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バカップル最大の危機


 シュウはポーカーとの決着がこんな形で幕を下ろすこと、そして、異形の化け物と変化したアロウがクリムを追い込んだ光景が目の前で繰り広げられている。予想外の展開が連続したため、シュウは少し混乱していた。だが、倒れたクリムに駆け寄って何度もクリムの名を呼んだ。


「クリム! クリム! 目を開けてくれ!」


「大丈夫です……まさか……私があいつに追い込まれるとは思ってもいませんでした。改造の力を甘く見ていました」


「あいつ、ポーカーから改造されていたのか」


「はい。そのせいで、奴は強くなりましたが……理性はないでしょう」


 バカップルが話をする中、アロウはバカップルを見て大声を上げ、走り出した。


「屋上に行きましょう。ここでは戦えません」


「分かった。クリム、魔力は使えるか?」


「もちろんです! 先輩、私に抱き着いてください!」


 シュウはクリムに言われた通りにクリムに抱き着いた。シュウがしっかりクリムに抱き着いたことを確認した後、クリムは魔力を開放して屋上へ戻った。バカップルが屋上に向かったことを確認したアロウは、バカップルを追いかけるように大きくジャンプした。




 屋上に到着したバカップルは、深呼吸をして態勢を整えていた。


「まさか、ポーカーがあいつに潰されるとは思ってもいなかった」


「アロウの下敷きになって死んだのですね。因果応報というか……悪いことをし続けた結果ですね」


「そうだな……おっと、奴が来るようだ」


 シュウがこう言うと、アロウは大声を上げながら屋上に到着し、バカップルを見て奇声を上げた。シュウはアロウが突っ込んで来ると身構えたが、何かを察したクリムが叫んだ。


「待ってください先輩! あいつ、魔力を使うつもりです!」


「そこまでの知力があるのか……」


 クリムはシュウの前に立ち、バリアを張った。それと同時にアロウは右手から大きな火の玉を発した。大きな火の玉はクリムのバリアに命中したが、大きな音を発しながら破裂し、バリアを破壊しつつバカップルを風圧で吹き飛ばした。


「うわあ!」


「きゃあ!」


 吹き飛んだバカップルは後ろのフェンスに激突した。クリムは立ち上がって雷を作り、アロウに向かって発した。


「これでも受けなさい!」


 クリムが発した雷はアロウに命中したが、アロウの体は何事もなかったかのように動いていた。


「嘘……痺れないの……」


「クソッ! 俺のクリムに手を出すな! デカブツ野郎!」


 シュウはリボルバーを持ってアロウに向かって発砲した。しかし、リボルバーの弾丸はアロウに命中しても貫くことはなく、アロウに命中して威力を落とし、下に落ちた。


「嘘だろ……超強力なリボルバーの弾丸が効かないなんて……」


 驚きのあまり、立ち尽くすシュウに向かってアロウは風を放った。その風は刃のように鋭く、地面をえぐっていた。


「先輩!」


 クリムの声を聞いて我に戻ったシュウはクリムを抱きながら横に飛んだが、放たれた風はバカップルを追尾していた。


「嘘でしょ……」


「追尾機能を付けるほどの知力はあるのかよ……」


 バカップルは追いかけて来る風を見て、驚いて目を開いていた。その風の刃はバカップルに命中し、爆発音のような音を発した。




 風が爆発し、周囲に砂煙が舞った。少しして砂煙が薄れ、アロウの目の前に血まみれで倒れているバカップルの姿が映った。それを見たアロウは微笑み、気を失ったクリムに近付いた。


「殺す……殺す……クリム……殺してやる!」


 そう言って、倒れているクリムにとどめを刺そうとした。しかし、その寸前に我に戻ったシュウがハンドガンを構え、アロウの右目に向かって弾丸を放った。


「ガッ!」


 アロウは飛んで来た弾丸を回避することはできなかった。シュウが放った弾丸はアロウの右目を撃ち抜いたのだ。アロウは悲鳴を上げながら後ろに下がり、右目を抑えていた。


「クリム! クリム!」


 シュウは急いで倒れているクリムに近付き、何度も名を呼んだ。しばらくしてクリムはゆっくりと目を開き、シュウを見た。


「せん……ぱい……」


「大丈夫か?」


「少し……体が痛いです……結構ダメージを受けたみたいですね……」


「ああ。少し休んでいろ、俺が奴を引き付ける」


 と言って、シュウはハンドガンのリロードをしながらアロウに向かって叫んだ。


「かかって来いよ、デカブツ野郎! 俺が相手だ。クリムに手を出したらぶっ殺すぞ!」


 シュウは大声でこう叫んだ。その言葉を聞いたアロウは鬼のような形相でシュウを睨み、大声で叫んだ。


「殺す……殺す……お前を殺す! そして、クリムも殺す!」


 そう言って、アロウはシュウに向かって襲い掛かった。




 シュウはリボルバーの弾丸を受けても意味がなかったアロウの体を見て、最初は動揺した。だが、目への弾丸を受けた時にアロウが悲鳴を上げた光景を見て、シュウはアロウの弱点を見切った。肌への攻撃は無意味である。ダメージを与えるなら顔。鼻、目、口、耳に弾丸を放てばあいつを倒せるとシュウは思った。


 これ以上クリムを傷つけるわけにはいかない。あんな奴に大事なクリムを傷つけさせてたまるか!


 シュウは心の中でこう思いながら、走ってくるアロウを睨んだ。


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