壮太と芽衣、初のお泊り会
六時四十五分…まだこんな時間か…ってやべ!
あと十五分で芽衣のマンションの前に行かなければならなかったっけ。
でも五分前行動って大事だよな…うん、あと十分しかないよね。
あ、篠原さんの家まで五分かかるんだよな、ってことで…
「あっあと五分しかねぇ!」
あと五分以内には、飯食って顔を洗って、寝ぐせ直して、着替えて、はをみがいてって、そういえばめしは向こうで作るのか、ほっ…ってほっじゃねぇよ!あと三分くらいで家出たほうがいいんだよね。
「やべぇ急がなきゃ…」
そして何とか五分で出る用意をし終わった壮太だったが、壮太は前から疑問に思っていたことがあった。
それは、俺って飯を作っただけだ。そして、傘を貸したことくらいしかないはず。
なのに篠原さんの家で飯食べるわ、勉強を教わるわ、あ、人んちに行ってるのになにかもっていくべきではないだろうか?
俺が小さいとき、親がママ友の集まりみたいなんでもっていってた気がする。
買いに行こうかと思ったが時間はなかった。
「おはよう」
うわぁ可愛い。この服装は女子と接することのなかった俺でもわかる。
多分、ワンピースってやつだろうな。破壊力がやばい。
天使様がワンピース着て外に出ていたら、周りの人がめっちゃ見てる。
「如月君おはようございます!わざわざありがとうございます。まだ五十五分なのに、早めの行動は良いですよね」
っと言って、マンションの中に入って行った。俺もついて行った。
「なぁ、篠原さん」
「はい?なんですか?」
俺は芽衣に申し訳ないから、言ってみた。
「あのさ、俺は篠原さんの家に行って、飯を食べた。しかも、勉強教えてもらって、俺が作ったけど、晩も食った。そして学園一の女子と二人きりだ。あんまり話したこともないのに、これはちょっと行きすぎじゃないかなって」
すると、芽衣は嫌そうな顔をした。
「如月君、私は今楽しいので行き過ぎではないのかな?如月君が嫌なら…嫌なら私は諦めます。あと、学園一ではないですよ」
「お、おぉ、そっか…」
最初からだったけど、篠原さんの考えてる事はよくわからんなぁ。
「あ!じゃあ行き過ぎと思うのなら、明日学校一緒に行きましょうよ。一緒に行くことで仲いい感じになりますもんね」
なるほどな、天使様と学校か、大問題だが良いな。
「分かった。俺からもお願い多いがいいか?」
とりあえず聞いていこうと思ったのだ。
多分芽衣も何かわからないだろうが、昨日もしたことを頼もうとしているだけだが。
「はい?なんですか?」
「朝飯を作るので、勉強の指導お願いします。」
だって芽衣の教えてくれた分はものすごく分かりやすかったのだ。学校の教師より分かりやすかった。
「じゃあ、朝昼夜のご飯作りもお願いします」
ニコニコしながら、言うとか反則だわ。
「了解」
そして、朝食は芽衣と作って食べて、勉強を始めた。
そして、
「篠原さん、この二次関数、よくわからないんだが」
「えっとですね、ここはこうですよ」
分かりやすい、よくわかった。教えるの上手すぎてやばい。
「あのー…」
「ん?」
芽衣が何か言いたそうな顔をしていたが、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「そっそのー…なっ名前で呼び合いませんか?」
ん?これってその芽衣ってよぶってことか?なんかすごい夢のシチュエーションだな。
「たぶんいいけど」
「じゃあ…壮太君!」
「お、おう」
少し間があって、何が言われるか待っていると、
「お昼一緒に作りたいです」
「了解」
そして芽衣は、悪いことを考えているような顔をして、
「私のこと、芽衣ちゃんって呼んでくださいなー」
え…そうなるか…
「は、はい…」
あ、そうだそうだ昼飯作らなきゃ。
もう十二時だ、早いな。
