親子の対面
タルトが言った一言は、周囲にとんでもない衝撃を生み出した。
「嘘だろ……マジか……」
ジャックはとんでもない状況になったと、心の中で思った。冷静になって考えてみると、どれもこれもつじつまが合う。タルトが持っていたペンダントの鍵、行方不明になったタルトの子供がシュウと同じ名前。そして、タルトとシュウの髪の色がどことなく似ていることを。
「ま……まぁとりあえず、タルトさんと先輩が本当に親子かどうかは、検査してみないと分からないですし、調べてみますか」
と、クリムがこう言って、周りの人達は動き出した。その後、シュウとタルトは村の病院へ検査のために向かった。クリムも付き添いの為に、シュウと共に向かって行った。ハリアの村に残ったハヤテとナギは、待合室で報告が来るのを待っていた。
「おーい、なんか飲むか?」
ジャックが二人にこう聞くと、ハヤテはジャックを見てこう言った。
「今は喉は乾いてないぜ。それより、あんた強そうだな」
「喧嘩を売るつもりか? 悪いが、俺は子供と喧嘩したくねーんでな……」
「暇だし、少し動きたいんだよ」
「外行ってこい」
その時、ハヤテはジャックに斬りかかろうとした。だが、その前にナギがハヤテを止めていた。
「止めなさいバカ。いくら暇だからってケンカを売るバカはあんた以外いないわよ」
「しゃーねーだろ。それに、このギルドの連中がどのくらい強いのか試したいし」
「魔力で察しなさい」
「もういいか?」
「あ、はい。すみません」
ナギは去っていくジャックを見て、少しボーっとしていた。
「少しカッコよかった……」
「面食い女」
ハヤテが小さく呟いた直後、ナギのドロップキックがハヤテを襲った。
「いい加減にしなさいドバカ‼ あんたがあのままあのイケメンに切りつけたら、あんた返り討ちに合ってたわよ」
「何で分かるんだよ?」
「察知できなかったの? あの人、剣を握ってたわよ。多分、あんたと話している最中にね」
「じゃあ、もしかして俺……」
「下手したら……いや、少しやられてたわね。しょうもないバカだからエイトガーディアンの中で一番弱いって言われてるのよ」
「俺が一番弱いのか!?」
「そうよ、単細胞」
ナギの言葉にカチンとし、ハヤテは物凄い形相でナギを睨んだ。そんな中、シュウ達が戻ってきた。クリムは近付いてきたギルドの戦士やハヤテとナギに向かって、こう告げた。
「結果が出ました。先輩とタルトさんは、実の親子です」
ギルドのベランダにて、ティラは一人で酒を飲んでいた。
「全く、早い時間から酒飲んでるんですか」
「文句あるー?」
ティラはミゼリーの方を向いてこう言った。ミゼリーはティラの横に立ち、シュウとタルトの事を告げた。
「あの二人、本当の親子よ」
「へー。よかったじゃん。シュウの本当の親父さんが見つかって」
「不安じゃないの? もしかしたら……シュウがシェラールに行くかもしれないのに」
「何をするかは奴の勝手だ。私がそう言ったんだ、自分が何をするかは自分で決めろ、他人に左右されるなって」
「……じゃあ、シュウがここから去っても、それはシュウが選んだ答えってことでほっておくの?」
「ああ」
ティラは空になった酒瓶をゴミ箱に捨て、しゃっくりをしながらミゼリーとの話を続けた。
「あいつが選んだ答えに関して、私があーだこーだ言う資格はない。もし、あいつがここから出ていくことになったら、私はたまには連絡しろよって言って張り手で奴のケツを叩くよ」
「……」
「あいつももう一人前なんだ。私が依頼でここにいない時や、クリムがまだ修行してた時、あいつはちゃんと仕事をできてただろ?」
「ええ……」
「なら、お前もあいつが選んだ答えに関して文句言うな。寂しくなるのは分かるけど」
そう言って、ティラはお酒お酒と言いながら去って行った。
シュウの部屋。シュウとタルトはベッドの上で話をしていた。クリムは邪魔にならないよう、部屋の外で待機していた。その横には、シュガーが立っていた。
「まさかエイトガーディアンのリーダーがシュウ君の父親だったなんてねー」
「一度、エイトガーディアンのキャニーさんって人から写真を見せてもらったんです。先輩に似てたから、もしかしてとは思ってました」
「いろいろあったけど、再会できてよかったね」
「ええ。先輩も驚いていましたが、今は冷静になったみたいですし」
その直後、タルトの悲鳴が聞こえた。
「どうしたんだ?」
「何かあったの?」
声を聞いたハヤテとナギと合流し、クリム達は部屋に入った。そこには、ベッドの上で白目をむいているタルトの姿があった。
「何を話したの?」
「怪我とクリムと付き合ってる事。怪我の方は驚いていたけれど……クリムと毎日イチャイチャイチャイチャイチャイチャしてるって事を伝えたら……」
「いや、どれだけイチャイチャって言ってるの?」
「だって、毎日クリムと風呂に入ったり、一緒に抱き合いながら寝たりしてるなんて言ったら父さん失神するだろ」
「もうしてるわよ」
と、ナギは失神しているタルトの頬をつつき、こう言った。そんな中、サイレンが鳴り響いた。この音を聞いて、タルトは目を覚ました。
「何があったんだ!?」
「なんかやばい事でも起きたの!?」
「静かにしてて、放送が流れるから」
シュガーがこう言った直後、アナウンスが流れ始めた。
『緊急です‼ ハリアの村から南西5キロほどの場所で、大型モンスターを確認しました‼ 今現在、依頼帰りのラックさん達が相手をしていますが、苦戦中とのこと‼応援の方をお願いします‼』
放送を聞き、シュウは慌てて銃を取り出し、クリムも部屋の中にある自分の杖を取り出した。
「ラックがやばい。行くぞクリム‼」
「はい先輩‼」
と、二人が出ようとした時、タルトがこう言った。
「待ってくれ、私達も手伝わさせてくれ」
その言葉を聞き、シュウは頷いて返事をした。
「分かった、父さん」




