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いざ、制裁の時‼

 ストーカーは自分の予想が外れ、かなり戸惑っていた。火災があれば誰だって外に出たがるはずだと思い、火の魔法でボウガンの矢先に火を付けて放ち、別荘に火を起こした。しかし、中から誰も出てこないのだ。


 しばらくすると、偶然通りかかった人の声が聞こえた。


「あの人です‼ 最近変な動きをする変な人は‼」


 この声を聞き、ストーカーはびっくりして急いでレンタカーへ向かった。タイヤがパンクしているせいでハンドル操作が難しいのか、車は蛇行運転を繰り返しながら、道路の外堀に落ちてしまった。


「いつつ……」


 転落の際、ストーカーは体を強くぶつけてしまった。それでも、逃げるために痛みを我慢して立ち上がり、走ろうとした。だが、突如右足に強い衝撃が走った。


「ぐあっ‼」


 悲鳴を上げながら、ストーカーは転倒した。立ち上がろうとしたのだが、右足に異変を察した。動こうとしても痛みが走り、少し熱い物を感じた。


「まさか……」


 右足を触ると、手に液体のような物が付いた。それが血である事をストーカーはすぐに察した。


「ストーカー以外にも、いろんな罪を背負っちまったな」


「殺人未遂、放火。どれも罪は大きいですよ」


 後ろには、銃を構えたシュウと魔力を解放したクリムが立っていた。


「こうやって面と話すのは初めてだな」


「く……来るな‼」


 ストーカーは後ろに下がりながら逃げようとしたのだが、すでに後ろに誰かが立っていた。


「逃げても無駄だよ~」


「痛い目にあいたくなければ、大人しく言う事を聞いてください。お勧めします」


 後ろにはラックとシュガーが立っていた。二人の姿を見て驚いたクリムはこう聞いた。


「どうして二人がここに?」


「別荘地に変な奴がいるって連絡があったんだよ。それで、僕達が来たんだ」


「もしかして、クリムちゃん達の依頼に関係すること?」


「ええ。私の予想だと、この人がマリネットさんのストーカーです」


 クリムはそう言って、ストーカーの体をひもで縛り始めた。


 連行されるストーカーを見て、マリネットはホッとしていた。


「これで一安心ね……」


「これで安心ですよ。マリネットさん」


「依頼が終わるまでもう少しありますけど、それまで一緒にいますか?」


 マリネットの元に戻って来たバカップルが、マリネットにこう聞いた。


「ええ。最後まで護衛をお願いね、戦士さん」


 と、マリネットは笑みを見せてこう答えた。




 それからマリネット護衛の依頼が終わり、バカップルはギルドへ戻ってきた。戻ってきたと同時にギルドの戦士達……というか、男達がマリネットさんはどうだったという質問をバカップルに何度も聞いてきた。何度も同じ質問をされたため、呆れたクリムは男達を黙らせるために氷漬けにした。


 それはさておき、マリネットのストーカーは厳しい取り調べを受けていた。そんな中、バカップルは部屋に戻ってベッドの上でイチャイチャしていた。


「いや~、やっぱり自分達のベッドの上でイチャイチャするのが一番ですよね~」


「そうだな、他の人が使っているベッドだと、なーんか遠慮しちゃうんだよなー」


 バカップルは互いを抱きしめあいながら、ベッドの上でゴロゴロしていた。そんなバカップルを見たのか、ため息とともにラックが入って来た。


「マリネットさんの別荘でもそうしていたのかい?」


「そんなわけねーだろラック。俺達だって、場所と時くらいわきまえるよ」


「ソファーの上でイチャイチャはしましたけどね」


「それが賢者のする事かな……まぁいいや。それより、あのストーカーが洗いざらい全部はいたよ」


 この言葉を聞き、バカップルはすぐに立ち上がった。ラックは椅子に座り、取り調べで得たことを話し始めた。



 最初、ストーカーはマリネットに恋心を抱いていた。それが徐々に歪んでいき、次第には彼女を独り占めにしたいという気持ちが強くなってきた。そして、彼女を殺し、その死体を自分の部屋に飾ろうと計画をしていた。その為、マリネットのストーカーを始め、殺すためには何でも行ったという事だった。



 話を聞き終え、クリムは大きなため息を吐いた。


「馬鹿な男ですね。そんなことをして独り占めにしても、無駄なことなのに」


「だよな、自分一人のものにするってことがおかしいよな」


「話を聞いてて僕もそう思ったよ。でも、純粋な思いがちょっとした歪みでこうなるから……」


「少し怖い話ですね」


 クリムはシュウに抱き着き、神妙な顔でこう言った。


「もしかしたら、私も先輩への気持ちが強すぎるせいで、歪んで変なことをしていたかもしれません」


「そうなったら、俺が全力で止める」


「先輩……」


 クリムはシュウに抱き着くとともに、ベッドの上に横になった。再びイチャイチャし始めたバカップルを見た後、ラックは立ち上がってこう言った。


「あのストーカーは明日、刑務所に送る事になってるから。何か言いたいことがあったら早めにね」


「大丈夫だ。あいつに言う言葉はない」


「あ、私はあります」


 手を上げて、クリムはラックにこう言った。


「刑務所から出て、似たようなことをしたら今度は半殺しにしてぶっ飛ばすって伝えておいてください。そうすれば、もう二度とストーカーなんてしないと思いますから」


「ああ。クリムちゃんが言うなら確実に言う事を聞くね。分かった、伝えておく」


 そう言って、ラックは部屋から出て行った。


「これで、今回の事件は終わりましたね」


「そうだな、別荘はちょっと焦げたけど……皆無事ならそれでいい、別荘は元に戻るからいいけど、人の命は元に戻らないからな」


「その通りです」


 会話後、バカップルはキスをしながら熱くイチャイチャし始めた。

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