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不審者をぶっ倒せ

 シャーンの町役場にて。シュウ達は町長室で話を聞いていた。


「すみません、遠くからはるばる仕事の為に……」


「気にしないでください。これも私達ギルドのお仕事なので」


「車の移動楽しかったです~」


 頭を下げる町長に対し、クリムとシュガーはこう返事した。そんな中、シュウが口を開いて話を始めた。


「で、今回の仕事は最近多発しているカップル襲撃事件を解決してほしいとのことですね」


「はい」


 返事の後、町長はテーブルの上に資料を広げた。


「この事件に関しての資料ですね」


 ラックは資料の上に書いてあるタイトルを見て、事件の資料だと察した。資料には事件が起きた日はもちろんのこと、被害者の氏名や年齢、簡単な個人情報の事まで書かれていた。


「今、被害者の皆さんはどうしてますか?」


「最初の方で被害にあった方は退院しましたが、あの事件のせいで外出を拒むようになってるようです」


「トラウマになってるんですね。外に出ると、また同じような被害にあうと思ってるんです」


 クリムは話を聞き、こう呟いた。町長は再び頭を下げ、シュウ達にこう言った。


「お願いします。これ以上被害者を増やさないため、この事件の早期解決をお願いします‼」


「分かりました、私達に任せてください‼」


 クリムは胸を叩き、町長にこう返事をした。シュウ達も「任せてください」と次々に告げた。この言葉を聞いた町長の目には、涙が浮かんでいた。




 町の中央付近。そこに現場となった公園がある。今は昼間だから親子やジョギングなどをしている人がいる。


「ここが現場か……」


「昼間だと人がいるね」


 シュウとラックは周辺を見回し、公園を調べた。公園には街灯がいくつかあるが、昼間の状況だと街灯の明かりが点くかどうか分からない。


「先輩、ラックさん。とりあえずホテルへ戻って作戦を練りますか?」


 と、クリムが言ったので、シュウは考えて返事をした。


「そうだな。現場は一通り見たし、一旦戻って話をするか」


 その後、シュウ達は滞在しているホテルに戻り、話を始めた。


「公園を一通り見たんですが、いくつか身を隠せるような場所がありました」


「俺の考えだけど、そこで変装していちゃついているカップル達を襲ってるんだろうな」


 シュウとラックの話を聞き、クリムは何かを考えているのか、唸りながらこう言った。


「その可能性もありますね。イチャイチャしているカップル達は周りの事を気にするよりも、いちゃつくことを優先していると思います。その隙を狙って犯人は襲ってるんでしょう」


「うわー、愛し合ってる中に襲うって酷い事をするね」


 シュガーはお茶を飲みながらこう言った。シュウは町長から貰った資料のコピーを見て、もう一度事件の事を調べ始めた。


 犯人は単独犯。

 時間帯は主に深夜。

 被害者は怪我を負っているが、死人は出ていない。

 犯人が使用する凶器は鈍器のような物。


 シュウから見て、資料から分かったのはこれだけだった。


「先輩、もう一度資料を見せてください」


「ああ」


 シュウはクリムに資料を渡した後、ラックとシュガーに話しかけた。


「今日の夜中に公園に行ってみるか?」


「そうだね。もし遭遇したら、皆で戦いましょう」


「まぁ、シュウ君もラック君もいるし、簡単に終わるよ~」


 そんな会話をしていると、クリムがシュウにこう言った。


「先輩、犯人を追い詰めるため、私達が囮になりましょう‼」


 この言葉を聞いたラックとシュガーは、驚いて声を上げた。


「囮って、もしかして……」


「この事件の被害者は主にカップルです。私と先輩が公園でイチャイチャし、犯人をおびき寄せるんです‼」


「大丈夫なの?」


「ああ。策はもうある」


「すぐに事件を終わらせますよ」


 と、バカップルはこう言葉を返した。




 深夜。公園の街灯が中央にあるベンチを照らしている。そこにバカップルが座っている。


「では、作戦を開始します」


「二人とも気を付けてね」


 物陰に隠れているラックとシュガーが、バカップルにこう言った。


「じゃあ始めます」


「ああ」


 クリムの返事を聞き、シュウはクリムを抱きながらベンチの上で仰向けになって倒れた。その上にクリムを抱き寄せ、キスを始めた。


「え……あの二人そこまで行ってるんだ」


「わー、クリムちゃんって意外と大胆」


 バカップルの濃厚なキスシーンを見たラックとシュガーは、思わずこう言った。その後も、ばかの濃厚な激しいキスシーンは続いていた。


「まだ来ませんね」


「うん。だけどさ、あの二人仕事をしてるって意識はあるのかな?」


 ラックがこう言った直後、近くから足音が聞こえた。足音がした方向を見ると、そこには黒い服装の人物が立っていた。しかも、手にはハンマーのような物が握れれていた。


「大変だ、二人はどうなってるんだ?」


 ラックがシュガーにこう聞くと、シュガーは慌てながら答えた。


「あの二人、さらに盛り上がっています‼」


 バカップルを見ると、シュウはクリムの服の中に手を突っ込んでいて、クリムは顔を赤く染めながらシュウにキスをしていた。


「何をしているんだあの二人は!? 不審者が出たってのに‼」


 ラックは不審者の事をバカップルに告げようとしたのだが、それより先に不審者の方が動いていた。


「うおおおおおおおおおおおおおおお‼ こんな所でいちゃつきやがって‼ 許せねェェェェェェェェェ‼」


 不審者はハンマーを振り上げ、バカップルに接近していった。ラックは間に合わないと思い、目をつぶって悲惨な光景を見ないようにした。


「許せねぇ?」


「お前が言うセリフかよ、不審者さん」


 シュウはこう言うと、左手に銃を持って不審者に銃を突きつけた。


「なっ……何で銃が……」


 何が起きたんだ?ラックはそう思いながら考えた。そして、一つの答えを導き出した。この時の為に、シュウはクリムの服の中に銃を入れていたと。


「ははっ。そこまで計算してたのか」


「見たいですね」


 ラックとシュガーがこう言うと、後ろから何者かの気配を感じた。


「仲間がいたんだ」


 ラックは後ろを振り返り、不審者の群れに対しこう言った。


「いちゃ悪いか?」


「俺達はあいつらのようなバカップルが憎くて憎くてたまらないんだよ」


「だったらさ、君達も彼女ができるように努力すればいいじゃないか」


「うるせぇな‼ お前らは顔がいいからすぐに女が出来るじゃないか‼」


「俺達のような日陰者に説教するなァァァァァァァ‼」


 不審者の群れは、武器を持ってラックに襲い掛かった。


「ラック君‼」


「シュガーさん、君は危ないからここで身を守っていてください。こいつらは僕一人で片付けます」


 そう言うと、ラックは腰の剣と、背中に背負ってある盾を装備して戦闘態勢をとった。


 それと同じく、シュウも銃のトリガーを握って不審者にこう言った。


「さぁどうする?」


「答えか? こうする!」


 不審者はシュウの銃をハンマーで弾き飛ばそうとしたのだが、その前にクリムの火炎魔法が襲った。


「先輩には手を出させませんよ‼」


 こう言うクリムは、すでに魔力を開放していた。

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