・転移装置のパーツを精錬しよう 2/2
ダウンしかけだったが、彼女のおかげで最後まで走り切れた。
最後の精錬が終わると、俺は錬金釜の前に崩れ落ちて、マリウスの臨時工房までの運搬を都市長に依頼してくれとグラフに伝言を頼むことになった。
「起きろ、こんなところで寝ると明日の朝酷いぞ……。って言っても、起きねーよな……」
「ごめん、あたし起きれないわ……。それより、終わったの……?」
「終わったぞ。おら、ちょっとふんばれ、上まで連れてってやる」
「ふふ……王子様みたい……」
「そのセリフ、絶対明日後悔するぞ……?」
シェラハを両腕で抱き抱えて、階段をヒイヒイと踏ん張って2階のベッドに運んだ。
「寒い……。一緒に寝て……?」
「暖炉に少し火を入れる。メープルも連れてこなきゃいけないだろ」
「うん……」
それっきり、シェラハは起きなかった。
工房まで戻ると、熟睡したメープルを抱き抱えてシェラハの隣に運び、ようやく一息をついた。
「おやすみ」
寒くないように掛け布団を整えて、2人の整えてから1階に戻った。
くたびれた……。毛布をかぶって、暖炉に炎魔法を放った。
「おつかれ。こっちも終わったよ」
「悪いな、外は寒かっただろ」
「いいよ。……目が冴えてきちゃってたから」
そう言いながら彼女は自分の弓を取って、こんな時間だというのに暖炉の前で弓の手入れを始めた。
こんな時間だというのに、新しい弦に張り直すつもりのようだった。
「こっちはもうわりと眠い……」
「見ればわかるよ。ありがとう、ボクはキミの姿を誇りに思うよ」
「そういうのは明日にしてくれ、眠くて全然響かん……」
「クスッ、そうみたいだね」
なんか、素直な態度を取るこいつ、かわいいところあるな……。
あれだけ壁を作っていたのに、たった1日で無防備に変わってしまった。
「キミを女王陛下に紹介したいよ。ヒューマンにもキミみたいなやつがいるって、陛下に知ってもらいたい」
「そうか……眠い……」
「寝なよ」
「んじゃ、お言葉に甘えて……」
毛布にくるまって暖炉の前に横たわると意識が途絶えていた。
・
「ぬぁ……っ?!」
翌朝、目を明けるとグライオフェンの寝顔が目の前にあった。
あまりの驚きに飛び起きると、俺たちは同じ毛布にくるまって眠っていたようだった。
「昨日は、お楽しみだったようですね……」
「おまっ、いつからいたよっ!?」
「一緒に暖炉の前に横たわる、二人を眺めて、妄想を高ぶらせていた……。ユリウスのことだから、指一本、触れてないに違いない……」
「触れる理由がないからな。ちょっと水かぶってくる」
「お供する……」
「正気か? まだ死ぬほど冷たいぞ」
「それは、ほら……。ユリウスが、裸で温めてくれるはず……あてっ」
頭を軽く叩くと、嬉しそうな顔でこちらに笑い返すので、ついついそれ以上は断り切れず……。
俺たちは互いに身体を隠しながら、一緒に水を浴びていた……。
「ユリウス、ヤバい……。ムラムラどころじゃないくらい、寒すぎ……死ぬよ、これ……」
「ならなぜ付き合ったよ……」
「だって……ユリウスと、一緒がいいから……」
そう言われて嬉しかった。
だから俺は彼女の希望通りに、いや、己の衝動任せに裸で嫁の身体を温めた。
「マジでムラムラどころじゃねーな……暖炉の前に帰るぞ……っ、さぶっ……!」
「バカなこと、したもんだね……」
びしょ濡れの裸で暖炉を浴びる俺たちの姿に、目覚めたグラフが朝っぱらから悲鳴を上げたのは言うまでもない。
投稿が遅れてすみません。




