限界が来る
傷を負ったクリムを守るため、シュウはアロウに挑む。ポーカーの改造によって防御力が上がったアロウだったが、確実にダメージを与える方法をシュウは見つけていた。それは、顔の部位に攻撃すること。鼻、目、口、耳だけは改造によって防御力は上がっていない。アロウを倒すためには、ここを攻撃するしかない。
シュウはハンドガンを撃ちつつ、後ろに下がった。弾丸を受けたアロウにダメージはなかったが、シュウに対して怒りを爆発させた。アロウが自分の方を向いて叫び声を上げている光景を見て、シュウはこれでアロウの攻撃目標が自分になったと察した。
「来いよ! デカブツ!」
シュウの声を聞き、アロウは大声を上げて魔力を開放した。その際、周囲の地面がひび割れ、落下防止のフェンスも魔力解放の衝撃で吹き飛んだ。
「グッ……強い魔力だ……」
吹き荒れる強風を浴び、シュウは呟いた。アロウは左手を上に上げ、巨大な雷の玉を作り出した。シュウは急いで雷の玉を撃って破壊しようと動いたが、それより先にアロウは雷の玉を放り投げた。
「この野郎!」
シュウはハンドガンを構え、雷の玉に向けて発砲した。だが、雷の玉に命中した弾丸は大きく膨張し、破裂した。
「無理か、クソッ!」
雷の玉を破壊するのは不可能と察し、シュウは急いでその場から逃げ出した。雷の玉は地面に命中し、大きな音を発して破裂した。シュウは雷の玉の直撃を避けることはできたのだが、地面に命中した時に大きな雷の衝撃波が発し、シュウを襲った。
「グアアアアアアアアア!」
全身に痺れが走り、それと同時に激痛をシュウは感じた。感電はしばらく続いたため、シュウは焦げて黒くなってしまった。
「ぐ……うう……」
大きなダメージを受けたシュウは地面に倒れたが、まだ戦う体力はあった。すぐに立ち上がり、リボルバーを構えてアロウを見た。アロウは巨大な火の剣を発し、シュウに斬りかかっていた。
「斬るつもりか!」
シュウは魔力を開放し、アロウの斬撃に合わせて後ろに飛んだ。攻撃は回避できたのだが、アロウは二撃目の斬撃を放っていた。
「グッ!」
二撃目の斬撃を妨害するため、シュウはリボルバーを構えてアロウの顔に銃口を向け、発砲した。放たれたリボルバーの弾丸は回転しながらアロウの口に飛んで行き、中に入った。そして、うなじを貫いて外に飛び出した。
「が……ガアアッ!」
アロウは口から血を流しながら、苦しそうにうめき声を上げた。この攻撃で大きなダメージを与えた後、シュウは大きく深呼吸して体調を整えた。
今のうちに、確実にあいつを倒す準備をしないと。
そう思いながら、シュウはリボルバーをリロードし、苦しむ様子を見せているアロウを見ていた。すると、アロウは別の方向を向いて走り出した。その方向に走り出した理由を、シュウはすぐに理解した。そこには倒れているクリムがいるからだ。
「クリムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
シュウの声を聞き、クリムは目を覚ました。立ち上がって前を見ると、そこにはアロウの姿があった。
「あの野郎!」
クリムはすぐに魔力を開放し、迫ってくるアロウに向けて闇の刃を放った。だが、アロウに闇の刃は通じなかった。
「やはり……」
アロウが迫ったことを確認し、クリムは急いでシュウの元に近付いた。しかし、アロウは腕を振り回し、横に移動していたクリムに命中した。攻撃を受けたクリムは吹き飛び、端まで追い込まれてしまった。
「ぐ……うう……」
クリムは鼻血を拭きながら立ち上がろうとしたが、アロウは無数の風の刃を発し、クリムに攻撃を仕掛けた。
「グウウッ!」
風の刃はクリムに命中することはなかったが、クリムはバランスを崩して落ちてしまった。
「あっ……」
落下したことを察したクリムはすぐに突起物に手を伸ばしたが、それより先にアロウがクリムに向かって攻撃を仕掛けていた。
「しまった……」
やられる。クリムはそう思った。しかし、突如リボルバーの発砲音が響き、その直後にアロウの悲鳴が聞こえた。それからすぐ、シュウの両腕がクリムを掴んだ。
「クリム、掴まれ! 持ち上げるぞ!」
「先輩!」
シュウは落ちそうになったクリムを助けるため、両腕を伸ばしたのだ。このおかげで、クリムは落下することはなかった。
「ありがとうございます。あとは魔力を使って飛び上がります」
「そうか、分かった。だけど、まだあいつがいるから気を付けろよ。あいつの鼻に向けてリボルバーを撃ったから、あいつはもうしばらく動けないはずだ」
「顔が弱点ですか?」
「ああ。鼻、目、口、耳に攻撃すればダメージが入る」
「分かりました。これであいつに勝てます!」
クリムはそう言って魔力を開放しようとした。しかし、シュウの後ろにアロウが立った。
「なっ……」
シュウが後ろを振り向いた直後、アロウは大きな魔力の塊を発し、バカップルに向けて放った。魔力の塊は爆発を起こし、バカップルを吹き飛ばした。
「キャアアアアアアアア!」
「クリムゥゥゥゥゥゥゥ!」
吹き飛んだクリムを見て、シュウは思わず右腕を伸ばした。シュウの右手はクリムに近付きつつあったが、突如、シュウは右腕に力が入らなくなった。