こんなに勉強してたらテストはいつもよりも何倍も高い点数が取れる気がする。
そして、昼飯はハンバーガーを作った。簡単なやつだぞ、冷凍ハンバーグをやきながら、その隣でパンにチーズを挟んで焼く。ハンバーグに火が通ったら、焼けたパンでハンバーグと野菜を挟む。
芽衣は包丁を使わない挟むのはできるようだった。
そして昼食をとった後、一時間程勉強した時、
「壮太君、これで習った分の数学は全部教え切りました!」
「おぉ」
今日と昨日教えてもらっただけで一年と一か月分の授業分を教えてもらった。
応用はともかく、基礎はいける。
早すぎ、すごい。
「では、気分転換もかねて外に散歩しに行きましょう。」
「そ、外か…太陽っていうチート級最強ボスがいるんだけど」
そう言ってちらっと芽衣を見ると…ダメだ、芽衣は本気で俺を連れて行こうとしている。
目をうるっとさせて、今にも泣きそうな顔で俺の手をつかんで、顔を近づけてきた。
「ぐすっ、壮太君、お外、行きたいです」
う、わぁ
「おうおうおう、外出ます外出ます」
すると芽衣はぱーっと笑顔になった。
「やった!ふらふら散歩しましょうか。」
じょ、女子って怖ぇ…
そして、外に出て二人でのんびり歩いていく。陰キャと天使が隣で仲良く歩いていると、もちろん周りは二度見してくる人も多かった。
映画館の前に来た時、
「壮太君、映画見ませんか?」
映画デートか…めっちゃいいな…って感動に浸ってんじゃねぇよ。
「壮太君大丈夫ですか?」
「あっごめん、映画だっけ?いいね」
そして、ある広告を指さしながら言った。
「これ見たいなー」
そして指さされたほうの広告を見てみると
「ホ、ホラー映画か、これ…」
俺、ホラー映画むりなひとですはい。
「篠原さ…え、えっと…芽衣さん、こういうのいけるんだな」
「むっ、芽衣ちゃんでお願いしたいなーなんて、あのですね、こういうのには興味あるんです」
「なるほど」
そんな話をしながらチケットを買いに行った。
この時壮太は知らなかったが、このホラー映画はものすごく怖いことで有名でニュースでもやっていたのだ。
芽衣も興味を持っていたので、わざと映画館の前に来たのである。
この映画が終わったときには、壮太は放心状態になって椅子に座って固まっていた。
芽衣はニコニコだった。
なぜかというと、芽衣は吊り橋効果的なのを期待していたのであるが、結果は行き過ぎた。
壮太の心、上に逝きましたみたいな状態だった。
そのまま、芽衣に手を引っ張られて映画館を出て行った。
「壮太君、買い物に行きましょうか」
「はい」
もうそろそろ壮太は倒れるところだった。
しかし、スーパーに行くことでだんだん壮太の調子は戻ってきた。ちなみに手をつないでいる。
「壮太君、もう大丈夫ですか?」
「あぁ、多分大丈夫だ…あ、手ごめん」
「ふふっ、いつもどうりに戻りましたね、良かったです」
そうして、手はもうはなしたが映画の話をしていると信号で止まった。
そして、その信号の先に、同じクラスの男子で一番頭がいい人、えーと…原ー…原池?…原内、原田だ!原田新作だ。
そして、信号が変わると新作は俺たちのところに走ってきた。
そして、俺を一瞬なんでいるんだよ見たいな顔で見た後、芽衣のほうに向いた。
「篠原さん、どこに行くの?」
「買い物ですよ」
芽衣は普段通りの調子で答えた。
「そっか…俺も行くよ、荷物持つわ」
あー、多分これは、芽衣にナンパしているんだろうな。
そして、俺といるのが気に入らないんだろう。
「大丈夫です。壮太君がいるので、それから…空気読んでくださいよ」
断られていた。って芽衣は空気を読んだ上の行動だから、なにもいえない。
そして嫌な予感が…どこからともかく冷たい視線が刺さってきた。
「さようでございましたか。でもなぜこんな奴と買い物に行くんです?」
