水溜りに突っ込む天使様
次の日、学校の一限目…
「おいっ如月!寝てるから授業についていけないんじゃないのか?」
壮太は昨日よく眠れなかったせいで、寝不足である。
だから今ガチ寝なのだ。
「如月壮太ー」「壮太ー」「起きねーなー」「おいっ如月ー如月ー」
みんな声をかけてくれているが、今は国語の授業である。
勉強が嫌いな壮太にとって、読書タイムは睡眠時間なのだ。
すると黒板側からチョークが飛んだ。
「痛っ」
俺はようやく起きて時計を見た。
すると、そこには
「うわっしまった!」
そう、如月壮太は、五十分授業で四十分寝ていたのである。
そして、先生から告げられた。
「後で職員室に来なさい」
「はい…」
これで壮太の内申は下がったが、壮太なりに六限目を突破していった。
そして、HRをした後は、ほとんどの生徒は部活などにいくのだが、俺は今一人暮らしなのでそうは
いかない。
しかもたぶん、部活に入ったところでボッチだろう。
それは置いといて、家に帰った俺は、午後五時にバイトのシフトを入れているのでバイトに行く。
ちなみに、それから五時間コンビニでのバイトなのだ。
そうしていつものように客が入ってくると、「いらっしゃいませ」と元気よく笑顔で返事するのがモットーなのだが、
「いらっしゃいms…」
どんどん声が小さくなっていった。
入ってきたのはなんと天使様、私服姿の天使様である。
そりゃあもう店内には店員以外いないため、全員が五度見はするような美少女である。
五度見ってなんだよ…
もちろん例外はなく、俺もその姿に見とれてしまった。
そしてまあ天使様とはばっちり目が合ってしまって、俺は慌ててそらした。
ただ、遅すぎたため気づかれた。
「如月君…ですよね?」
名前を呼ばれたので、前から成績が一番悪い奴とかで覚えられているんだろう。
いや、そんなの覚える必要ないか…あっ、名札みたいなやつをつけてた。
「どうされましたかー?」
そして、学校の天使様…芽衣はじっと目を合わせてきて、
「昨日は傘、ありがとうございました。はいっこれもどうぞ」
そういって傘を返されて、もう一つ別の袋があった。
少し戸惑ったが芽衣は笑顔で
「あの、それは私からのお礼ですので」
と言い、「頑張ってください」と付け足してグミを買って帰っていった。
それを見た店員はというと、
「なぁ、あの子、壮太の学校の?」
「はい」
「名前は?」
「学校一の美少女です」
「そうかそうか」
店長は、ちゃっかりスタッフルームから覗いてたらしく
「店長の命令で壮太君は三十分休憩してやー」
店長は良い人なのだ。
しかし、スタッフルームに行くやいなや、
「やっぱりあの子の名前は?」
店長もやっぱり、店員と同じことを知りたがってるんだなと思った。
さすがに名前は言えないというと深追いはせずに仕事に戻っていった。
そして、バイトが終わりその帰り道、時間は午後十時十五分くらいだろうか、
「如月君、こんばんわ。」
声がしたので振り返ると芽衣がいた。
時間を合わせて待ってたんだろう。
「あ…篠原さん、こんばんわ」
「さっきの食べていただけましたか?」
さっきのとはたぶん、バイト中に頂いた袋の中にはいっていたタッパーのことだろう。
クッキーが入っていた。ありがたくいただきました。
「うん。うまかった。」
そう言うと、ちょっと顔をそらした。
はぁ、しぐさ一つ一つが可愛すぎだろ…
「お口に合って何よりです」
そう言うと会話が途切れ静寂が続き、街灯しか灯ってない暗い道を歩いていく。
「きゃあ」
バシャ
水溜りを踏む音が聞こえた。
芽衣は、暗い道を歩いていたため、水溜りに気づかずに、そのまま突っ込んでいった。
「だっ大丈夫?」
「冷たくて気持ち悪いですね。」
だろうなー
幸い芽衣の家はここから近いらしく「お騒がせしました、また明日」と手を振って帰っていった。
学校の天使、篠原芽衣は、
「はぁぁぁ…水溜り、踏み抜いちゃいました…」
しかし、早めにお礼を渡せて良かったとは思っている。
なぜなら私はかなりの美少女らしく、男子の話題でも時々耳にする。
昔、少し手伝わされただけで、かなり長い期間付きまとわれたり、メールの交換を強要されたりと
面倒だったので、そういうのはできるだけ避けてきた。
だから、今回も早めにことを済ませようと思ったのである。
それは結果成功ってことでいいのかな。
「変に好感を持たれてないでしょうか…不安です…」
「どじっちゃったし大丈夫よね?}
と、自問したりしながら帰った。
昨日の雨の日も…