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悲しき三角関係

 シュウは一人で風呂に入っているが、深いため息を吐いていた。


「クリム……」


 ぽつりとクリムの名を呟いた時、ラックが風呂場にやって来た。


「クリムさんと一緒に入りたかったのかい?」


「ああ……」


「まぁ、たまには女同士で入るのもいいんじゃないか?」


「ああ……」


「元気出しなよ」


 その後、シュウとラックは湯船に浸かり、話を始めた。


「モリスさんの奥さんを見たかい?」


「ああ……」


「え? 見たの?」


「ああ……?」


「……さっきからその返事しかしてないよね。元気出して、ほんとに」


「ああ……あれ? ラック、いつの間に!?」


「気付いてよ‼ シュウ……クリムさんが来てからキャラが変わってるよ」


「そうか?」


「そうだよ。それより、奥さんを見た?」


「いや」


「実はさ……風呂場に行く時見たんだよ、モリスさんとその奥さんを」


 ラックはその時の様子を、シュウに詳しく話し始めた。


「椅子に座ってたんだけど、無表情で、モリスさんの言う事には返事をしているけど、どこか元気が無さそうなんだよ」


「さっきの俺みたいにか?」


「うん。子供さんもいて聞いてみたけど、いつもあんな感じだって」


「うーん……」


 話を聞き、シュウはモリスの依頼を思い出していた。ララバイソングにいる亡き友人の遺品を持ってきてほしいと。


「……何だか今回の依頼に関係あるのかな?」


「調べてみる価値はありそうだね」


 その後、二人は風呂から出てメイドや執事に話を聞き始めた。


 その一方、ティラはクリムの背中を洗っていた。


「ちょっと、痛いですよティラさん‼」


「そうかー? 私はいつもこの位の力加減で背中洗ってるけど」


「私とティラさんの体の作りは違うんですよ、そんな力強くごしごしされたら肌が荒れちゃいます‼」


「荒れろ‼ 私みたいに肌荒れに苦しめ‼」


「お酒の飲みすぎじゃないんですか!?」


「うっさい、何でもかんでも酒のせいにするな‼」


 と言って、ティラはさらに力を込めてクリムの背中を洗い始めた。




 シュウとラックはモリスの家に長年仕えている執事から話を聞いていた。その執事は二人の前に座り、話し始めた。


「実は……モリス様の奥方、リンス様は亡くなられたご友人、ゼル様と付き合っていたんです」


「え……それってもしかして……」


 執事はシュウの話を聞き、頷いてこう言った。


「はい。モリス様と友人のゼル様は、同じ女性……リンス様に恋をしていました。そして……リンス様はゼル様を選びました」


 三角関係の結末を聞き、シュウとラックは言葉を失っていた。だが、どうしてもわからないことがある。何故今、リンスはモリスと結婚したのか?


「どうしてリンスさんはモリスさんを選んだんですか?」


「それは、私が話をしよう」


 と、モリスが部屋に入って来た。執事がモリスの気持ちを思って下がらせようとしたのだが、モリスは大丈夫だと言って二人の前に座った。


「確かに、リンスは最初、ゼルと付き合っていた。私は恋に破れたが、ゼルならリンスを幸せにできる。それを成し遂げると分かり、二人が結ばれたのを祝福した。しかし……あの船に乗っていたゼルは海の中に……。ゼルはいい奴だった、リンスもあいつに恋をするくらい気持ちのいい奴だった。私も、奴の事を最高の友人だと思っていた……」


「で、そのあとは」


「リンスと結婚したのは、親が決めたからだ。私とリンスの親は結婚を決めて喜んでいたのだが、私とリンスは正直複雑だった……」


「そんな事があったんですね」


「ああ。それから……ゼルを失った日から、リンスは笑わなくなった。子供が生まれた時も、私が資産家として成功しても……」


「そうだったんですか」


 ラックの言葉を聞き、モリスは立ち上がってこう言った。


「私は、ゼルに変わってリンスを幸せにしようと全力で尽くしてきた。再び、リンスの顔に笑みを取り戻すために……だが、未だに彼女の笑みは戻ってきていないんだ」


「分かりました。何が何でもゼルさんの遺品は俺達が持ってきます」


 シュウの言葉を聞き、モリスは涙を流してこう言った。


「本当にありがとう……若き戦士よ……」




 翌日。シュウとラックは海に潜る前に、クリムとティラにあの時の話を聞かせていた。


「そんな過去があったのか」


「だったら、もっと頑張らなくちゃいけませんね」


「ああ。誰より先にゼルさんの遺品をゲットしないと」


 シュウはそう言いながら、モリスから受け取ったゼルの資料を渡していた。


「昨日、モリスさんから聞いたんだ。ゼルさんはリンスさんの写真が入ったペンダントやディージョックというブランドの時計を見に付けている。それを目当てに探そう」


「はい‼」


「よし、それじゃあ行くぞ‼」


 話を終え、シュウ達はダイバースーツを着て海の中に潜って行った。




 海の中。シュウ達より先に海に入っていたダイバーが周囲を見渡していた。そのダイバーの手元には、カメラのような物が握られていた。このダイバーは、海に潜って動画を取っていたのだ。


「えー、わたくしは只今ララバイソングの中にいます。いやー、なんか嫌な雰囲気ですね。ここに来るまでに何度も骸骨を見ました。気持ち悪かったですねー」


 生中継のつもりなのか、こう語りながら船内を探っていた。すると、目の前に巨大な影が映った。


「え? 何? 何なの今の?」


 振り向いて影の正体を掴もうとしたのだが、何もなかったので彼は先に進んだ。


「気のせいですね。気のせい気のせい。海の中だから何でもありなんですよ、きっと」


 その時、何かが後ろからぶつかってきた。その衝撃で手からカメラが離れた。この時の映像が、ネット上で流れていた。


「何だ? 体が……クッソ‼ 一体誰が!? え……嘘だろ……あ……ああああああああああああああああ‼」


 悲鳴の直後、映像には血のような物が流れた。

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