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光と闇の激突


 バカップルの方でも戦いが始まった。リナサは戦いながらこう思った。バカップルと別行動をする前、リナサは二人について行って一緒に戦おうとした。だが、目の前の男を倒さなければならない。リナサはそう思って戦いに集中した。


「何をよそ見しているのさ?」


 男はそう言いながら、リナサに向かって何かを放った。リナサはそれをかわし、壁に当たった物を確認した。


「まさか、光?」


「そう。僕は光の魔力を持っているのさ」


 男はそう言って、両手に光を放ってリナサに見せびらかせた。光を見たリナサは驚きのあまり、その場で立っていた。


「驚いているようだね」


「ええ。私以外に光の魔力を使う人はあまりいないから」


 と言って、リナサは右手に光の剣を作り、男に見せた。男は光の剣を見て、狂ったかのように高笑いを放った。


「ははははははははは! 君も異端の力を持っていたのか! 似た者同士だね、僕ら」


「裏ギルドに入ったあなたと私を一緒にしないで」


 男の笑い声を聞きながら、リナサは男に斬りかかった。だが、男は光の剣の一撃を防御し、リナサに反撃を仕掛けた。


「おいおい、人が話をしている時に攻撃を仕掛けるなよ」


「黙ってほしいわ。私、あなたみたいな奴、嫌いなの」


 リナサは男に蹴りを入れ、後ろに転倒させた。そして、闇の魔力を放って男に攻撃を仕掛けた。


「グガッ!」


「これで終わりよ」


 闇を受けた男は床を転がりながら苦しそうに声を上げていたが、しばらくして声は笑い声に変わった。


「は……ははは……ふざけた女だ。光と闇を持って……ギルドに入っていい地位にいるとか……僕と逆じゃないか! 同じ力のくせに!」


 男は魔力を開放して立ち上がり、歩きながらリナサに近付いた。何かを仕掛けてくる。そう察したリナサは闇を発して男がどう動いても対処できるように構えた。


「お前は殺す! このクラネイが殺す!」


 クラネイはリナサに向かって走り出し、両手に光の剣を持って襲い掛かった。リナサは危険だと思って地面を触り、地面から闇の壁を発して迫って来るクラネイの行く手を阻んだ。後ろに転倒したクラネイに対し、リナサは闇を発して攻撃を仕掛けた。


「クソッ!」


 迫って来る闇に対し、クラネイは光の剣で闇を切り裂いた。だが、目の前には闇の波動を発していたリナサの姿があった。


「受けなさい!」


 そう言って、リナサは闇の波動をクラネイに向けて放った。しばらくして闇の波動は消え、その場に倒れたクラネイの姿があった。


「ぐ……うう……」


「もう終わりよ」


 そう言って、リナサは倒れたクラネイの元に近寄った。




 倒れているクラネイは、過去のことを思い出していた。


 光の魔力という他の人が持たない属性の魔力を持っている。それだけの理由で親に嫌われ、学校では異端児扱いされ、先生からも変なものを見るような目で見られた。


 周りから異端児扱いされた日々が続いたせいで、彼の怒りが大爆発した。彼は光の魔力を使って自分を異端児扱いしていた人々を殺した。親も、学校のクラスメイトも、学校の先生も全員殺したのだ。彼のことを知った警察も彼を捕らえるために向かったが、彼らも殺した。


 それから彼は一人で生きてきた。腹が減ればレストランへ向かって食事をし、周囲を光で破壊して食い逃げをする。眠かったらホテルで一晩過ごし、光でホテルを消滅させる。そんな生活を過ごすうちに、彼は力があれば何でもできると思った。


 その後、彼は裏ギルドにスカウトされた。光の魔力を使って暴れる彼のことを知り、その力を欲したからだ。安心して食事、休む場所ができるという理由で、クラネイはアロウたちの仲間になった。


 仲間ができ、裏ギルドの一員として自由に動ける身となったが、それでも過去のトラウマが彼を苦しめていた。




「ふざけるな……」


「え」


 突如声を出したクラネイの姿を見て、リナサは動揺した。その直後、クラネイは徐々に魔力を高めながら立ち上がり、大声で叫んだ。


「僕を異端児扱いするな! 僕は……僕は……普通だ!」


 そう叫ぶと、周囲に激しい風が舞った。リナサは両腕で舞う風を防いでいたが、その隙にクラネイはリナサの後ろに回っていた。


「なっ!」


「死ねぇ!」


 クラネイは光の斧を使ってリナサに襲い掛かっていた。反射的にリナサは闇の魔力を盾にしてクラネイの攻撃を防いだ。後ろに下がったリナサは反撃をしようと思い、光の弾丸で攻撃を仕掛けようと考えた。しかし、クラネイは素早く走ってリナサに近付き、光でまとった右の拳でリナサの頬を殴った。強く殴られたリナサは物凄い勢いで後ろに吹き飛び、壁にめり込んだ。


「はぁ……はぁ……このクソガキ! 僕を異端児扱いするな、僕を弱いと思うな! 僕は弱くない、強い! この世界で! 誰よりも! 強い!」


 この言葉を聞き、リナサは立ち上がってクラネイを睨んだ。


「何かあったか分からないけど、光を使うから周りから変な目で見られていたのね……」


「そうだ! これ以上言うな、殺すぞ!」


 リナサの言葉に対し、クラネイは唾を出しながら叫んだ。叫ぶクラネイを見て、リナサは静かにこう言った。


「私も道を外せば、あなたみたいになっていたかもね」


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