やっぱり芽衣と俺って一緒じゃだめだよな。
「ご飯作ってもらうからですよ。それよりも、あなたは遠回しに壮太君を下に見てますね。あなたが何も知らないだけでいい人ですよ。それに、性格もいいですしあなたよりもずっといいです」
め、芽衣…
「如月、俺とお前で勝負な、どっちが篠原さんを落とせるか、な」
そう言って去って行った。勝負したくないなぁ。
「壮太君、私はあの人好きではないですから安心してくださいね」
「そっか、さすがだな」
そして、無事に買い物が終わり、家で夕食を作った。
カレーを作ったのだが、芽衣はおいしそうに食べていた。
ちょっとは芽衣も包丁を使えるようにならないとなと思うこの頃だった。
そのあと、勉強再開。開始一時間後、
「めっ芽衣ちゃん」
「はい!…呼ばれてみたかったんですよー芽衣ちゃんって」
「昔から呼ばれなかったのか?」
芽衣がちゃん付けで呼ばれていないのは驚いた。
おいおい…勉強から脱線してるぞ。
「はい、いい響きだなぁ…実は昔からあんまり友達がいなかったので、名前を呼んでくれる人がいなかったんですよ」
まじか、意外だった。天使様でもないものはないんだな。今はどうなんだろ?
「親も呼んでくれるだろ?」
すると、芽衣は不満げな顔をしていた。まるで、親が嫌いだと言わんばかりな表情だ。
「あ、ごめん」
「す、すいません。実は両親とはあんまり仲が良くはないので…」
それは意外だった。
「でも、今は友達沢山いるんだし呼んでもらえるんじゃないのか?」
「そ、そんなに友達いないですし、呼んでもらうなんて恥ずかしいですよ」
恥ずかしいか、芽衣っぽくないな。多分。
「まぁ、壮太君には学校でも、芽衣ちゃんって呼んでほしいなー」
「…は?」
いやいやいやダメだろ。これ公開継続処刑じゃねえか。
「一つ約束しましょうよ、壮太君は学校でもちゃんづけで呼ばないと公開処刑します。これが願いで
す。なので、壮太君も何かお願いしてくださいな。」
…厳しいなぁ、そして、願いなんて…
「じゃあ、これからも勉強を教えてください。」
すると芽衣は悪いことを考えたような顔をした。
「はい!お泊りでしましょうか」
泊りがけか…もう、嫌だとか言えないわ…
「わかった。でも、今日は泊まれないよ」
「あれ?いいんですか?帰り道に映画で見た首なしのドライバーが出ますよー、いいんですか?」
芽衣の脅しは壮太にとってはとてもよく効いたのだ。
「え…」
「泊っていきましょ、親御さんに連絡入れましょう」
泊まる前提なんだな。しかし俺は一人暮らしだから、連絡を入れる必要はないのだ。
「一人暮らしだから連絡はいらないんだけど、さすがに明日学校だから帰りたいけど、帰れないって
どういう状況なんだよ」
「まぁまぁいいじゃないですか、お泊りしていってくださいよー」
まじか…芽衣から誘うとか夢か?いい夢だな。
「俺が何するかわからないぞ?」
「その時は責任取ってくださいね」
いや、俺はそんなことしないんだけど、責任ねえ…
「早寝早起きは良いことですからね。もう寝ましょうか」
時刻は十一時になっていた。
「あぁ、寝るか」
芽衣はベッドで一緒に寝たいということだがさすがにやばいので、布団を借りた。
そして、ベッドから少し離して敷いた。
しかしまあ、この土日は、いつもと違う過ごし方だった。
そんなことを考えていると、すぐに眠ってしまった。
壮太はかなり疲れていたのですぐに眠ったが、芽衣はなかなか寝付けなかった。
「壮太君、起きてますか?」
もし眠っているところを起こしては悪いと、少し小声で呼んでみた。
しかし、返事はなかった。
「もう…寝るの早いですね。私はこんなにドキドキしてるのに…この気持ちって何なのでしょう?」
独り言をつぶやくが、それの返事は誰もしてくれなかった。