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リナサの家出

 ある夜の日だった。リナサはシャワーを浴び終え、エイトガーディアン用キッチンの冷蔵庫を開けた。その中には、リナサの大好物である超有名なブランドのプリンが買い置きされているからだ。リナサはシャワーを浴び終えた後、それを食べるのを楽しみにしていた。


 少しうきうきしながら冷蔵庫を開けたのだが、プリンを置いた場所にプリンはなかった。場所を間違えたかと思い、周辺を探したが見つからなかった。そんな中、タルトとスネックの会話が聞こえた。


「おいしかったな、あのプリン」


「誰のか分からねーけど、うまかったぜ」


「しかし、あれ誰のプリンなんだ?」


「知らねーよ。あの冷蔵庫はエイトガーディアンの物、だからあのプリンは俺達の物だ」


「その理屈はおかしいと思うが……」


 この直後、シェラールのギルドが大爆発を起こし、大きな騒動となった。




 その日の朝。バカップルは抱き着いて安らかに眠っていた。シュウの体温を感じて眠るクリムだったが、外からの音を聞いて目を覚ましてしまった。


「何ですか、も~?」


「鳥がいるのか?」


 シュウも音を聞き、目を覚ました。二人が窓を見て、音の主を確かめた。そして驚いた。窓にはリナサがへばりついていたからだ。


「リナサちゃん!? 何でこんな所に!?」


「とにかく入って入って、騒動になるから」


 と、二人は慌ててリナサを中に入れた。


「お兄ちゃん、クリムお姉ちゃん……」


 部屋に入ったリナサは、二人の顔を見た瞬間にシュウに抱き着いた。


「おいおい、一体何があったんだよ?」


「話なら聞きますよ」


 クリムがリナサに話しかけたその時、端末を持ったジャックが慌てて部屋に入って来た。


「おい、大変だシュウ‼ シェラールのギルドの一部が爆発したって大ニュースだぞ……って……君は……」


 ジャックはシュウに抱き着いて泣いているリナサを見て、少し動揺していた。


 その後、落ち着きを取り戻したリナサはシュウ達にこう話をした。


「あの爆発……私が起こしたの」


 この言葉を聞き、シュウ達は大きな声を上げて驚いていた。


「何であんなことをしたんだ?」


 シュウが近付いてこう聞くと、リナサはあの時の事を思い出しながら涙を流した。それでも、リナサは答えを言った。


「タルトさんとスネックが……私のプリンを食べたから……」


「いや、プリン食われただけで爆発を起こすか!?」


 理由を聞いたジャックはずっこけながらツッコミをしたが、リナサは大泣きをして言葉を返した。


「だって、だって、あれかなり有名なブランドのプリンだったんだもん、あれを買うために朝一の行列に並んだんだもん。プリンを食べるために仕事を休んだんだもん」


「プリン一つだけの為にそこまでするか?」


 ジャックがこう言った直後、ジャックの体は吹き飛んだ。遠くへ吹き飛んだジャックを無視し、シュガーがリナサの頭をなでながら話をした。


「気持ちは分かるよ。でも、それだけで怒っちゃダメだよ」


「うう……」


「許せないのは分かる。でも、人の過ちを許すという選択も大切なんだよ」


「お前の場合……絶対に許さないと思うが……だからギルド内で絶対に怒らせてはいけない女って言われてるんだよ」


 傷ついて戻って来たジャックがシュガーに向かってこう言った。その後、ジャックの悲鳴が轟いた。




 リナサの話を聞いた後、シュウは携帯でタルトと連絡をしていた。


「父さん、リナサがうちのギルドに来たよ」


『分かった……私の方は……何とか大丈夫だ……』


『大丈夫じゃねーよ、あれだけの爆発を喰らったんだ、無事なわけないだろ』


 タルトの横にスネックがいるようだ。そう思ったシュウはタルトにこう聞いた。


「どうやら、リナサはどうしても二人を許せないらしいよ」


『そうか……シュウ、近くにリナサはいるか?』


「うん」


『変わってくれないか?』


「ちょっと待って、聞いてみる」


 シュウはそう返事をすると、クリムと話をしているリナサに近付いた。


「今父さんと話してるけど、何か話すか?」


「……貸してください」


 と言って、リナサはシュウから携帯を借りた。それを見て、クリムはシュウにこう言った。


「許すつもりなんですね」


「ああ。すぐに仲直りすればいいな」


 そう話した二人だったが、リナサが言い放った言葉は二人の予想を裏切った。


「あのプリンを七個買ってくれば許してあげる」


 結局物で解決するんかい。そう思いながら、二人は冷や汗をかいた。


『な……七個買えばいいんだな?』


「うん。それまで、私シェラールに戻らないから。シュウお兄ちゃんの所にいるから」


『いやその、待ってくれ。今すぐにでも』


「じゃあね」


 と言って、リナサは携帯の通話を切ってしまった。その後、リナサはシュウに近付き、横に座ってこう言った。


「よろしくね、シュウお兄ちゃん」


 この言葉を聞き、クリムは少しイラッとしていた。




 シェラールのギルド直属の病院にて。ベッドの上で横になっているタルトは携帯を置き、ため息を吐いてスネックにこう伝えた。


「あのプリンを七個買ってくれば許してくれるそうだ」


「何だよ、プリンを七個買えば許してくれるのか。案外楽に許してくれるな」


「そうだな……だが、リナサの大切なプリンを食べたのは後でちゃんと謝らないとな」


「……ああ。今回はチーッと俺にも非があったぜ」


「最初に食べようぜって言ったのはお前じゃないか」


「その案に乗ったあんたも悪い‼」


 その後、二人は大人げなく口喧嘩を始めた。お見舞いに来ていたナギは近くのたらいを持ち、大きく振り上げた。


「大人しくしなさい怪我人共‼」


 叫び声を上げながら、ナギはたらいを二人の頭にかなり強く叩きつけた。

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