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師匠としての、育ての親としての言葉

 野生の咆哮のハチェーズTV占拠事件が終わってから数日が経過した。事件が終わった以降、バカップルには元気がなかった。ハリアの村の戦士達はシュガーとミゼリーから事情は聞いているが、誰も二人を元気付ける方法は思いつかなかった。


「あれからほぼ一週間か……」


 ラックはテレビを見ながら呟いた。横にいたジャックはそうだなと返事をしながら、緑茶を飲んでいた。


「あの二人にとっては、初めての経験だったもんな。自分達の行動が遅いせいで命が奪われるってこと」


「気持ちは分かります。だけど……その……」


 ラックの様子を見て、ジャックはため息とともにこう言った。


「本当に気持ちが分かってるのか? もし、お前がシュウとクリムと同じ立場ならどんな気持ちだ?」


「……悔しいです。そして……遺族の人へ謝りたいです」


「そこだよ。事件の後で会長の家族には謝罪して、言葉を貰ったようだけど」


 ジャックがこう言った直後、ティラの能天気な声が響いた。


「わりーわりー、なんかあったようだけど、ずっと寝てたわー」


「わりーじゃないですよ。今回の事件がきっかけで、シュウとクリムが落ち込んでいるんだから」


「何かあったの?」


 ティラの言葉を聞き、ラックとジャックは呆れながら事件の事を話した。話を聞き終え、ティラはどこかへ行った。それを見て、ジャックはもしやと思い、慌てて立ち上がった。


「まさかシュウとクリムの部屋に行くんじゃないでしょうね?」


「あたり。ま、あいつらの事は私に任せなよ。一応これでもあいつらを育てた親なんだからさ」


 そう言って、ティラは再び歩き始めた。その姿を見て、ラックとジャックは不安しかなかった。




 バカップルの部屋。バカップルは部屋のベッドの上でずっと抱き合いながら横になっていた。愛し合っているわけではない。今だに事件の事を引きずっているのだ。そんな中、ティラが部屋に入ってきた。


「話は聞いたよ、ちょっと失礼するね」


 と言って、ティラはバカップルの近くに座った。だが、それでもバカップルは反応しなかった。


「うっとおしいと思うなら無視すればいい。これから話をするけど、無理に聞く必要はない」


 ティラは少し息を吸い、話を始めた。


「私達の頑張りで人の命が必ず助かる……ってわけじゃない。人はへま失敗をする生き物、どこかの仕事でへまをしてとんでもない事になる時だってある」


 この言葉を聞き、バカップルの体が少し動いた。反応を見たティラは、少し微笑んで話を続けた。


「ミゼリーも言っただろ、似たようなことを何度も体験したって。あんたらだってそうだよ。人の命がかかった仕事で、失敗するか、残虐な敵の手で誰かが命を落とすって。敵がやった場合はあんたらのせいじゃない。今回だってそうだろ? あの会長は頭のねじがぶっ飛んだ敵が殺した」


「でも……」


 ここでクリムが起き上がって返事をした。ティラはクリムの口をふさぎ、話を聞くようにジェスチャーした。


「でもじゃない。時と状況として助けられないこともある。ギルドの仕事ってのは簡単な物じゃないんだ。いくら賢者として魔法を極めたって、ガンナーとして銃器のエキスパートになったとしてもどうしようもない時がある」


 この言葉の直後、シュウが起き上がった。泣きそうな顔のシュウを見て、ティラは優しくシュウを抱きしめた。


「世の中っつーのは理不尽だ。助けられる時と無理な時がある。私でもそれがどういう時かいまだに分からない。おい、クリムも抱きしめてやるからこっち来い」


 と言って、ティラは無理矢理クリムを抱きしめた。


「助けられなかった、依頼を達成できなかった。失敗して深く反省するのはいい事だ。だけど、そこでくじけたら前には進めない。それに、失敗の事を思い出していたらこの先ずっと失敗ばかりする。いいか? お前達がこんなんだったら、他の皆が心配するぞ。それに、死んだシュウの本当のおふくろさん、それにクリムの両親もあの世で心配するぞ」


「師匠……」


「ティラさん……」


「私もそうだったよ、初めて自分のミスで他の人が命を落とした時、ずっと落ち込んでた。だけど、このミスがあったから私はより強くなった。もう誰も死なせはしないと思った。落ち込んでばかりで皆に心配させて溜まるかと思った」


 ティラはバカップルの頭をなでて、最後にこう言った。


「前を向け。強い気持ちを持て。理不尽なんかに負けるな」


 その後、バカップルはティラの腕の中で泣き始めた。ティラはバカップルが泣き止むまで、ずっと頭をなでていた。




 数時間後。ティラは部屋から出て自室に戻ろうとした。その時、ミゼリーと遭遇した。


「あの二人、どうでしたか?」


「励ました。何か重い物が取れたのか、ずっと泣いてたよ」


「……そうね。私もそうだったわ。初めて失敗して関係のない人が死んだ時、ずっと自分を責めてたわ……」


「あの時も私が励ましたなー」


 と、思い出すようにティラは呟いた。


「世の中ってのはホント、理不尽だ。二人にはそれに負けないくらい強くなって欲しい。もちろん、このギルド全員にもな」


「はい。私もまだまだ甘いです。これからも精進していきます」


「そうかいそうかい。じゃ、私は部屋戻って酒飲むわ。んじゃー」


 ティラは手を上に上げて左右に振りながら、自室へ戻って行った。

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