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逃走者来る

 シュウ達がシャワーを浴びながら話をしていたその日の夜中、ハリアの村から少し離れた道路を一台の車が通っていた。車内にいたのは一人。アクセルペダルを深く踏んでいるのか、車のスピードはかなり出ていた。助手席にあるのは、少し大きめの黒いバック。そして二丁の拳銃。


「へっ……へへへ……ここまでくれば安心だな……」


 運転席に座る男が、バックミラーを見てこう言った。


 この男、近くの町の銀行で強盗をしてきたのだ。金を盗んだのはいいが、途中で警察とギルドに見つかってしまい、しばらく車で追いかけっこをしていたのだ。結果、男は逃げきることに成功した。


 しかし、周囲にはビルどころか何もない。男はそう悟ると、どこか身を隠せて休める場所がないかと探し始めた。




 翌朝。シュウ達は響き渡る足音を聞いて目を覚ました。


「何なんですかね~……」


 シュウに抱き着いて寝ていたクリムが、欠伸をしながらこう言った。シュウとクリムの間に挟まれ幸せそうに寝ていたリナサも起き上がり、小さく欠伸をした。


「何か大事か?」


 ベッドの下にあるスリッパを履き、シュウは廊下を開けて誰かいないか調べた。すると、先に起きていたジャックを見つけた。


「先輩、何かあったんですか?」


「シュウか。実は銀行強盗がこの近辺にいるらしいんだ」


「へー、夜中に物騒な事件があったんですね」


 シュウがこう言うと、携帯を見ていたクリムがシュウに近付いた。


「先輩、シラヌ町で銀行強盗があったようです」


「ああ、それだ。そいつが隠れているんだ。拳銃も持ってるようだと」


「俺達もフォローに回りますか?」


「そうしてくれるとありがたい。準備が出来たら各自捜索に当たってくれ」


 その後、シュウ達は朝の支度を終え、ギルドのカウンターへ向かった。そこにはミゼリーが待機していた。


「シュウ、クリム。それにリナサちゃん。あなた達も行くの?」


「はい。どこにいるか連絡が来ましたか?」


「少し前に定時連絡が来たところ。だけど、何も見つかってないわ」


「そうですか……」


「先輩、私達も行きましょう‼」


「そうだな。ミゼリー先輩、俺達も捜索に行きます」


「ええ、分かったわ」


 会話後、シュウ達は連絡用のトランシーバーを受け取り、外へ出て行った。




 ハリアの村のギルドから少し離れた道路交通情報センターにシュウ達はいた。もし、道路上にあるカメラが犯人の姿を捕らえているならば、そこに映っていると考えたからだ。


「えーっと、時間は昨日の夜から今日の夜明けまででいいんだよね?」


「はい」


 クリムは警備員から夜中に撮られた映像が入ったSDカードを受け取った。映像を見る中、ジャックがセンターにやって来た。


「お、お前らもここに来たのか」


「先輩も映像があると睨んで来たんですね」


「ああ。捜索は他の連中に任せてな」


「最初からみんなはここに来なかったの?」


 と、リナサはジャックにこう聞いた。ジャックは少し困りながら答えを言った。


「最初にここに来ようって俺は行ったんだが、全員がここに来て映像を見てると犯人を逃す可能性があるからな……」


「そうなんだ……」


「あ。そうだクリム、車の情報を伝えていなかったな。車の色は黒、ワゴン系でナンバーは184-193だ」


「黒でワゴン……夜でも動きやすい車ですね……」


 それから、しばらくクリム達は映像をガン見していた。すると、ジャックが言っていた車がこの辺を通った映像が流れた。


「この先はハリアの村の方面だ」


「やっぱりそっちの方に逃げたんですね」


 シュウとクリムがこう話している中、ジャックの携帯に連絡が入った。


「どうした?」


『ミゼリーよ。定時連絡の時刻を過ぎているわ』


「悪い悪い、ちょっと今ハリアの村から離れた道路交通情報センターにいる。映像を確認してどこに逃げたか調べてた」


『で、何か分かった?』


「やっぱりハリアの村の方に逃げている。連中に伝えてくれ、そっちにいる可能性が高いって」


『分かったわ。気を付けてね』


「おう」


 連絡を終え、シュウ達は急いでハリアの村の方へ向かって行った。




 ハリアの村から離れた山の中にて。あの男がバックと銃を持って歩いて逃げていた。この強盗犯も馬鹿な男ではない。こんな山奥だが、村から離れた所に別荘地がある。そこにある車を拝借して逃げようと考えているのだ。


「確か……この山の中にあるって話だが……」


 しばらく山の中を歩いていると、遠くの方で草をかき分ける音が聞こえた。もう居場所がばれたか!?そう思い、男は銃を構えた。だが、草から現れたのは小さなウサギ型のモンスター、テーピだった。


「……何だよ、モンスターか。驚かせやがって‼」


 男は威嚇のつもりでテーピの足元に銃を撃ちこんだ。銃声を聞き、テーピは驚いて逃げて行った。


「早く行かないと、下手したらモンスターの餌になっちまう……」


 そう呟くと、後ろから巨大な足音が聞こえた。恐る恐る振り向くと、そこには巨大なテーピが立っていた。その上に、先ほどのテーピが乗っている。男は察した。さっきのテーピが仕返しの為に親を呼んだのだと。


「嘘だろ……」


 男は恐怖で腰を抜かしてしまった。そんな男に対し、親テーピは大きな叫び声を上げた。

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