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論理的な帰結として

作者: 曲尾 仁庵

「信じらんない! ちょっと聞いてよお母さん!」


「何よ大きな声出して」


「お父さんがまたパンツ洗濯機に入れてんの!

 あれほど別にしてって言ってるのに!」


「いいじゃないかパンツくらい」


「ふざっけんなハゲ! もう昨日の服着られない!」


「ハ、ハゲ……」


「ちょっと美也子! 言い過ぎよ!

 お父さんに謝りなさい!」


「嫌よ! それに冷蔵庫のプリン食べたのもお父さんなのよ!?」


「なんだとこのハゲ!」


「お母さんまで……」


「それにお姉ちゃんの本勝手に持って行ってトイレで読んでた」


「マジかこのハゲ!」


「いや、それは……」


「ギロリ」

「ギロリ」

「ギロリ」


「……ごめんなさい」


 お父さんは毛深い。


 柴犬は毛深い。


 以上のことから、論理的な帰結として、


 お父さんは柴犬である。




「信じらんない! ちょっと聞いてよお母さん!」


「何よ大きな声出して」


「お父さんがまたパンツ洗濯機に入れてんの!

 あれほど別にしてって言ってるのに!」


「ワンワン!」


「ふざっけんなハゲ! もう昨日の服着られない!」


「ワォン……」


「ちょっと美也子! 言い過ぎよ!

 お父さんに謝りなさい!」


「嫌よ! それに冷蔵庫のプリン食べたのもお父さんなのよ!?」


「なんだとこのハゲ!」


「お母さんまで……」


「それにお姉ちゃんの本勝手に持って行ってトイレで読んでた」


「マジかこのハゲ!」


「ワフ、ワォフ……」


「ギロリ」

「ギロリ」

「ギロリ」


「……クゥーン」


---


 お母さんはくせ毛である。


 セルカークレックスはくせ毛である。


 以上のことから、論理的な帰結として、


 お母さんはセルカークレックスである。




「信じらんない! ちょっと聞いてよお母さん!」


「ナーゴ」


「お父さんがまたパンツ洗濯機に入れてんの!

 あれほど別にしてって言ってるのに!」


「ワンワン!」


「ふざっけんなハゲ! もう昨日の服着られない!」


「ワォン……」


「ちょっと美也子! 言い過ぎよ!

 お父さんに謝りなさい!」


「嫌よ! それに冷蔵庫のプリン食べたのもお父さんなのよ!?」


「フーッ!!」


「お母さんまで……」


「それにお姉ちゃんの本勝手に持って行ってトイレで読んでた」


「マジかこのハゲ!」


「ワフ、ワォフ……」


「ギロリ」

「ニャロリ」

「ギロリ」


「……クゥーン」


---


 妹はやかましい。


 ニワトリはやかましい。


 以上のことから、論理的な帰結として、


 妹はニワトリである。




「コケーッ! コケ、コケッ!」


「ナーゴ」


「コッコッコッコッコケー!

 コケコッコー!」


「ワンワン!」


「コケッコケッコケッ! コケーコッコッコ!」


「ワォン……」


「ちょっと美也子! 言い過ぎよ!

 お父さんに謝りなさい!」


「コケーッ! コケコッコー!?」


「フーッ!!」


「お母さんまで……」


「コッコッコケーコッコッコッコッコ」


「マジかこのハゲ!」


「ワフ、ワォフ……」


「コケコロリ」

「ニャロリ」

「ギロリ」


「……クゥーン」


---


 私は意外と目がカワイイ。


 ロバは意外と目がカワイイ。


 以上のことから、論理的な帰結として、


 私はロバである。




「コケーッ! コケ、コケッ!」


「ナーゴ」


「コッコッコッコッコケー!

 コケコッコー!」


「ワンワン!」


「コケッコケッコケッ! コケーコッコッコ!」


「ワォン……」


「ブルルルル!

 ヒヒーン!」


「コケーッ! コケコッコー!?」


「フーッ!!」


「ブルルル……」


「コッコッコケーコッコッコッコッコ」


「ヒヒーン!」


「ワフ、ワォフ……」


「コケコロリ」

「ニャロリ」

「ヒヒーロリ」


「……クゥーン」


---


「ワンワン」

「ニャーニャー」

「コケッコ」

「ヒヒーン」


「ワンワン」

「ニャーニャー」

「コケッコ」

「ヒヒーン」


 こうして四匹は一つ屋根の下、

 いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

 おしまい。


「あれ? 田中部長、休み?」


「わかんないっす。朝から連絡つかないそうっす」


「マジか。決裁もらわないといけない書類があんのに」


「俺もっす。ってかみんな困ってるっす」


「ところで、田中部長の椅子に当然のように座っているこの犬は何だ?」


「わかんないっす。朝来たらもういたっす」


「よぉしよし。かわいいな。何犬?」


「たぶん柴っす。確かにかわいいすけど、ちょっと困ってるっす」


「なんで。癒しじゃん」


「でもそいつ、仕事しようとするっす。資料とか見て、超ダメ出ししてくるっす。まあ、何言ってるかわかんないっすけど」


「犬でも分かるほどダメな資料ってことじゃねぇの?」


「心外っす。しかも決済印を押そうとするっす」


「犬が? どうやって?」


「肉球っす」


「おぉう。それちょっとツボかも」


「でも一番困るのが、そいつ、超電話に出るっす」


「電話に!?」


「んで、ワンって言うっす。お客さん大混乱っす」


「あー、そりゃ困るな。誰か世話してくれる人捜すか」


「そっすね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 酔っ払って流れ流れてやってきました。 童話らしからぬカタいタイトルに惹かれて、読んでしまいました。 電話でワンはまずいですね。それはさすがに相手さんが困っちゃいます^^ くすりと笑いまし…
[一言] 凄い! ブレーメンの音楽隊っぽくなった!! 柴犬だけど!! しかもその柴犬(お父さん)が頑張って働こうとしてるぅ~……(*´ω`*)訪れる謎のほっこり。
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