海の中に潜むモノ
ララバイソングの探索を再開し、シュウ達はゼルの遺品を探していた。しかし、ララバイソングは意外と広く、モンスターもそれなりにいたため、探索は困難だった。
「一旦戻ろう」
シュウの言葉を聞き、クリム達は休憩と空気補給の為に海上へ上がった。陸へ戻り、モリスの所で休んでいると、近くのダイバーが慌ててやって来た。
「なぁ、あんたらギルドの戦士なんだろ?助けてくれよ‼」
「何かあったのですか?」
「あれを見てくれよ‼」
「俺が行きます」
シュウはダイバーの人に連れられ、海の近くまで来ていた。そこにはすでに人だかりができていて、悲鳴を上げる人や嗚咽をしながら去っていく人がいた。
「こんなのが流れてきたんだよ。これ、きっと事件だよ‼」
「これって……」
シュウが目にしたのは、傷ついて血が付いたゴーグル。血も付いているが、肉片らしきものもゴーグルのメガネ部分に付着していた。
「モンスターに食われたか?」
「多分、この人だと思います」
と、近くにいた女性が携帯の動画をシュウに見せた。
「これは?」
「生中継でララバイソングを探索していた人の動画です。あ、この部分です」
女性がこう言った直後、動画から投稿者らしき人物の悲鳴、そして映像には血が映った。
「この動画はいつ撮られたか分かりますか?」
「今から二時間前です。そう言えば、この動画の投稿者らしき人物が海に潜る前に意気込みを叫んでたの、私見ました」
「そうですか」
会話を終え、シュウはこの事をクリム達に伝えた。
「戦いさえもできない奴が、視聴回数の為に危険な場所に行くなってーの」
「もうその人亡くなってると思います」
ラックはシュウが連れてきた女性の携帯に流れる動画を見て、ティラにこう言った。
「モンスターに襲われたのは確実ですね」
「影が映ってたな。多分魚系で凶暴な奴だろ」
「多分ウォーリアーシャークだと思うよ。あいつら、この辺に出没するって言ってたし」
ティラはチョコバーを食べながらこう言った。ウォーリアーシャークとは、魚……というか鮫のようなモンスターである。歯による噛み砕きの破壊力、凶暴性も鮫より上である。
「あいつ、フカヒレにするとうまいんだよな。よし、あいつを倒して今日はフカヒレ酒だ」
「師匠、仕事を忘れないでください」
呆れたシュウがこう言った。クリムは女性に対し、情報をありがとうございますと言って頭を下げた。
「これから他のダイバーの人達にララバイソングに近付くなと伝えてきます。ウォーリアーシャークが出てきた以上、騒ぎを作るわけにはいきません」
「だな。依頼のついでだ、そいつもやっつけよう」
そう言うと、シュウは水中銃の手入れを始めた。
数分後、クリム達は再び海の中へ潜って行った。
「先輩、危険があったらすぐに叫びます」
「ああ。俺の方でも何かあったら叫ぶ」
「とにかく、何かあったら叫べばいいんだな」
「はい。何もなければいいのですが……」
話をする中、ラックは一つ不安なことがあった。今現在陸にいるダイバーにはウォーリアーシャークの事を伝えたのだが、まだ海に潜っているダイバーはこの事を知らない。もし、知らずにララバイソングに近付いて、ウォーリアーシャークの餌になったら大変だと。
「早く行こう」
「慌てるなラック。ここで焦ってもいい結果は付いてこないぞ」
いつもより冷静なティラを見て、ラックは少し驚いていた。
「ティラさんもまじめに仕事をするときはするんですね」
「当たり前よ。人の命がかかってる以上、酒の事は後回しだ。おっと、敵さんのお出ましだ」
ティラはシュウ達に下がるように伝えた後、ウォーリアーシャークの影を目で追った。
「一部が血で染まってますね……」
「逃げ遅れたか、気付かずに餌になったか……考えるのは止めよう。とにかく広い所で待機。奴が出てきたら私とシュウで攻撃だ」
「はい」
「私も戦えます」
ティラはクリムの返事を聞き、少し考えてからこう言った。
「何かできるか?」
「光と闇なら海の中でも使えると言ったではありませんか」
「ビームだろ? だけど、あいつの方が早いぞ」
「ビームは使いません。闇の重力を使います」
クリムの返事を聞き、ティラは小声でその手があったかと呟いた。
「来ました‼」
ラックの叫びが聞こえた。ウォーリアーシャークはシュウ達に気が付き、突進するかのように接近してきた。
「私がターゲットのようですね」
クリムは突進をかわし、魔力を練り始めた。しかし、慣れない海中での戦いのせいか、うまく魔力を練る事は出来なかった。
「クリム、援護する‼」
シュウが小型の水中銃を持ち、ウォーリアーシャークに向けて弾丸を放った。だが、ウォーリアーシャークは飛んでくる弾丸をかわしてしまった。
「海の中だから少し動きが違う……」
「先輩‼」
クリムの声を聞き、シュウは間一髪でウォーリアーシャークの突進をかわした。其の後ろでは、ティラが銃を構えていて、ウォーリアーシャークに向けて弾丸を撃った。放たれた弾丸はウォーリアーシャークの額に命中した。しかし、流れる血の量を見て、ティラはダメージが薄いと判断した。
「こりゃ、結構苦戦しそうだねぇ」
ティラはリロードをし、小さく呟いた。




