戦い好きと踊り好き
「つっ……ぐぅぅ……クソッたれ……」
スネックが放った銃弾は、ボローゼの右肩を貫いていた。ボローゼは治癒魔法を使い、打ち抜かれた右肩を治療していた。その後、失った魔力を補強するため、カロリーがあるチョコバーを二本食べた。
魔力の補強が終わり、ボローゼはもう一度地面の揺れを起こそうと考えた。だが、目の前から魔力を感じ、移動を始めた。
「逃げるんじゃねーぞ‼」
すでにスネックの声が近くから聞こえていた。ボローゼは自分の武器である槍を構え、スネックの奇襲に備えた。それからすぐ、スネックが上から襲ってきた。
「オラァァァァァ‼」
スネックの銃剣がボローゼに襲い掛かった。槍で攻撃を防御したのだが、スネックは蹴りでボローゼの腹に攻撃をし、体勢を崩させた。
「ぐあっ‼」
ボローゼは後ろに倒れ、その隙を狙ってスネックは上に乗りかかった。そして、銃剣を突き付けこう言った。
「もう終わりか?」
「まだ……まだだ‼」
雄たけびを上げながら、ボローゼは上に乗っているスネックを蹴り飛ばした。何とか立ち上がり、魔力を使った。
「地面が……」
スネックの足元が大きくひび割れ、崩れ始めた。それを察したスネックは移動を始めたが、ひび割れはスネックを追い始めた。
「チッ、ふざけた真似をするじゃねーか」
「黙れ、この青二才が‼」
ボローゼはこう叫びながら、別の技を使った。スネックの目の前に、巨大な壁が現れ、鋭い棘が生えた。
「へぇ」
この技を見て、感心したスネックは銃剣から弾丸を撃ち、棘を破壊しようとした。
「無駄だ‼ 貴様の弾丸が俺の技を打ち砕くことは出来ん‼」
ボローゼの言うとおり、スネックが撃った銃弾は棘を破壊することは出来なかった。
「チッ」
舌打ちをし、スネックはこの場から離れようとした。しかし、足元から土がツタのように動き回り、スネックの足首に絡みついた。
「さぁ、串刺しになるがいい‼」
そう言って棘が付いた壁を動かそうとしたのだが、ジャックが放った電撃の刃がボローゼに命中した。
「ガアッ!?」
「敵は一人じゃねーぜ、おっさん」
ジャックが目の前に接近してきた。それを察したボローゼは槍でジャックに攻撃をしようとしたが、突如視界がぼやけた。ボローゼは目をこすって視界を戻そうとしたのだが、視界は元に戻らなかった。
「何だ……これは……」
その直後、激しい雷がボローゼを襲った。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
激しく感電し、ボローゼは悲鳴を上げてその場に倒れた。だが、ジャックがボローゼを無理やり立ち上がらせてこう言った。
「頼むぜ」
「任せな」
剣を持ったボーノが、猛スピードでボローゼに接近した。そして、踊りのような動きでボローゼに攻撃を仕掛けた。
「ぐがっ‼ ぐっ……がっ……」
何とかボーノの攻撃を避けようとするボローゼだったが、未だに視界がぼやけており、その上踊りのような動きで予想できないボーノの攻撃から逃れることは出来なかった。
「フィニッシュ‼」
ボーノは少し飛び上がり、ドロップキックでボローゼを蹴り飛ばした。そして、スネックが倒れたボローゼに接近し、銃剣を突き付けた。
「変な動きをしたら……どうなるか分かるよな?」
「あ……あい……」
ボローゼはそう返事をし、気を失った。
戦いが終わり、縛ったボローゼを背負ったジャックがスネックとボーノにこう言った。
「あんたらスゲーな。エイトガーディアンって滅茶苦茶強いんだな」
「これでも手ぇ抜いたほうだぜ」
「だから苦戦してたのか、お前」
スネックを見て、ボーノはくすりと笑った。それを見たスネックは激怒したが、スネックを無視してジャックとミゼリーにこう言った。
「二人がいたから、あいつを楽に倒せる事が出来たよ」
「私の魔法が役に立って光栄です」
「そんなー。美人さんにこう言われると照れるね~」
「でれでれすんなよアフロ野郎」
スネックが小さくこう言ったが、誰も聞き耳を持たなかった。
ラックは不安だった。今いるパーティーは全て女性である。しかも、シュガーもキャニーもフィアットもずっと喋っている。
「あの、今はお喋りをする時間はないんですが……」
と、ラックはこう言ったのだが、三人は話を止めなかった。
仕方ない、いざとなったら僕一人で戦おう。
そう思いながら、ラックは盾を使って目の前の草をかき分けながら移動をしていた。そんな中、別の魔力を感じ、ラックは身を隠した。
敵が近くにいる。
そう思いつつ、お喋りをしている三人の元へ近づいた。
「敵がいます。用心してください」
「ええ。もう準備は出来ています」
キャニーは銃を構え、ラックにこう伝えた。これを見て、ラックは心の中でもう準備は出来てたんだと思った。だが、いつの間にかフィアットの姿が見えなくなっていた。
「あれ? フィアットさんはどこに?」
「……あの馬鹿……」
小さくキャニーが呟いた。フィアットは武器を持たずに単身的に突っ込んで行ったのだ。
「おらあああああああああああああああ‼ 敵はどこじゃああああああああ‼」
魔力を解放させつつ、フィアットは周辺を飛ぶようにして動き回っていたのだ。それを見て、ラックとキャニーは大きなため息を吐いた。




