幼なじみは賢者様～最強バカップルがイチャイチャしながら活躍する物語～

極めし一閃

　タルトと戦っているクタイドは、少し冷や汗を流していた。タルトの噂を耳にしているからだ。口では強がりを言っているが、タルトの気配を感じてクタイドは少し動揺しているのだ。

「どうした？ 私を始末するのではないのか？」

「始末されたいのか？ なら、お望み通りやってやるよ‼」

　クタイドは刀を握ってタルトに斬りかかった。が、行動を予測していたタルトは難なく攻撃をかわし、クタイドの後ろに回った。

「チィッ‼」

　刀を持ち換え、後ろに振り向きながら切り払おうとしたが、タルトは剣を上に振り上げた。その際、甲高い金属音が発し、しばらくして上から何かが降ってきた。

「な……ああ……」

　上から落ちてきたものを見て、クタイドは驚きの声を上げていた。それは、自分が手にしていた刀の刃だったからだ。

「刀が無ければ、手も足も出ないな」

　タルトは剣を鞘に納め、クタイドに近付いた。そのまま自分を捕まえるつもりなのか？そう思ったクタイドは魔力を解放した。それに動揺したタルトは、一歩だけ後ろに下がった。

「このまま捕まってたまるか‼ お前みたいなおっさんに倒されるほど俺は弱くない‼」

「プライドがあるのか。だが……プライドが高ければ高いほど、人は弱い」

「違うな‼ 俺は強い‼」

　クタイドは魔力で刀を製造し、二刀流の構えとなった。

「このまま貴様を斬り刻んでやる‼」

　タルトに向かって走って行き、そのまま魔力の刀を振り始めた。タルトは剣を使って刀を振り払いつつダメージを受けることを回避していたが、次第にクタイドの動きが早くなっていた。

「はっはっは‼ この俺の剣技に敵うものか‼」

「段々と早くなっているが……速さだけで人は斬れないぞ」

　タルトはそう言った後、二回素早く剣を振ってクタイドの魔力の刀を破壊した。

「刀を壊して勝ったつもりか？ 魔力があれば刀は作れるぞ‼」

「だが、戦いに必要な体力がなければ魔力は使えない。そもそも、君にはもうあの刀がないから……」

「私の敵ではありません」

　クリムの声が聞こえた。クタイドは雑魚と戦っているはずのクリムの方を見た。彼が見た光景は、クリムとリナサに倒された部下達が全員倒れている光景だった。

「そんな……早すぎるぞ……」

「たいして強くなかったです」

「次はあなたの番よ」

　リナサは重力の闇を発し、クタイドの動きを封じた。その後、クリムが水をクタイドの足元に発し、凍らせてさらに動きを封じた。

「タルトさん、今です‼」

「ありがとう、二人とも」

　タルトは二人に礼を言って、剣を振ってクタイドを一閃した。

「卑怯だぞ……一体一ではなかったのか……」

「戦いに卑怯も何もない。それに、私は一対一で戦っているつもりはなかった」

「ぐ……」

　クタイドは小さく悲鳴を上げ、その場に倒れた。

　戦いを終えた後、タルトはクリムにこう言った。

「後始末は私達がする。クリムちゃんはシュウの元へ行ってくれ。嫌な予感がする」

「分かりました」

　話を聞き、クリムは急いで事務所の中へ入って行った。リナサは作業中、タルトにこう聞いていた。

「タルトさん、嫌な予感って？」

「敵がまだいるかもしれない。裏に回って侵入することも可能だ」

「じゃあまさか、この戦いは私たちを引き付けるため？」

「かもしれないな。私達も中に入りたいが……この惨状を片さないと」

「人が集まってるしね……」

　その後、二人は急いで戦いの後を片付けた。

　事務所内に戻ったクリムは、シュウとコンリの姿を探していた。

「せんぱーい‼ あとロリコンクソジジイ、どこですかー‼」

　廊下を走って探していると、別の方から足音が聞こえた。音を聞き、シュウかと思って抱き着こうとした。

「せんぱーい‼ 心配しましたよー‼」

「誰だお前は!?」

　だが、それはシュウではなかった。手に剣を持っているため、クリムはすぐに敵と判断してドロップキックをお見舞いした。

「急にキックするなんてずるい……」

「どうした!?」

　その時、その敵の仲間がクリムを取り囲んだ。クリムは舌打ちをし、魔力を解放した。

「敵が中にもいたんですね……」

　先ほどの戦いが自分たちを引き付けるためだと察したクリムは、風の魔法で敵を倒し、行動を再開した。

　しばらく探していたが、二人の姿は見えなかった。すると、物陰に隠れていた事務員を見つけた。

「大丈夫ですか？」

「ギルドの戦士……賢者のクリムさん‼ よかった……助けに来てくれたんですね」

「はい。ですがその前に、シュウというガンナーとロリコンクソジジイを探しています。どこか隠れているってことはありませんか？」

「なら、地下の避難室は見てみましたか？ そこに避難したという可能性があります」

「そこの入口はどこですか!?」

「そこの角を左に曲がって直進です。下矢印の避難灯があるので、それを目印にしてください」

「それはいい事を聞いた」

　この時、背後から男の声が聞こえた。クリムは杖を持って振り返りざまに殴ろうとしたが、その攻撃は通用しなかった。

「賢者様、そんなちっぽけな攻撃は俺に通用しませんぜ？」

　そこにいたのは、巨大な大男だった。