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シュウの決断

 ラック救援から数時間後、シュウ達はタルトたちの為に簡易なパーティーを広げていた。


「おら‼ ドンドンドンドン酒を持ってこい‼」


 テーブルの上に立っているティラは、両手に大ジョッギを持ってこう叫んでいた。


「あはは……ずいぶん個性的な人がいるね」


「あの人が俺の育ての親なんです」


「……あれが……」


 タルトはテーブルの上でビールを飲んでいるティラを見て、かなり動揺した。そして察した、あの人が育ての親だからシュウが立派に育ったんだと。


「あん? 何見てんだオラァ? エイトガーディアンなら私の酒飲めれるだろぉん!?」


「何ですかその理屈は!?」


「いいから飲め‼」


「あの、私は酒が苦手なんです」


「いい歳こいたおっさんが何弱気になってんだ‼」


 ティラがタルトに無理矢理酒を飲まそうとした時、クリムがティラを氷漬けにした。


「助かったよ……」


「いいえ。いつものことなので」


「え? いつも?」


 その時、タルトは氷漬けになったティラを見て驚いた。かすかに氷の中のティラが動いていたのだ。どうやら、無理にでも氷の中から脱出しようとしているのだ。


「なんて人だ……」


「それよりタルトさん、息子に聞きたいことあんだろ?」


 と、肉をかじりながらハヤテがこう言った。この言葉を聞いた他の人達は、皆黙って次にタルトの口が開くのを待った。


「えっと……シュウ、これからお前はどうするんだ? ここに残るのか? それとも、私と一緒にシェラールに行くか?」


 質問を聞き、シュウはすぐに答えた。


「答えはもうあるよ。俺はここに残って働く」


 この言葉を聞いた女性達は喜びまわり、シュウに抱き着いた。


「ちょっとー‼ 先輩は私の彼氏なんですからねー‼」


 クリムが怒りながら、魔法を使い始めた。騒ぎが広がる中、ハヤテはジュースを飲んでこう聞いた。


「なんか言わないんすか?」


「ああ。シュウがそう決めたんだ。その答えを尊重するよ。それに、シュウはもう立派な一人前だ。今日、ここに来た理由はシュウを引き取りに来たんじゃなくて、会いに来たんだから」


「家族なのに、一緒に住めばいいじゃないっすか」


「シュウには私以外にも家族がいる。それに、これからずっと会えないってわけじゃないさ。私の仕事に都合があればまた会いに行くつもりだ」


「じゃあじゃあ、その時はまた私も付いて行っていいですか!?」


 ナギが目を輝かせながらこう言ったが、ハヤテがあきれ顔でこう言った。


「おいおい、あいつに惚れたからってアタックしても無駄なんじゃねーか? あの賢者がいるし」


「そんなの関係ないし‼」


「ほら見、あいつが暴れたら手ぇつけられないぜ」


 キッチンで暴れまくるクリムを見て、ナギの顔は少し青ざめた。そんな中、シュウがタルトの方へやって来た。


「父さん、なんかごめん」


「いや、謝る必要はないさ。シュウに仲間がいるように、私もエイトガーディアンの皆がいるからさみしくはないよ」


「そっか。よかった」


「また、エイトガーディアンの皆に余裕があれば会いに行くよ。そうだ、それとこれ、私の携帯番号とメアドだ。何かあれば連絡してくれ。クリムちゃんも私の連絡手段が必要なら、登録してくれても構わないと言ってくれ」


「うん」


 その時、ティラを封じていた氷が大きな音と共に弾け飛んだ。


「クリムゥゥゥゥゥゥ‼ お前のせいでビールが凍っただろうがァァァァァァァ‼」


 叫び声を上げながら、ティラは再び暴れだした。




 翌朝。ティラがバカ騒ぎしたせいで、シュウやタルト達は皆疲れてしまった。


「あー、酷い目に合った……」


「酒の匂いが残ってる……」


「まだめまいが……」


 洗面所に立っているシュウ、タルト、ハヤテはぼやきながら歯を磨いていた。本来は話を聞いて昨日帰宅する予定だったタルト達は、昨日のバカ騒ぎのせいで疲れてしまい、結局一泊することになったのだ。


「皆が困ってなければいいが……」


 タルトはうがいをし、ポケットの携帯を手に取った。その時、急に着信音が鳴り響いた。


「どうかしたの?」


「スネックからだ」


 シュウは受信ボタンを押し、スネックと話を始めた。


『おいタルトさん、あんた今どこにいるんだ?』


「すまない、まだハリアの村のギルドだ。連絡をする暇がなくて済まない」


『いや、丁度いい。俺達が追っていた裏ギルドの残党がそこらへんに逃げたって情報を掴んだんだ』


 この話を聞き、ハヤテは口の中の泡を吐き出し、急いで口の中をすすった。


「そこらへん……じゃあ、ハリアの村周辺か?」


『奴らが最後に見かけた場所がハリアの村から半径200キロ以内の場所だ。今、俺達がそこへ向かってるから待機していてくれ』


「ああ。分かった。状況が変わったら連絡する」


『了解!』


 スネックはそう言って、携帯の電源を切った。


「シュウ、もしかしたらまたこのギルドの力を借りることになるかもしれん。大丈夫か?」


「大丈夫だと思う。皆まだ戦えると思うから」


 その後、シュウ達は急いでこの事をクリムやラック、シュガーに伝えた。


「へー、エイトガーディアンの人と戦った裏ギルドの残党がこの辺に」


「ああ。すまない、また力を貸してくれないか?」


「もちのろんよー。酔い覚ましにちょうどいい」


 と、ティラはにやりと笑ってこう言った。


「僕も行きます。昨日助けてもらったお礼を返してません」


「私も援護するよ~」


「先輩、一緒に頑張りましょう‼」


 それから、クリム達も次々とこう言った。その言葉を聞き、タルトは深々と頭を下げた。

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