシェフやメイドまで晩餐に加わって、ずいぶんと食事が賑やかな国だと驚かされた。
「ユリウスさん、もう1杯どうでしょう?」
「い、いや……。なんで年寄りってやつは、若者に酒を勧めるのがそんなに好きなんだろうな……」
「いえいえ、普段の私は節度をわきまえておりますよ」
「ユリウスは……都市長に、気に入られてる……」
「そうなのか……?」
「普段はもっとお堅いわ」
都市長は抜け目のない男だが、話していて気持ちのいい人物でもあった。
彼は姉妹に対して父親のようにやさしく接するので、それが俺の目にはとても好意的に映った。
多分、威張り散らすだけの支配者に嫌気が差していたのもあるだろう。
少なくとも彼は平等で誠実だった。
「ユリウスさん、さ、もう1杯……もう1杯くらいならいいでしょう?」
「シャンバラの都市長も、酒を飲ませたらただの酔っぱらいなんだな……。ならお返しだっ、アンタも飲めっ!」
俺たちは冷えたビールを酌み交わして、飲んで、また酌み交わして、互いに顔を赤くしてまた飲んだ。
「目指すはポーションの国産化と、迷宮事業の実現だ。俺たちで世界をひっくり返すぞ、都市長!」
「ええっ、頼りにしておりますよ、ユリウスさん!」
俺たちは一晩で打ち解けて、同じ夢を歩むことに決めた。
「しかしそう言うなら、この2人にこれ以上おかしなことを命じるのは止めてくれ」
「はて……?」
「ベッド、枕3つ、アレはアンタの差し金だろう……。ああいう懐柔はいらん……」
「都市長やるね……。あれは、私も、衝撃的だった……。心臓、キュンキュンだったよ……」
「ふふふ……あのことですか。いえ、最初はどうかとも思いましたが、見ていて貴方たちが微笑ましいので、つい差し出がましいことを」
「メープルといいアンタといい、いい性格しているよ……」
「そこは育ての親ですから」
「いちおー、養父です……」
「あたしたち養女なの。都市長は次から次へと子供を養子に迎える人なのよ。おかげで数え切れないほどの兄弟が出来ちゃったわ」
都市長――シャムシエル爺さんはやさしく笑っていた。
「さ、もう1杯……」
「都市長、そろそろ本格的にキツい……」
「そう言わず祝いましょう! 今日は2つの意味でめでたい日なのですから……!」
「そろそろこの酔っぱらいをどうにかしてくれ……」
その日はビールをたくさん飲んで、いや飲まされて、ふわふわした気分で眠りについた。
もちろん、ベッドではなく暖炉でだ。
ツワイクでの労働環境は、労働の喜びもなければゆとりもない、最低の生活だと今さらになって気づかされた。
魔術師を辞めて、明日から俺は錬金術師になろう。
晩餐で見たあいつらの笑顔のために。
……いや、俺の新たなるエリート街道のために、がんばろう。
今夜もう1回更新します。
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