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二人の歓送会?

 バカップルを乗せた車は、シェラールのギルドに到着した。事情を聞いている受付嬢は、バカップルの姿を見てすぐに近付いた。


「お話は聞いています。あの二人がここに入るとは夢のようです」


「まぁ、スネックさんが復帰するまでの間ですが」


「短い期間ですが、お二人をサポートしますので、ご安心ください‼」


 と、受付嬢はシュウを見つめてこう言った。嫉妬したクリムは受付嬢をシュウから引き離し、シュウの手を握ってタルトの元へ向かった。


「全く、先輩は私の彼氏ってことを皆把握してないんですかね?」


「多分そう。お兄ちゃんかっこいいから」


 クリムとリナサがこう話しているが、タルトはシュウと自分の顔を何度も見比べながら呟いた。


「私も昔はシュウと似た顔をしていたが……」


「父さん、あまり深く考えない方がいいよ」


「……だな」


 シュウ達は会話をしながら、エイトガーディアンが住む部屋に向かって行った。


「ここがエイトガーディアンが住む部屋……だが」


 タルトは扉を触り、不信感を募らせていた。


「おかしい。いつもはハヤテとナギの喧嘩の声や、フィアットの馬鹿笑いの声が響いているはずなのに」


「静かだね」


 タルトとリナサの話を聞き、クリムはこう尋ねた。


「いつもは騒がしいんですか?」


「ああ。ライブ会場にいるのかってくらい騒がしい」


「……まさか皆、お兄ちゃんとクリムお姉ちゃんのために何かしてるんじゃ」


「かもしれないな」


 タルトが扉を開いた瞬間、真っ暗だった部屋の明かりが点いた。だが、部屋を照らしたのは部屋の中央にあるミラーボールだった。


「いらっしゃーい‼ お二人さん‼」


「シュウさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼ お待ちしてました‼」


 フィアットが大きな声で叫び、ナギがシュウに抱き着いてきた。その後、ハヤテやボーノがジュースを持ってバカップルに近付いた。


「どうだ? 驚いたか?」


「このサプライズの為に、知り合いからミラーボールを借りたんだぜ」


「お前ら……何やってんだ……」


 変わり果てた部屋を見て、タルトは茫然とその場に立ち尽くしていた。


「部屋を勝手に改造しちゃって……叱られるの私なんだけど……」


「私は止めなさいって何度も口酸っぱく言ったんですが……はぁ……」


 惨状を止めようとしていたキャニーが、死んだような目でタルトにこう言った。そんな中、シュウの取り合いでクリムとナギの口喧嘩が始まっていた。


「先輩は私の彼氏です‼ いい加減離れてください‼」


「いいじゃないの‼ 私だってイケメンとイチャラブしたいわ‼」


「ハヤテさんとすればいいじゃないですか‼ それかスネックさん‼」


「ハヤテとそんな仲じゃないし、スネックみたいなおっさんに片足突っ込んでる奴とイチャラブなんてしたくないわ‼」


「誰がおっさんに片足突っ込んでるんだ?」


 別の部屋から、欠伸をしながらスネックが姿を現した。シュウはスネックの姿を見て、驚きながらこう聞いた。


「スネックさん。怪我はいいんですか?」


「大したことはない。だが、武器がないからしばらく動けない」


「スネック、病室が嫌だからここで寝てることにしてるんだって」


 と、リナサがシュウの耳元でこう言った。シュウはなるほどと呟いたが、リナサがシュウに抱き着こうとしているのを察したナギが、慌ててリナサを止めた。


「どさくさに紛れてシュウさんに抱き着くのを止めなさい‼」


「あんたが止めなさい‼」


 クリムはナギをシュウからどかし、シュウを守るように抱き着いた。




 騒ぎが収まった後、バカップルは来客用の部屋にいた。タルトから、スネックが復帰するまでこの部屋を使ってくれと言われたのだ。


「ハリアの村のギルドの部屋よりも広いですねー」


「やっぱりエイトガーディアン用の部屋だから、快適に住みやすいように広くしてるんだろ」


 シュウは荷物を置きながら、部屋中を見回した。ベッドが二つあり、隅には化粧台もある。他にも滅茶苦茶デカいテレビや衣装入れのタンス、そしてトイレと風呂は別室になっていた。


「スイートルームみたい……」


「ですね。一流ホテルの部屋ですよここ」


 その時、リナサが部屋に入ってきた。


「お兄ちゃん、クリムお姉ちゃん。部屋はどう?」


「俺達が住む部屋より広い」


「ホテルみたいです」


「気に入ってくれてよかった」


 リナサがこうった直後、ナギが部屋に入ってきた。その手には、いろんな荷物が入ったバックがあった。


「あ‼ 先を越されたか‼」


「先を越されたかって?」


「リナサ、あんたシュウ君と同じ部屋で寝るつもりでしょ!?」


 ナギの言葉を聞き、リナサはそっぽを向いた。


「私の目を見なさい‼」


「そんなことないですよー」


「嘘つけ‼ 目が泳いでるわよ‼」


 ナギがリナサを問い詰めていると、クリムが魔力を発して二人に近付いた。


「この部屋で寝るつもりって……どういうことですか?」


「シュウ君と同じベッドで寝るつもりなのよこの子‼」


「あなたもですよね?」


 クリムはナギが持つ荷物を見て、こう言った。もう逃げられないと悟ったナギは、叫び声をあげた。


「そうよ‼ そうよそうよ‼ この時をずっと狙ってたのよ‼ 私だってイケメンの人と同じベッドで寝たいわよ‼ そのまま寝とってやるって思ってたわよ‼」


「あなたの部屋があるじゃないですか、それを使ってください‼」


「嫌よ‼ シュウ君と寝るまで、この部屋から出てかないから‼」


 その後、クリムとナギの言い争いが始まった。シュウは少し呆れ、ベッドの上で横になった。その隣に、リナサが横になった。


「騒がしくなりそうだね、お兄ちゃん」


「そうだな」


 と、二人は騒ぐクリムとナギを見てこう言った。

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