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奪われたプリン

 リナサが家出してから、一週間が経過した。その間入院していたタルトとスネックは無事退院していたが、ハリアの村にいるシュウとクリムの元から帰らず、全く連絡をよこして来ないリナサを心配していた。


 シェラールのギルドに戻る条件であるプリン七個の購入だが、ことあるたびに不運が発生し、結局買う事が出来なかったのだ。


「くそったれ……何でまたプリンが売り切れなんだよ……」


 行列に並んでいたが、結局プリンを買う事が出来ずに戻ってきたスネックが、ぼやきながらその場に倒れた。心配したナギが近付いて様子を見て、ボーノにこう言った。


「寝てるわ」


「疲れたんだろ。俺もあの行列を経験して酷い目に合ったからな……」


 疲れ果てたエイトガーディアンの面々を見て、タルトはため息を吐いた。


「一度、シュウに連絡してみる」


 そう言って、携帯を手に取って連絡を始めた。何回かの呼び出し音の後、電話がつながった。


『どうしたの父さん?』


「シュウ、つながってよかった。今、話をしても大丈夫か?」


『うん。大丈夫だよ』


「実は、リナサの事なんだが……」


『ああ、俺の方も帰らなくていいのかって聞くけど、プリンを買って持ってこないと嫌だって言うんだ』


『ちょっと変わって』


 ここでリナサの声が聞こえた。タルトは少し慌てながら、リナサにこう言った。


「リナサか? あの時は本当にすまん。だから、許してくれ。プリンはまだ買えてないけど……皆で協力してプリンは買うからな」


『……分かった。プリンを買ったらハリアの村に来て』


「分かった。絶対に持ってくるからな」


 話を聞いていたハヤテが、呆れながらタルトにこう言った。


「タルトさん、絶対に持ってくるからって……どうやって買うんだよ?」


「今から行列に並んでくる。仕事が来たら頼むぞ」


 と言って、タルトは部屋から出て行ってしまった。去っていくタルトを見て、ハヤテ達は大丈夫かなと会話をしていた。




 プリン屋の前。すでに店の前には行列ができていた。それでもタルトは並んだ、リナサの為に。自分の犯した罪を償うために。


 しばらく座っていると、急に激しいドリフトの音が聞こえた。


「こんな昼間から暴走族か?」


 タルトはこう呟いたが、音の主は暴走族ではなかった。ドリフトをしながら現れたのは黒い車。その車はスピードを落とさずプリン屋の入口に突っ込んだ。辺り一面に飛び散る壁やガラスの破片。そして響き渡る客の悲鳴。タルトは逃げまとう客を避けながら、車の所へ向かっていた。


 あれは事故なんかじゃない。あいつらは強盗だ。タルトはそう考え、いつでも戦えるように準備をして店の中に入った。


「おい、誰か入って来てるぞ‼」


「げ‼ あいつはエイトガーディアンのタルト‼」


「すぐにプリンを詰め込んで逃げるぞ‼」


 強盗犯は店の奥から大量のプリンを運び出そうとした。だが、車の前にタルトが立った。


「今すぐプリンを戻して来い。痛い目にあいたかったら、かかって来るんだな」


 戸惑う強盗犯に対し、タルトはこう言った。だが、強盗犯はタルトにタックルをして転倒させ、その隙に車に乗り込んだ。


「ぐ……」


「大丈夫ですか!?」


 心配した店員に助けられ、タルトは立ち上がった。


「すまない。君達の方は大丈夫か? 奴らに襲われなかったか?」


「ええ。厨房の人達は皆無事です。しかし……明日発売するプリンが全て奪われました」


「盗みなれた連中だな……よし。私達に任せてくれ。すぐにエイトガーディアンに連絡する」


 その後、タルトは急いでスネック達に連絡をした。




 同時刻。ハリアの村のギルド内にあるキッチンでバカップルはいちゃつきながらテレビを見ていた。


「今日も平和だなー」


「そうですねー。はい先輩、あーん」


「あーん」


 昼間からいちゃつくバカップルを見て、ギルドのむっさい男達はこいつら本当に木端微塵に爆発してくんねーかな?マジでイラつくんだよ。と思っていた。で、ギルドの女達はシュウといちゃつくクリムを羨ましそうに見ていた。


 そんな空気を気にせず、リナサはシュウの横でミルクティーを飲みながら一息入れていた。


「テレビからもろくなニュースが流れてないですし」


「平和っていいよなー」


 二人のいちゃつく様を見て、リナサは面白そうに微笑んだ。そんな中、テレビからニュース速報が流れた。


「速報? 何だ何だ?」


「どーせろくでもない政治家の悪事がばれたんでしょ。悪い事はすぐにばれますから」


「あいつら、いい歳こいてやっていい事とダメなことが理解できてないもんな。政治家なんて、ロクな連中がいないよ」


「お兄ちゃん、クリムお姉ちゃん、政治がらみのニュースじゃないよ」


 テロップを見ていたリナサは、驚きながらこう言った。


「ん? 有名プリン店に強盗。販売予定だった全てのプリンが盗まれる……これって、リナサが好きなプリンの店か?」


「うん」


「ちょっと待ってください。テロップに続きがありますよ」


 クリムは次に出た文章を見て二人にこう言った。その文章はこう書かれていた。


 現場にいたエイトガーディアンのタルト氏が事件を担当することを発表。今現在、調査中とのこと。


「タルトさん……」


 リナサはこのテロップを見て、目を開いて驚いていた。

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