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刃と血が飛びあうホールの中で


 改造銃を使ってキャニーに反撃をしていたシュペロだったが、キャニーが放った弾丸が左手の改造銃の銃口に入り、爆発を起こした。


「この位の爆発で死にはしないでしょ? 出てきなさい!」


 と、キャニーは大声でこう言った。爆発によって発生した煙の中、シュペロが四つん這いで這うように現れた。


「ぐ……クソ……こんなやり方で負けるなんて……」


「観念しなさい。これ以上反抗するなら、確実に仕留めるわよ」


 大きな傷を負ったが、口の汚いシュペロに向かってキャニーはこう言った。その言葉を聞き、状況を判断したシュペロはクソッたれと小さく呟いてその場に倒れた。倒れたシュペロに近付いたキャニーは様子を調べ、シュペロが気を失ったことを確認した。


「こっちは何とかなった……」


 戦いが終わり、キャニーの体全体から力が抜けた。その場に座り込んだキャニーは少し休んでいたが、近くから刃のぶつかる男を耳にし、ボーノとスネックの無事を、戦いが早く終わることを祈った。




 ボーノは両手のナイフで目の前の男と戦っていた。戦っている場所はこの階の中央部分。広く、壁やソファーなどがあまりない。戦っている男の武器は、ボーノと同じくナイフだった。


「こりゃーいい戦いになりそうだな」


「おいおい、俺はあまりあんたみたいな奴と戦いたくないさ。自分と戦っているみたいで気味が悪い」


 息を吐きながら笑う相手に対し、ボーノはこう言葉を返した。


 さてどうする?


 ボーノは自分に言い聞かせた。目の前の相手の武器はナイフ。そして、戦いのやり方も踊りを混ぜたナイフ術という、自分と同じ戦い方。長年、ボーノはこの戦い方を学び、自分でやり方を変えたりなどといろいろとアイデアを練って戦っている。だが、似たような戦い方をする敵を見て、やりにくさを感じていた。


「おい、ダンスはまだ終わってないぜ!」


 と言って、敵はボーノに斬りかかった。ボーノはナイフを逆手に持ち、相手の攻撃を防御しながら後ろに下がった。下がった先には、柱があった。


「追い詰めたぞ!」


「いーや、そうでもないさ」


 ボーノは柱に向かってジャンプし、柱を蹴って相手の後ろに着地した。


「わお」


「驚いている暇はないぜ。ベイビー!」


 驚いて隙をさらしている敵に対し、ボーノは左足で蹴りを入れた。蹴られた相手は柱にぶつかったが、激突したその直後に敵は左側に飛んだ。


「今の、結構……痛かったぜ」


「そりゃそうだ。痛めるつもりで蹴ったからな」


 言葉を返すボーノだが、左足に違和感が走り、視線を向けた。いつの間にか、ボーノの左足のすねの部分に一閃の傷が入り、血が流れていた。


「ぶっ飛ぶ前に何かしたな」


「ああ。小さい風の刃を飛ばした。ま、やけくそで放ったら当たったみたいだが」


 敵はストレッチしながら立ち上がった。そしてナイフを構え、ボーノを見た。


「これだけいい敵と会えたから、自己紹介しなくちゃ無礼っていうものだ。俺はサルト。もっと遊ぼうぜ」


「悪いけど、お前と遊んでいる暇はない」


「そんなこと言うなよ!」


 サルトは笑顔を見せながらボーノに接近し、両手のナイフを同時に振り下げた。ボーノはサルトの攻撃をかわし、後ろに下がった。


「逃げたか」


「逃げて悪いかよ」


 ボーノは呼吸を整えながら返事をした。


 心の中で、ボーノはサルトのことを強敵と思っていた。サルトはただの戦い好きではない。よく考えて行動しているからだ。戦いの中でボーノによく話しかけるのも、相手の集中の邪魔をし、自分のペースに持っていくためだ。


 ペースを崩されたら、不利な状況に陥る。そう思ったボーノは、サルトの攻撃をかわしつつ、どうすればいいか考えた。そのうち、昔のことを思い出した。




 若い頃、ボーノはナイフを使ってモンスター退治を行っていた。その時はただモンスターを倒せばいいと思っていたボーノだった。そんな中、同行していた剣士がこう言った。


「ボーノ。あまり攻めた戦い方をすると、疲れてしまうぞ」


「だったらその前にモンスターを倒せばいい」


「だといいが。状況というのはよく変わる。考えてみろ、モンスターを倒したけど別のモンスターがお前を狙っていたらどうする? その時、お前は疲れ果てて動くのも一苦労の状態だとする」


「うーん……抵抗する」


「疲れ果てて動けないって言ったじゃないか。そうなることを予想して、リズムを考えて戦えば体力的にも余裕ができると思うぞ」


「リズムか……音楽なら大好きだ。それに合わせて、踊るのも好きだな」


「それと同じだ。ダンスは激しいばかりじゃない。時折、ゆったりとした動きもあるだろ」


「確かに。タルト、参考になったぜ」


 と言って、ボーノはタルトに向かってありがとうの意味を込めて手を上げた。




 このことを思い出したボーノは、右足のつま先で床を叩き、音を出した。この音を聞いたサルトは不思議に思ったが、しばらくしてボーノの顔が上がり、その時の真剣なまなざしを見てサルトの体に寒気が走った。


 まずい。何かやるつもりだ。


 サルトは心の中でこう思い、ナイフを持って身構えたが、その前にボーノはサルトに接近して攻撃を仕掛けた。


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