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ダンスを始めましょう


 メスを持ってシュウに襲い掛かったポーカーは、右手のメスをシュウに向かって突き刺した。攻撃を予測したシュウは体を反らして攻撃をかわし、ポーカーの横に回ってハンドガンを撃とうとした。だが、ポーカーは左手のメスを投げて攻撃した。


「グッ!」


 メスを投げて攻撃すると予測していなかったシュウは苦しそうな声を上げながらメスの投てき攻撃をかわし、ポーカーから離れた。


「離れないでよ。楽しい踊りの時間はこれからよ!」


「クリムとなら喜んで踊るけど、お前とは絶対に踊りたくないね!」


 シュウはこう言って、投てき攻撃で使われたメスをハンドガンで撃って破壊し、迫りくるポーカーを睨んだ。蹴りを放ってポーカーを攻撃しようと思ったが、ポーカーは三本のメスを投げ、隙を見てメスを動かし、突き刺す考えを持っているとシュウは予測し、後ろに下がってポーカーに向けて発砲した。


「もう。消極的ねぇ。踊りに誘われたら誘いに乗るのがマナーじゃない?」


「変態不審者野郎が来たら誰だって逃げる! うるさいから黙っていろ!」


 シュウは苛立ちながらこう言った。ポーカーはシュウが放った弾丸をかわし、態勢を崩さないために地面に立った。


「シュウ君が来ないなら、私の方から来ちゃうよ。楽しく踊りましょうよ」


「踊りたくないって言っているだろうが。それと……ふざけるのもいい加減にしろよ! クソ野郎!」


 シュウはアサルトライフルに持ち替え、ポーカーに向かって乱射した。飛んでくる無数の弾丸を見て、ポーカーは慌てながらかわした。


「鉄砲遊びはこれで終わり?」


 と、ポーカーは笑顔でこう言った。その笑顔を見たシュウは更に苛立ち、魔力の塊を作り、ポーカーに向けて放った。飛んで来る魔力の塊を見たポーカーは難なくそれを受け止めた。


「魔力を使っての攻撃ねぇ。あの賢者ちゃんの方がいい物を作れるわよ。無理しちゃダメよ」


「悪いが、それはただの魔力の塊じゃない」


 シュウはポーカーが持つ魔力の弾丸に向けて、ハンドガンを撃った。放たれた弾丸は魔力の塊に命中し、その直後に魔力の塊は大きな音を立てて爆発した。周囲に舞う砂煙を払いながら、シュウはポーカーがどうなったか調べようとした。だが、ポーカーが立っていた場所に姿はなかった。それを知ったシュウは冷や汗を流した。外部から衝撃を受けたと同時に破裂する魔力の塊を作ったシュウだが、人が死なないように威力は抑えていたのだ。そのため、この攻撃でポーカーは傷を負ったが、動ける程度のレベルで、どこかに逃げるか奇襲するかもしれないと考えた。


 まずいな。


 自分が考えた動きが逆にポーカーに行動の選択肢を与えてしまったことを後悔しつつ、シュウは壁に背を向けてポーカーを探し始めた。しばらく動いていると、地面に付着した血を見つけた。それを見たシュウは急いで周囲を見回した。


 どこかにあいつが隠れている。


 地面の地を見たシュウはこう思った。今いる場所に、ポーカーが潜んでいると察したのだ。周囲は散乱した壁の破片や、天井の破片。それ以外に何もなかった。だが、どこかにいると考えたシュウは目を閉じ、集中してポーカーの気配を探ろうとした。しかし。


「私。小さい頃からかくれんぼが得意なのよ」


 と、後ろからポーカーの声がした。声を聞いたシュウは咄嗟に後ろを向こうとしたが、壁の色と同化していたポーカーは後ろからシュウを強く抱きしめた。


「ガッ! クソッ!」


「形勢逆転。これで好き勝手いろいろとできるわねぇ」


「ふざけるな! 俺にはクリムがいる!」


 シュウは暴れてでもポーカーから抜け出そうとしたが、ポーカーはシュウの右腕付近を強く握りしめていた。そのせいで、右腕から体に激痛が走った。


「ガアアアアアア!」


「まだそこが弱点なのね。仕方ないわ。子供の頃に負った大きな傷だからねぇ」


「うるせぇ!」


 叫びながらシュウはポーカーの右足を強く踏みつけた。だが、ポーカーは痛そうな身振りをしなかった。


「こういうこともあろうかと、頑丈な靴を履いてきたのよ」


「クソッたれ……」


 シュウは後ろから聞こえるポーカーの下品な笑い声を聞き流しながら、この状況をどうやって打破するか考えた。




 クリムはアロウが放つ攻撃を回避しながら、アロウのことを哀れに思っていた。


「このガキ! そんな目で俺を見るな! 俺を見下すな! 俺はお前より強い!」


「私より強いのなら、賢者の称号なんて楽に手に入れられるのにね」


「グッ……」


 クリムの言葉を聞き、アロウは怒りを爆発させた。


「俺を怒らせたことを後悔するなよ。この技でお前をこの世から消し去ってやる!」


 と言って、アロウは上空に飛び上がり、巨大な火の球を作り出した。


「誰だってできる基本の応用ですね。私もその位できますよ」


「なら、これはどうだ!」


 アロウは巨大な火の球をクリムに向けて放った。クリムは水を放って火の玉を消去しようとしたのだが、突如火の玉の周りが尖った。


「なっ!」


「フハハハハハ! ただの火の玉じゃないぞ! こいつは不規則に周囲に棘が発するように作られた火の玉だ! それに、水を発しても消えない! さぁ、こいつを受けて穴だらけになって死ね!」


 と、アロウは笑いながらこう言った。


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