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06――リノの動く家

拙い物語ですが、ブックマークや評価してくださってありがとうございます。


 攻撃魔法の威力はわかったので、防御魔法や収納魔法も併せて練習する。怪我を負った時にすぐに治せるように、シーナに言われて回復魔法も練習した。


 この世界の人達は専門的に勉強している人以外は軽い擦り傷や切り傷を治すぐらいにしか、回復魔法を使っていないらしい。何故なら効果が大きい回復魔法を使うには、何をどうイメージしたらいいのかがわからないから。骨まで届いた深くて大きな切り傷を例に出すと、表層の皮や肉の切断面は塞がるけど筋肉や血管は治らずに切れたままになっていて、結局出血多量で死んだり化膿したり腐ったりして腕を丸ごと切断するような事態になってしまうのだとか。


 施療院の人や医師免許を持っている人達は、多分病気で亡くなった患者さんの体を解剖したりして人体の仕組みを調べて学んだのじゃないかな。それらの知識の伝達が本や資料で行われたから、彼らは素人では絶対に行使できない回復魔法を使えるようになったんだろうね。


 ちなみに私は元夫の稼ぎが悪かった頃に、娘を保育園に預けて近所のクリニックにパートで働きに行っていた経験がある。その頃は娘も母親である私が側にいなかったからかしょっちゅう熱を出したり体調を崩したりしていたので、休み時間に簡単にかかれている家庭の医学みたいなものを読ませてもらったり、先生や看護師さん達にもよく相談に乗ってもらった。


 私は何の免許も持ってなかったから医療行為はできなくて、医療補助とは名ばかりの雑用係みたいな事をしていた。あんまり役に立ってなかったような気がするけど、皆さんにすごくよくしてもらった。まぁその時分にクソ姑から『娘を他所に預けて側にいられない女など母親失格』だのなんだの言われ、娘が姑に保育園からさらわれかけたり悪口を吹き込まれたりという嫌がらせが始まったのでかなり精神を削られた。クソ夫に姑を止めて欲しいとお願いすると『悪気はない、そもそもお前が働きに出るのが悪い』とか言われて、愛情が枯渇どころかマイナスにまで到達したのもこの頃だった。


 あー、しんどい記憶がどんどん連鎖的に溢れ出てきた。あんな人達の事を思い出しても私には損しかないんだから、思考を切り替えようっと。


 そんな訳でそのパートに勤めていた期間に蓄えた知識で、お医者さんにはかなわないけど結構な重症の怪我とか病気まで治せるらしい。レントゲンやCTの代わりに使えるスキャン魔法もシーナに教えてもらったので、とりあえずは自分が病気になったり怪我をしても安心だ。できれば軽い症状の人で魔法の使い勝手の確認と練習をしたいんだけど、こんな危ない森に他の人がいる訳ないからそれは無理か。


 あとね、収納魔法は娘と一緒に遊んだゲームを参考にしてみたよ。収納すると同じアイテムはまとめられて、いくつ在庫があるのかがすぐにわかるという優れもの。シーナによると生き物は入れられないらしい、あと時間経過がないので暇な時間に料理を作って入れておくといちいち食事の準備をする手間が省けるそうなので、また時間がある時に作っておきたいと思う。


 家族がいるとちゃんと作らなきゃって思うけど、私ひとりなら別にインスタントでも構わないんだよね。作るの楽だし、○○の素とか食品メーカーの人が頑張って作ってるから私がオリジナルで味付けするより美味しいし。あとで神様通販のラインナップを調べておかないと。


 シーナから合格をもらえたので、私の魔法特訓はひとまず終了だ。また必要に応じて教えてもらえるらしいし、私も魔法なんて不思議な力が使えるのは楽しいのでその時を楽しみにしておく。少し汗が滲んだ額を用意していたタオルで拭いながら家に入ると、シーナがソファーに座るように促してきた。


《実はこの家は自律行動ができます、手足を生やして自ら移動する事ができ、目的地がある場合はリノが指示すればそこに向かって移動を開始します》


 早速やってみましょう、とシーナに言われるがままに私は『この森から出てください』と念じるように指示を出した。特に揺れが起こったりはしなかったので指示に失敗したのかなと思ったが、窓から外を見るように言われてその光景に驚愕した。なんとゆっくりしたスピードではあるが、景色が右から左へ動いていたからだ。


「シーナ、今この家がどういう状態になっているのか見る事はできないの?」


 私が思わずそう言うと急に視界に半透明な画面が出てきて、そこにはロッジの左右に幼稚園児が適当に描いたみたいな白い手足が付いていた。きちんと人間が歩くみたいに左右交互に足を踏み出し手を振っているところを見ると、あんな適当な手足でも必要最低限の強度はあるのだろう。


《家が規定の経験値を得ると、腕や足の構造が強固になったり武器を持ったり、あとは他人から見えなくする障壁を張れるようになったりします》


 シーナがそう言うと同時に、目の前にふたつの画面が開いた。ひとつは私の姿が映っていて、もうひとつには家の外見図が載っている。ほかにはレベルとか耐久性とか、文字と数字が羅列されていた。


《この世界にはレベルというものはありませんが、リノにわかりやすく現状を説明するとこんな感じです。リノも家もまだレベル1、創造主様が加護として色々な才能を与えてくださってますが、非常に弱い存在です。私も重々気をつけますが、リノも警戒を怠らないでください》


 シーナの真剣な言葉に、私はこくりと頷いた。INTと書かれている項目の横の数字は、他のものより飛び抜けて高い。これが魔法の威力や回数に影響を与える数字で知識や賢さを表すものらしいんだけど、私が高いのは種族的な特徴とともにあちらの世界の経験と記憶によってこの数字になっているらしい。


 生命力や力は微々たるもので、私の体が4歳児程度である事を思い出させた。安全を得るためにはレベルを上げてこの数値を上げないといけないんだよね、でもゲームなんかでは魔物と戦ってレベルを上げてたでしょ? 私にゲームの登場人物達と同じような事ができるのか、すごく不安。


《この世界で自分の能力を伸ばすには、もちろん魔物や盗賊などを倒して経験値を得るのが一番ですが、他にも日常生活で経験した事などでも微量ですが値がアップする事があります。例えばリノの場合は今日の魔法特訓がいい経験になったみたいで、この数値が大きく向上してますね》


 シーナが点滅させてくれたこの数字が経験値を示す項目らしい。おお、あとちょっとで私レベル2になるじゃん。こうして数字で目に見えるとやる気が出てくるね、どんどん経験値を集めてパワーアップしたいと思えてくる。


《あと家とリノは主従契約で結ばれているので、微々たるものですが家の経験値がリノへと自動的に流れてきます。家は移動したり魔物を倒したり日常的に経験値を得ますので、リノがそこまで張り切らなくとも初期はそれなりにレベルが上がっていくでしょう》


 段々と必要経験値が多くなり、レベルが上がりにくくなってからが頑張りどころらしい。まぁここはゲームの世界じゃなくて、私達が生きていた地球と別の世界ではあるけれど現実世界だからね。結局あちらと同じで技能を身につけるには努力が必要だということなのだろう。見た目は子供だけど、元は子育ても経験した大人なんだからしっかりやらないとね。


 あとこの家の燃料は私の魔力を自動的に使っているらしいので、空っぽにならないように気をつけないといけないらしい。魔力の全体量からすれば微々たるものだけど、枯渇状態では魔法も家も使えなくなるって事だから、魔力にはいつも余裕がある状態にしておきたいと思う。


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