親子共闘
シュウ達はラックの救援を聞きつけ、すぐに現場へ向かった。
「ねぇ、あなたが言ってたラックってどんな人?」
現場へ向かう最中、ナギがシュウにこう聞いた。それに対し、シュウはこう返事をした。
「魔法剣士。剣も自然魔法も使える優秀な奴だよ。何故か俺と同じようなファンがたくさんいるけど、本人は困ってる」
その返事を聞き、ナギは察した。かなりのイケメンがもう一人いるという事を。
「おっしゃー‼ やる気上がったわ、待っててねラックって人ー‼」
ナギは猛スピードで、先へ進んでいった。タルトはナギに先に行くなと言ったが、ナギは聞く耳を持たなかった。
「全く……イケメンがいると聞いた時のナギはああだからな……」
「大変そうですね、お義父様」
「ああ。エイトガーディアンのほとんどが若いもんだから、おっさんにはきついよ……」
と、タルトはクリムにこう話した。
その頃、ラックは傷ついた仲間を癒すために薬草をすりつぶしていた。
「薬草をすりつぶしました。傷口に塗ってください」
「ああ……すまない……グッ……」
仲間はしみる痛みをこらえ、すりつぶした薬草を傷口に当てた。
「救援は必ず来ますから、それまで耐えてください」
「ああ……」
その時、ラックは近くから気配を感じた。上を見ると、トカゲが巨大化したようなモンスター、グラッダゲーアが涎を垂らしながらラックを睨んでいた。
「見つかったか……」
ラックは剣と盾を構え、グラッダゲーアの襲撃に備えた。グラッダゲーアは雄たけびを上げ、ラックに襲い掛かった。しかし、ラックが魔力を開放していることをグラッダゲーアは知らなかった。
「喰らえ‼」
ラックは雷を発し、グラッダゲーアに攻撃を仕掛けた。雷によるダメージは与えたが、グラッダゲーアはすぐに立ち上がった。そして、粘着性のある液体をラックに向けて発した。それに対し、ラックは火の玉を発してその液体をかき消そうとしたが、火の玉が液体に当たった瞬間、大きく破裂した。
「グッ……あの液体にガソリンに似た物質が含まれてるのか……」
爆発で怯んだラックに対し、グラッダゲーアが一気に接近した。ラックは剣で攻撃をしたのだが、それを察したグラッダゲーアは後ろに下がった。その隙に、ラックは水の魔法をグラッダゲーアにかけ、足元を凍らせた。
「少し動きます。痛むかもしれませんが、耐えてください」
ラックは怪我人を連れ、グラッダゲーアから離れて行った。怪我人の近くで戦わないよう、ラックはグラッダゲーアから離れるために攻撃を仕掛けていたのだ。
怪我人を抱えて逃げてる途中、ラックは後ろから追ってくるグラッダゲーアの姿を確認した。
魔法が切れたか。
そう思い、ラックは再び魔力を開放して魔力を体全体に流して運動能力を強化した。そんな中、前から来る別の魔力を察した。この感じたことのない魔力を感じ、ラックはその場に止まった。
「誰ですか? ギルドの救援ですか?」
その声を聞いて立ち止まったのは、ナギだった。見たこともないナギを見て、ラックは戸惑った。
「私、シェラールのギルドのナギって言います。丁度来てた時に救援を聞いたので、助けに来ました‼」
その言葉を聞き、ラックはああ、この子は悪い子じゃないと察した。そんな中、グラッダゲーアが襲い掛かってきた。
「全くもう、邪魔なトカゲね‼」
ナギはこう言って、衝撃波でグラッダゲーアを上へ弾き飛ばした。その後、溜息と共にこう言った。
「いるんでしょハヤテ、手柄はくれてやるからさっさと始末しなさい」
「命令するな‼」
声と共に、ハヤテが両手に持った剣とナイフでグラッダゲーアに攻撃を仕掛けた。だが、この攻撃でグラッダゲーアは倒すことは出来なかった。
「チッ……見た目通りタフな野郎だ。頼むぜ、タルトさん‼」
その直後、タルトが猛スピードでグラッダゲーアに接近し、連続攻撃を仕掛けた。何回か切りつけた後、タルトは後ろに下がった。タルトは後ろにいるシュウが、銃を構えていることを察知していたのだ。
「止めは任せるぞ、シュウ」
タルトがこう言った直後、発砲音が聞こえた。その後、額を打ち抜かれたグラッダゲーアは、ゆっくりとその場に倒れた。
戦闘後、ラックはクリムから全ての事を聞いた。
「まさか……有名なギルドの戦士が君の生き別れたお父さんだったなんてね……」
「最初は驚いたけど、今はもう落ち着いたよ」
シュウとラックが話している中、ナギがラックに近付いてきた。
「あの……ラックさんでしたっけ? あなたは今、彼女はいます?」
「今はいないけど……」
「じゃあ私と遠距離で」
その時だった。ラックの救援に駆け付けたファンの子達が現れ、ラックの周りを取り囲んでしまった。それを見て、ナギは察した。ラックの方も恋のライバルが多い事を。
そんな中、怪我人の治療を終えたクリムは、シュウにこう聞いた。
「先輩、この後どうするんですか?」
「この後って?」
「生き別れた親と再会できたんですし、タルトさんの方に行くかここに戻るかってことです。タルトさんの方からはまだ言ってないようですけど、いずれこの事に対しての答えを求められると思います」
この言葉を聞き、シュウはクリムにこう返した。
「もう答えはある。いずれ、本当の親が出てきた時の為に考えてあるんだ」




