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プライドを持つ敵


 ハヤテの戦いが終わった。ナギは大きく息を吐きながらこう思った。その瞬間、金属音が聞こえ、後ろの柱が音を立てて崩れた。


「そこにいるのは分かっている。隠れていても無駄だ」


「ふぅ、女の子が相手だから、少しは手加減してよね」


「女だろうが、子供だろうが、敵として俺の前に立ちふさがるなら殺すまで!」


 ナギの相手の男はそう言うと、剣を鞘に納めて力強く振るった。その時、ナギは相手の男から魔力を感じ、危機感を察してその場から離れた。しばらくし、ナギが立っていた床に大きな刀傷が生まれた。


「避けたか」


「隙あり!」


 剣を持ったナギは男に近付き、反撃を仕掛けた。しかし、男の方が動き早く、剣が振るわれた際の衝撃でナギは後ろに転倒した。


「何て力……」


「力ない者が剣を持つな!」


 男はそう言って、剣先をナギに向けた。その言葉を聞いたナギは苛立ち、立ち上がる際に男の剣先を蹴り上げた。


「蹴りか……無駄なことを!」


「女だからって甘く見るな!」


 ナギは魔力を開放し、素早く移動して男に接近し、剣を振り上げた。この一連の行動を見抜けなかった男は一閃を受け、小さく悲鳴を上げながら後ろに下がった。


「ぐう……このイセンに一撃を与えるとは……」


「油断しすぎよ。変な偏見を持っているから、傷ができたのよ!」


 と、動揺するイセンに向かってナギはこう言った。攻撃を受けたイセンは魔力で止血し、ナギに向けて剣を構えた。


「それなりにやるようだな。少しだけ褒めてやる」


「裏ギルドのくせに上から物を言うなんて生意気よ」


 ナギはそう言いながら剣を振るった。しかし、イセンも剣を振るっており、二つの剣の刃は宙でぶつかった。ぶつかった際の衝撃で二人の態勢は崩れ、同時に態勢を戻すために後ろに下がった。


 面倒な敵だ。


 イセンはそう思い、ナギの方を見た。イセンは剣の腕に関しては自信があり、どんな敵も剣さえあれば戦え、勝つことができると信じていた。しかし、目の前の相手、ナギはそう簡単に倒せる敵ではない。そう思い、イセンはため息を吐いて魔力を開放した。


「俺のプライドに傷が付くが……敵を倒す以上仕方ない!」


 と言って、風の魔力を作り出し、輪の形に形成してナギに向かって投げた。これまでの敵と戦った経験で、ナギはこの風の輪が敵を切り裂く物だと理解し、慌てて回避した。風の輪はブーメランのように回りながら、柱を斬った。


「物騒な物を作り出すわね、あんた」


「本来なら剣だけで戦いたいが、強敵相手となるとプライドも捨てるさ」


「あ、そう」


 ナギは会話の隙にイセンに近付いて剣を振って攻撃をしようとした。しかし、イセンはこの行動を察しており、剣を使ってナギの攻撃を防御していた。


「甘いな。そんな単純な手には引っかからない」


「確かにね」


 ナギは剣に力を込めながらこう言った。


 バカな女だ。


 イセンは心の中でこう思った。さっき放った風の輪はただの遠距離用の魔力ではなく、ブーメランのように戻って来る。そのことをナギは知らず、イセンに接近したのだ。今がチャンスと思い、イセンは放った風の輪を戻るように操った。


「フッ、相当力を込めているようだな。汚い顔だ」


「あんたの顔と比べたらましな方よ」


 わざと挑発するような言葉を言い、イセンはナギを自身に近付けたままにしようと考えた。そして、放った風の輪は徐々にイセンの元に近付いた。その時、ナギはこう言った。


「悪いけど、あんたが何を考えているのか私、分かっているからね」


「何?」


 ナギの言葉を聞き、イセンはどういうことだと聞こうとしたが、その前にナギは高く飛び上がった。ナギが飛び上がった後、イセンの目の前には戻って来た風の輪があった。


「なっ……」


「分かっていたわよ。あの風の輪がブーメランのように戻って来るって。魔力を輪の形にしてブーメランのように使う方法、他の奴も使っていたって聞いていたから」


 上空にいるナギがこう言った。その直後、風の輪はイセンを一閃した。




 アロウとポーカーの元へ向かっているバカップルは、階段を上り終えていた。


「やっと階段が終わったな」


「でも、まだ奴らはいませんね」


「屋上かな。この塔、結構高いな」


「二百メートルはあるらしいです」


 バカップルは歩きながら話をしていた。すると、シュウは感じたことのある魔力を察し、銃を抜いた。


「あの野郎がいる」


「ポーカーですね。私も一緒に戦います」


 クリムがこう言った直後、二人の間を裂くように上からシャッターが下りてきた。


「クリム!」


「先輩!」


 二人は同時に声を出し、シャッターを開けようとした。だが、どれだけ魔力を使っても、力を使ってもシャッターは動かなかった。


「クソ! あいつら……」


「あいつらって私も含まれているのよね?」


 と、後ろから声が聞こえた。シュウは怒りをこみ上げながら、後ろを振り返ったと同時に銃を発砲した。


「ヒャア! 久しぶりの再会なのに銃を撃つなんて酷いわねぇ」


「黙れ! 腐れ外道!」


 シュウは鬼のような形相で、ポーカーを睨んだ。シュウの顔を見たポーカーは笑い声を上げながらこう言った。


「怒っちゃやーよ。そんな顔、似合わないわ」


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