別荘地にやって来た大スター
ハリアの村近くの山、そこは別荘地で有名な場所であり、著名な有名人達の別荘がいくつかある。それを知った強盗達が、誰もいない時に忍び込んで盗みを働くという事件もたまに発生する。シュウとクリムのバカップルも、この手の事件が発生したら捜査して犯人を成敗している。
この日、バカップルは別荘地の見回りを行っていた。当番制で別荘地の見回りをする事になっている。
「何回かの見回りですが……相変わらずやたらと派手な別荘が多いですね」
「ああ。メディアから目をそらして休みたいために建てたんだろうが……これじゃあ逆にメディアに来てくださいって言うもんだよ」
「派手好きな部分は消えないようですね」
「だなー」
手をつないで呑気に会話をしていると、後ろからジャックの声が聞こえた。
「いちゃつきながら仕事をするな‼ 真面目にやれ真面目に‼」
仕事中でもイチャイチャしているバカップルを見て、ジャックは呆れながらため息を吐いた。
「ったく、いくら凄腕って言われても、あれじゃあなぁ……」
そう呟いていると、近くの家に高級な車が一台止まった。それを見て、ジャックはまた誰かが来たのかと心の中で思った。
「誰か来たのか」
「そのようですね、立派な車だから、それなりに有名な人ですね」
バカップルの方も、先ほどの高級車に気付いたようだ。しばらく様子を見てみると、車の後部座席からモデルのような女性が現れた。その女性を見て、ジャックは驚いた。
「嘘だろ……女優のマリネット・ポアローズじゃねーか……」
マリネット・ポアローズ。彼女はこの世界ではかなり有名な女優である。見た目も演技も全て一流と言われるレベルの素質、そしてあまりやましい噂が無い。その為か、男女ともにトップレベルの人気を誇っている。
「はへー、あの人ってここに別荘を持ってたんですね」
「噂だと思ってたけど、本当だったのか」
バカップルが話していると、彼らに気付いたのかマリネットが笑顔でほほ笑んだ。それを見て、二人はマリネットから感じるスターのオーラに押し負けてその場に座った。
「すげー綺麗だな……」
「成長してもかないませんよ……私」
それからしばらくは、バカップルは大スターの気迫に負けてその場に座り込んでいた。ジャックは驚きのあまり、その場に立ち尽くしていた。
ギルドから戻り、シュウ達は見回りの結果を報告していた。そんな中、ラックがシュウを見て近付いてきた。
「噂だけど、あのマリネットが来てるらしいんだ」
「あの別荘地で遭遇したよ」
シュウの言葉を聞き、男性達がシュウを取り囲んだ。
「マジかよ、どんな人だったか?」
「話した? どんな感じだった?」
「やっぱり生で見ると綺麗だったか?」
「いいなー、今日の当番変わればよかった」
「胸はデカかった?」
シュウが男性に取り囲まれている光景を見て、クリムはため息を吐いた。
「下心が丸見えです。そんなんだからもてないんですよ……」
「ほっとけばいいよ、あんな人達は~」
と、シュガーが何かを持ってやってきた。クリムはシュガーが持つ何かに興味を持ち、何なのか聞いてみた。
「それなんですか?」
「今作った薬草。傷の手当て用に作ったんだけど、試してないの」
「で、何かしらの傷で試したいってところですか?」
「ぴんぽーん」
その時、クリムに案が浮かんだ。うまく行けば、取り囲まれているシュウを助ける事が出来るかもしれないと思った。
「ちょーっと待っててくださいねー」
その後、クリムは魔力を開放してシュウを取り囲んでいる男達を吹き飛ばした。
「下種な質問をされるから、先輩が困ってるじゃありませんか。シュガーさん、この人達の治療をお願いしまーす」
「はーい。かしこまりましたー」
下種な笑みを浮かべているクリムに、下劣な笑みを浮かべてシュガーは返事をした。シュガーの笑みを見た男達は逃げようとしたのだが、すでにシュガーが走って追いかけて来ていた。
「さ、部屋に戻りましょ。先輩。よかったら、ラックさんもどうぞ。話の途中でしたから」
「う……うん……」
ラックは悲鳴を上げる男達を見ながら、バカップルの部屋に向かって行った。
部屋へ行き、シュウ達はテレビでマリネットが主演している映画を見ていた。マリネットの話をしている時にテレビを付けると、丁度やっていたからだ。
「やっぱりこの人演技上手だよなー」
「はい。役者になるために生まれてきたと過言ではないですね」
「僕達の子供の頃からずっとやって来てるしね」
映画を見ながら、シュウ達はこう声を漏らしていた。そんな中、ギルドの職員の大きな声が轟いた。何事かと思い、廊下に出てみると、すでに何人かの戦士や役員が驚きの声を上げたり感激の悲鳴を上げていた。
「何だこの騒ぎ?」
「有名人でも来たんでしょうか」
シュウ達がカウンターに来ると、そこにはすでに人だかりができていた。後ろの方でジャンプしているシュガーを見つけ、シュウはシュガーに近付いた。
「誰か来てるのか?」
「うん。マリネットが来てるって」
この言葉を聞き、シュウ達は驚いた。大スターがこんなド田舎のギルドに依頼をしてくるなんて、滅多に……というか無いと思っていたからだ。




