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海の中の激闘

 ララバイソングに潜む鮫型モンスター、ウォーリアーシャーク。こいつがいる限り、ゼルの遺品を取り出すことは到底不可能だ。クリムはそう思っている。今現在、戦えるのはシュウと自分とティラ。ラックも自分の自然魔法が海の中では役に立たない事を察しており、ウォーリアーシャークの気を引くような行動をしていた。


「クリム、こいつを倒すのはお前の役目だ。銃じゃ役に立たない」


 ティラはクリムにこう言った。クリムは額から血を流すウォーリアーシャークを見て、返事をした。その時、シュウがクリムに近付いた。


「俺がお前を支える。だから、心配するな」


「ありがとうございます。先輩」


 シュウはクリムの背後へ回り、ウォーリアーシャークの様子を見ていた。


 しばらくすると、ウォーリアーシャークの気を引いていたラックから連絡が入った。


「攻撃の準備を始めたようだ。防御の態勢をとってください‼」


「好都合‼ ラックさん、私が反撃します。私の後ろに回ってください」


「大丈夫ですか?」


「はい‼ 私を信じてください‼」


 ラックはクリムの言われた通りにクリムの後ろに回り、ウォーリアーシャークを引き寄せた。その直後、ウォーリアーシャークはラックに向かって突進してきた。だが、その前にいるクリムが強烈な光魔法を放った。


「グッ‼」


 魔法を撃った際の反動がすごいせいか、クリムが急に後ろに下がった。シュウは何とか後ろを支えたが、少し下がってしまった。


「大丈夫ですか先輩?」


「ああ。やっぱり、海の中で戦うと勝手が違うな」


 シュウはこう言葉を返すと、ウォーリアーシャークの様子を見た。先ほどの魔法のダメージは効いたと思うのだが、まだウォーリアーシャークは倒れてはいなかった。


「タフな奴だな」


「だけど、さっきの攻撃で防御は崩れた」


 ティラはこう言うと、水中銃でウォーリアーシャークに攻撃した。


「あの攻撃で奴の皮膚に穴が開いた。そこを狙えば、銃でもダメージは通る」


 ティラが撃った弾丸は、傷を受けたウォーリアーシャークに大ダメージを負わせた。痛がる様子を見せるウォーリアーシャークを見て、クリムはにやりと笑った。


「そろそろこの戦いに幕を下ろしましょう‼」


「ああ‼」


 クリムはシュウが持つ水中銃に魔力の弾丸を渡し、シュウはそれを銃口にいれた。


「一気に決めるぞ」


 シュウは銃を撃つ構えをし、ウォーリアーシャークに狙いを付けた。そして、タイミングを見計らって銃を撃ちだした。発砲された弾丸は物凄い勢いで飛んで行き、ウォーリアーシャークを貫いた。


「やった‼」


 戦いを見ていたラックは、この一撃で決着したと察した。その後、ウォーリアーシャークは痙攣した後、そのまま海の底へ沈んでいった。


「ああああああああああああああああああああ‼ ひれ酒ェェェェェェェェェェェェェェェェェ‼」


 ティラは叫びながら、沈んでいくウォーリアーシャークに向かって泳いでいった。




 戦いを終えたシュウとクリム、ラックはララバイソングの中を探し始めた。


「ティラさんは無視してもいいんですか?」


「ええ。ほっておいても大丈夫でしょう」


「師匠の事だし、酒の事が絡むと異様に強くなるから」


 そんな話をしながら、三人は船内を探索していた。先ほどのウォーリアーシャークを倒したせいか、周りにいたモンスターはシュウ達を見て、驚いて逃げて行った。


「さっきの奴が主レベルだったみたいですね」


 クリムは逃げていくモンスターを見て、こう言った。


「でも、これで探索は楽になったな」


「はい。この隙に探しましょう」


 船内を探していると、クリムはペンダントと腕時計を見に付けた骸骨を見つけた。


「これって……」


「ゼルさんだ」


 クリムは骸骨が身に着けている腕時計を見て、シュウとラックにこう言った。


「この人がゼルさんです」


「ここにいたんだ……」


 シュウはゼルの遺骨を見て、小さく呟いた。その後、骸骨が身に着けているペンダントと腕時計を回収し、上へ上がって行った。


 岸辺へ上がり、シュウ達はダイバースーツを脱いで休んでいた。


「ふぅ……これで終わりだな」


「はい。これで、モリスさんが喜べばいいんですが……」


 バカップルがこう話していると、ラックは海の方をずっと見ていた。


「あの、ティラさんはどうしたんですかね……」


「あ、忘れてた」


「まぁ、多分大丈夫でしょう」


 そう返事を返すと、突如海の方から轟音のような音が聞こえた。


「な……何だ何だ!?」


「何か変な音が聞こえるぞ」


「海の方からだ」


 この音を聞き、シュウ達は戦闘の隊形を取った。


「一体何ですかね?」


「さっきのウォーリアーシャークみたいにデカい奴か?」


「嫌な予感がする……」


 こう話した後、海から先ほどのウォーリアーシャークを担いだティラが海から現れた。


「ひれ酒ゲッツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼」


 岸辺にいた男達は、ウォーリアーシャークを担いで岸辺に戻るティラを見て、悲鳴を上げて逃げて行った。


「師匠……」


「全く……酒を飲みたいからって……」


「見てるこっちが恥ずかしい……」


 酒が飲めると大騒ぎしているティラを見て、シュウ達は少し恥ずかしがっていた。

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