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芽衣が少し頑張った日

 土曜日、朝九時に目が覚めた。歯を磨いて顔を洗って、キッチンに行き…気が付く。


「はぁ服なんてねぇんだよな」


 そう…如月壮太は、年に一度か二度しか私服で外に出ないのだ。 

そもそも、年明けの初詣に行けば、もうどこにも行かないのである。

壮太は、黒の長Tに黒のズボン、黒系統の壮太である。

普段は私服で外に出ないから、出る理由があるとすれば、服とかを買いに行くとかしかないのである。

そして十一時五十分、五分前行動は大切である。

壮太の家から芽衣の家までは、五分くらいで着くのだ。

壮太も芽衣も実はマンションだが、芽衣のほうはオートロックで安全だった。

十一時五十五分マンションの前に着くと、すでに芽衣は待っていた。


「すまん、待たせたな」


「いえいえ、今出てきたところです。さあ、どうぞどうぞ」


 芽衣の部屋は二階の端らしい。


「お邪魔します」


 おぉ、初の女子部屋っといっても、親御さんがいるよね。さすがに勘違いはされないか。

挨拶はしないとね…ってどこにいるんだろ。


「あのー親御さんは?」


「ああ、実は一人暮らしなんです」


 マジか…ここなら女の子一人、美少女を襲い放題だぞっていかんいかん、俺何考えてんだ。


「今なら私一人ですよ、いろいろできるんじゃないですか?」


 今思ったことを口に出さないでほしい。実は心の中読めたりして…


「なんもしねえよ」


「ふふ、残念です。するのなら責任とってくださいね」


 責任ってなんのだろうか…怖いんだけど。

俺がじっと考えていると、沈黙が嫌だったんだろう。


「それよりもお昼、作りましょうか」


「あぁ」


「エプロン付けますか?」


「少し話が長くなるけどいいか?」


「はい?」


「実はな…」


 俺はエプロンを料理するときにつける必要があるかどうかを話した。

そんな俺の話を嫌な顔をせず、聞いてくれた、すごすぎ天使。

俺の予定では、ここで芽衣には距離を置かれると思ったのだが…


「なるほど…それも一理あるので今日はエプロンなしですね」


 そして、ようやくサンドイッチを作り始めた。

十五分ほどで完成した。ぱんで卵やらハムやら野菜を挟んだシンプルなものだ。


「いただきます」


「いただきます」


「はむ…二人で食べるとおいしいですね」


 もぐもぐしながら少しにこっとして、いつもみたいな大人っぽい顔で周りを見ていた時に比べると、笑った時、幼さもあり、ずっと見ていても飽きない可愛さがある…超可愛い部類だ、これが本物の天使だろう。

そんなことを考えているとじっと見すぎてしまったため、「どうしたの?」って顔で見られたため、とりあえず「だな」とつぶやいておいた。

すると、芽衣は安心したようにまた笑って満足したようだ。

そして、食べ終わったとき、


「如月君、一緒に勉強しませんか?」


 勉強か…俺嫌いなんだよなー

だって今、学校の成績は最下位なんだよね。

声に出さないけど、いろいろ心の中で愚痴った。


「如月君…如月君…おーい」


 はっしまった、つい愚痴が…


「ごっごめん、篠原さん、どうした?」


「大丈夫ですか?」


「ダイジョウブデス」


 やばいやばい、勉強したくないわ…


「ふふ、ならそこに座ってください」


「ん?」


 そう言って座らされた。そして、紙とシャーペンを持ってきた。

俺は勉強しなければならないのか…


「勉強しましょうね」


「わかった」


 こうして、六時間も数学の授業をしてもらった。もちろん休憩はありだ。


「そういえば夕飯はどうしましょうか?できれば外食じゃなくて作ってほしいなーなんて」


 下から見上げるとか、それやめろ…それ強い、破壊力やばいです。参りました。


「そうだな…」


 「どうしたの?」って目で見てくるなよー、ころころと表情変えれる女子って怖ぇ…


「あのっ!パスタ食べたいです、カルボナーラとか」


「はいはい、じゃあパスタとか家にある?」


「ありますよ」


 そして俺はパスタを作った。

途中、作っている最中に芽衣が、「これに変な薬とか睡眠薬とか入れても二人ですから責任は取ってくださいね」何言ってんだよ。そんなもんないし入れる気ないし、この場合何の責任取ればいいんだ?

そして、パスタが出来上がって食べ始めた。

すると芽衣から、


「はいっ、あーん」


「…まって、カップルとかじゃないとこんなことしないんじゃ…」


「あーん」


 向こうは引き下がらないのでそのまま食べてやった。するとまた来たのでまた食べてやった。

芽衣は気にしてなかったけど、これ間接キスでさすがにこれは…

そして食べ終わって、片付けもした後、


「夜遅いし、俺は帰るわ」


「えー、もう帰っちゃうんですか?」


 人ん家のしかも女子の家にこんなにいるなんて、彼氏しかいないだろう。


「そりゃあねぇ」


「そうなんですね、今日はありがとうございます。楽しかったです、明日は朝七時とかに来てくれな

いかなー?」


「え?明日?」


 すると芽衣から史上最大のお願いします演技が来た。

俺の服の裾をぎゅっとひっぱって、腰を引いて自分が見上げないと見えない姿勢になると、少し潤んだ表情で見上げて、


「だめですか?」


 俺、昇天しそうなんだが…


「なに?俺は誘われちゃってるの?」


 すると、掴んでいた服の裾から手を離し、にこっと笑顔で


「はい!待ってますからね、朝ご飯作ってください♪」


 はぁマジ天使、俺、はめられてんのかな?

まあいいや、頑張って起きなければ、







 壮太が帰った後、


「如月君、夜ご飯あれ、完全に間接キスなのに…なんで何も言わないんだろう、少しは私を異性として気にしてほしかったなぁ」


 勉強を教えてあげた時、いつもの授業中の態度とは違ってちゃんと集中してた。

わからないところや理解できなかったところは、聞いてきてくれた。

昼と夜も私がちょっと無茶言い過ぎたけどご飯作ってくれたし…

あれ?なんでこんなことをしたんだろ?


「私だけかな?こんなに考えてるの…」


 静かな部屋では静かに響くだけだった


「あ、そうだ」


 芽衣はぱっと女子力の高い友達を思い浮かべた。

そして電話をかけた。


「もしもし?突然ごめんねー…」


 その電話は一時間以上にも及んだのだった。

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