ウエポンマスターの相手
その場に残り、クリムたちを先へ行かせたスネックたちは、目の前の敵を見て小声で会話を始めた。
「相手は四人、こっちも四人。一対一で戦うか」
「相手がこっちと同じ考えだといいが」
「そうは思いません。相手も自分たちが有利に立ち回れるように考えています」
「だったらどうするのよ?」
「スネックさんの言う通り、一対一で戦います。無理矢理にでもね」
「キャニーの案に乗った」
スネックはそう言うと、男の一人に向かって飛び蹴りを放った。
「こいつの相手は俺がする!」
「なっ! いきなり来たぞ!」
「構えもしていないのに」
「これは戦いだ。構えも何もあるか」
「とにかくあいつらを倒すぞ!」
相手の三人は、ボーノたちに向かって走って行った。キャニーはスネックの行動で相手が動揺したと思い、こう言った。
「先手を取られて相手は動揺しています」
「うし。スネックの先走る性格が役に立った。こっちも迎え撃ち、各々の戦いやすい場所に誘導しろ。無事で合流しよう」
その後、フィアットとキャニーはボーノの言う通り、相手を自分が戦いやすい場所に誘導し、戦いを始めた。
フィアットは物陰に隠れ、敵が近付くのを待っていた。
「どこだ、どこにいる? 隠れたって無駄だ、魔力で探知できるぞ」
相手の声が聞こえた。相手はフィアットの魔力を探知して場所を把握しているが、それはフィアットの罠である。わざと魔力を出し、相手を自分の方に来るように誘導しているのだ。そうとも知らず、相手はフィアットが隠れている壁に近付いた。
「ここだな」
「そらよ!」
相手の接近と合わせ、フィアットは鎖鎌で相手を斬り付けた。突如襲われたが、相手は武器を盾にして鎖鎌の刃を防御した。防御されたと察したフィアットは後ろに下がり、鎖鎌の分銅を投げた。
「クッ! こんなものが効くか!」
相手は雷の魔力を発し、飛んで来る分銅を破壊した。分銅が破壊されたと察したフィアットは、鎖鎌を相手に向けて投げた。
「フン、武器が壊れたから捨てたのか」
「そうよ。安物だから壊れやすかったのね」
と言って、フィアットはナイフを構えて相手に向かって来た。フィアットが近付いたことを察した相手は剣を手に取り、フィアットの攻撃を防いだ。
「鎖鎌の次はナイフか」
「ナイフだけじゃないわよ!」
攻撃を防御された後、フィアットはナイフを投げながら後ろに下がった。相手は飛んでくるナイフを地面に叩き落としたが、もう一本のナイフが腕に突き刺さってしまった。
「うぐぅ!」
「追撃チャーンス!」
相手が傷を受けて動きが鈍くなった隙に、フィアットは槍を構えて再び相手に接近した。
「今度は槍か。お前、どれだけ武器を持っているのだ!」
迫ってくるフィアットを見て、相手は急いで傷を癒し、再び剣を手にしてフィアットの攻撃を防御しようとした。しかし、相手の防御する時の動きをフィアットは見切っていた。
「同じ防御が二度通じるわけがないじゃない!」
フィアットの槍は相手の左肩を貫いた。相手は悲鳴を上げ、フィアットは槍から手を離して後ろに下がった。
「グッ……貴様ぁ……このラバルをここまで追い込むとは……」
「ラバルって名前なのね。ま、それよりもあんたと私じゃあ格が違うから、さっさと倒れてよ」
フィアットは勝ち誇った顔でこう言った。その言葉と顔を見て、苛立ったラバルは魔力を開放した。
「勝ち誇るなよ、小娘! まだ俺は貴様に負けたわけではない!」
「ほー、すごい魔力」
ラバルから解放される魔力を感じ、フィアットは少し体を震わせた。恐怖の身震いではなく、強敵と戦う喜びと緊張で身震いしているのだ。
「久しぶりに強い奴と戦うわ。楽しみよ」
「戦闘狂か。エイトガーディアンにも戦いに飢えた奴がいたとは」
ラバルはそう言うと、剣を構えてフィアットに急接近した。
「あ」
「隙あり!」
急接近したラバルは、剣を下から上に振り上げた。フィアットはこの一閃を避けることができず、受けてしまった。
「グッ!」
「まだまだ!」
一閃を受けたフィアットは後ろに下がったが、ラバルの動きが速かった。フィアットはラバルの二撃目の斬撃を避けることができず、また攻撃を受けてしまった。
「ガアッ!」
フィアットの悲鳴を聞いたラバルは、連撃の締めで突きを放とうとした。しかし、フィアットの目を見てラバルは動きを止めて後ろに下がった。この時のフィアットの目は、野獣のような目をしていたからだ。
「あれ? もう終わりなのね。あんた意外と小心者ね」
「これだけの斬撃を受けて、余裕があるのか」
ラバルが言葉を返した後、フィアットは斬撃の際に敗れた服の一部を破り捨て、ため息を吐いた。
「動きやすい服だったのに、血がべっとりついて嫌な感じ」
「余裕みたいだな……その態度で分かる」
「まーね。私もエイトガーディアンだし、それなりに修羅場はくぐっているわ。あんたのような奴とも何回も戦ったし。それよりも時間を与えていいの? これでも治療魔法は使えるの。ほら、あんたから受けた傷、治っちゃったわよ」
と、フィアットは斬撃で受けた傷が治ったことをラバルに見せつけた。ラバルはそれを見て、悔しそうに歯ぎしりした。その後、フィアットは少し胸元が開いていることに気付き、恥ずかしそうに隠した。
「おっぱい見るな!」
「好きでお前の乳を見たわけではない! クソ、お前のような奴と戦うと呼吸が乱れる」
アホなことをフィアットが言ったため、ラバルは呆れていた。だが、その隙を狙ってフィアットが斧を持って急接近した。
「隙あり」
「なっ!」
フィアットの言葉を聞き、ラバルはフィアットが近付いたことを察した。気付いた時には、フィアットは斧を下から振り上げようとしていた。




