スターの休日
ストーカーを撃退した後、バカップルはマリネットと共に別荘のリビングにいた。リビングに向かう前、シュウは別荘の防御能力を調べていた。見た目は普通の別荘だが、壁は防弾仕様になっており、火事になったとしても煙が逃がせるように工夫をしてある。それに、防災グッズも完備されていた。これなら安心だなと思い、クリムとマリネットの元へ戻った。
リビングでくつろぐマリネットは、少し気を張っているバカップルに対しこう言った。
「疲れたら休んでもいいわよ」
「いえ、大丈夫です」
「先ほどのストーカーがまた来る可能性があります」
クリムはさっきのストーカーがまた来ることを予想していた。逃してしまったが、今度来たら必ず仕留めようとクリムは考えていた。
クリムの予想通り、先ほどのストーカーはマリネットの別荘から少し離れた所で待機していた。ストーカーは心の中でこう思っている。ずっと別荘の中にはいないはず、どこかのタイミングで外に出るだろうと。そこを狙ってマリネットを襲う事を考えていた。
「ああ……僕のナイフで美しい君が傷つくと思うと……興奮してくるよ……」
ストーカーは興奮しながら呟き、マリネットが出てくるのを待っていた。
数時間後、雑誌を読んでいたマリネットは、時計を見て立ち上がった。
「どこへ行くんですか?」
「ジョギングに行こうかなと思ってるけど」
「あのストーカーがいるかもしれません。出来れば外出を控えてください」
「そうよね……ま、外の空気を吸いながら走ろうと思ってたけど、トレーニングルームを使うしかないわね」
そう言って、バカップルと共にマリネットは別荘内のトレーニングルームへ向かった。部屋の中にはジョギングマシン、自転車型のトレーニング器具、ベンチや体操用のマットなどいろんな機材が置かれていた。
「俺達のギルドにもトレーニングルームはありますけど……それ以上だ」
「健康と美容の為にやってるのよ」
そう答えながら、マリネットはジョギングマシンに乗り、走り始めた。クリムはその横で走っているマリネットをずっと見ていた。見始めてから一時間は経過したが、マリネットからは疲れた表情や体のふらつきは見られなかった。
「すごい……ずっと走ってるのに……」
「この位余裕よ。いつも二時間はこのペースで走ってるわ」
「ギルドの戦士並みに体力がありますね」
「女優だから、いろんなアクションにも通用しないとね」
その後、二時間を走り切ったマリネットは少しの休憩をはさみ、体操を始めた。バカップルもマリネットに付き合って体操を始めたが、かなり難しい柔軟体操の時点でクリムは脱落した。
「か……体がいたい……」
「大丈夫か……クリム……」
シュウは右腕で左腕を抑えながら、クリムにこう言った。右腕に大きな怪我の跡があるシュウは、難しい体操を左腕に負担をかけて行っていた。その為か、左腕を少し痛めてしまった。
「つつつ……変に動かしてないところを動かしたからか……筋肉痛か?」
「だ……大丈夫? 無理してやらなくてもよかったのに」
「余裕だと思ったんですが……結構きついです」
苦しそうにクリムはこう言った。
それからダウンしたバカップルはマリネットのトレーニングを見ていたが、マリネットはばてる様子もなくてきぱきとトレーニングをしていた。
「あの人、ギルドの戦士になれますよ」
「俺もそう思う」
ギルドの戦士並みのトレーニングをこなすマリネットを見て、バカップルはこう話していた。
そんな中、いくら待っても出てこないマリネットに少しイラッとしたストーカーは、どうにかして別荘に入る事を考えていた。
「どうしよう、なかなか出てこないな……」
頭を動かしていると、周囲に近くの郵便配達のおじさんが通りかかった。それを見て、ストーカーはある事を思いついた。
数分後、マリネットの別荘にチャイムが鳴り響いた。
「俺が出てくる」
不審者の可能性があると睨んだシュウは、銃をいつでも出せるようにしまって玄関に近付いた。
「誰ですか?」
「郵便です~」
シュウはカメラ映像を見て、郵便配達の姿を確認した後、マリネットにこう聞いた。
「何か頼みましたか?」
「いえ、私は通販はしないわよ」
怪しいと思ったシュウは、銃を持って玄関を開いた。
「誰だ?」
銃が持つ銃を見て、郵便配達に化けたストーカーは驚いた。驚いて言葉を失ったストーカーに対し、シュウは別の言葉を言い放った。
「この家の主人は通販はしないって言ってたぞ」
「あ……あの……すいません‼ 家を間違えましたァァァァァァ‼」
ストーカーは殺されると思い、猛スピードで逃げて行った。シュウから逃げたストーカーは息を切らせながら車内に戻り、呼吸を整えていた。
「やばい……通販をしないなんて考えてもいなかった……僕のエンジェルは通販をしないのか……予想外」
車内に搭載された時計を見ると、午後六時を示していた。一旦ビジネスホテルに行こうと思った彼は、そのままホテルを探しにこの場から去った。
一方、別荘の中にいるバカップルは今後の対策を練っていた。
「先ほどの郵便配達の人、多分ストーカーだ」
「ええ。何かをするためにここに来ましたね」
「一度は追い払ったけど、次はどんな手で来るか分からないな」
「別荘の場所は把握してると思います。次の対策を練りましょう」
と、真面目な話をしているのだが、バカップルはソファーの上で抱き合いキスをしながらこんな話をしていたのだ。
「愛し合いながらよくこんな話ができるわね。ある意味どんな役者よりもすごいわ、あなた達」
愛し合いバカップルを見て、マリネットはこう言った。




