セントラルタワーでの激闘
セントラルタワーの中にいるバカップル、エイトガーディアンの面々は外で起こる魔力の衝突が弱くなっていくのを感じた。
「外の方は片付いたようだな」
「先輩たちの魔力は無事みたいだけど」
「何人かギルドの戦士がやられたな」
タルトとシュウ、スネックの言葉を聞いたクリムたちは改めてアロウに対し、怒りを膨らませた。ハヤテは壁を殴り、叫んだ。
「あいつら絶対に許せねぇ! このまま上に行って奴らを半殺しにしてやる!」
「ハヤテ、今の状況で怒りを膨らませても意味がないぞ」
「でも!」
ハヤテはタルトに呑気なことを言っている場合じゃないと言おうとした。だが、タルトは怒りをこらえているのか、左手の拳は強く握られていて、そこから血が流れていた。それを見たハヤテは動揺し、冷静になった。そんな中、フィアットがエレベーターを見つけた。
「このエレベーターであいつらの元に向かえないかな?」
「止めろ。戦いの衝撃で使っている最中に止まったらどうする?」
ボーノの言葉を聞き、フィアットは階段を見て呟いた。
「結局階段を使うしかないのね」
「当たり前よ」
キャニーはフィアットに近付き、肩を叩いた。そんな中、リナサが何かに気付いて叫んだ。
「何か来る!」
この言葉を聞いたクリムたちは身構えた。クリムは上の階から強い魔力を感じ、シュウたちにこう言った。
「強い魔力がこっちに来ます。気を付けて!」
この言葉から数秒後、上の天井を突き破った四人の男が現れた。
「おーっと、ここから先へは行かせないぜ」
「お前らはここでゲームオーバーだ」
四人のうちの二人がこう言った後、別の二人がクリムたちに襲い掛かった。クリムは強い魔力のバリアを張り、二人の攻撃を防いだ。
「やはり賢者。この程度の攻撃では簡単にバリアで防御される」
「ここで止めるぞ。賢者クリムはアロウ様の獲物だからな」
二人はこう話していると、発砲音が聞こえた。シュウがクリムに襲い掛かった二人に向かって銃を撃ったのだ。
「おっと、彼氏さんの登場か」
「クリムに手を出したらハチの巣にするぞ」
「それは怖い」
シュウが男の言葉を聞き流し、追撃を続けようとした。しかし、後ろから別の二人組がシュウに襲い掛かった。
「隙だらけだよ、彼氏さん」
「このままあの世に逝っちまいな」
「そうはさせるかよ!」
と、ボーノがシュウを襲おうとした二人組に対し、ドロップキックを浴びせた。
「ボーノさん、ありがとうございます」
「いいってことよ。それよりも、こいつらをどうにかしないと」
ボーノは蹴り飛ばした二人組と、クリムに襲い掛かった二人組を見てこう言った。そんな中、スネックが銃剣を構えた。
「このバカ共の相手は俺がする。タルトさんたちは先に行ってくれ」
「スネック!」
無茶をするだろうと思ったタルトは、声をかけようとした。だが、タルトが声をかけると察したスネックは、タルトの方を振り向いた。
「大丈夫ですよ、タルトさん。どんな状況に陥っても、俺は戻って来たじゃありませんか」
「いいのか……一人で」
「一人じゃないですよ。俺も戦います」
ボーノがスネックの横に立ち、タルトにこう言った。スネックは驚きの表情をしていたが、続けて横に立ったフィアットとキャニーの存在に気付き、さらに驚いた。
「お前ら! あんな奴らは俺に任せれば……」
「一人で四人の相手なんて無理よ」
「相手が四人ならこっちも四人。それならいいでしょ」
フィアットとキャニーの言葉を聞き、スネックは嫌そうな顔をしたが、銃剣を回してボーノたちにこう言った。
「仕方ない。行くぞ、お前ら!」
スネックの声の後、スネックたちは相手に向かって走って行った。その隙に、クリムたちは上の階に向かった。タルトは走りながら、スネックたちの無事を祈った。
アロウは徐々に近づくクリムの魔力を感じ、震えていた。雑誌を読んでいる中、アロウが震えていることに気付いたポーカーが声をかけた。
「今日はそんなに寒くないわよ」
「武者震いだ。あと少しでクリムがここに来る。その時が奴の最期の時だ」
そう答えた後、アロウは笑い始めた。ポーカーは急に笑い出したアロウを見て、ため息を吐いて呟いた。
「おかしいわねぇ、こいつを改造した時は頭をいじってないし」
一方、ギアントとの戦いを終えたレースンは、他のギルドの戦士にギアントとの戦いについて話をしていた。共に行動していた仲間が残極な最期を迎えたのを知った戦士は、精神が疲れ果てているレースンにこう言った。
「疲れただろう、後は我々がやるから休みなさい」
その言葉を聞き、レースンは頭を下げてこう言った。
「お言葉に甘えます。では……」
その後、レースンは休憩室に向かい、椅子に座った。疲れ果てた体と精神を休める中、外から強い魔力を感じ、急いで外に出た。
「敵か?」
「いや、セントラルタワーから強い魔力がぶつかっている」
ギルドの戦士の言葉を聞き、レースンはセントラルタワーを見つめた。
「一体あそこで何が……」
レースンの呟きを聞いた戦士の一人が、レースンに近付いてこう言った。
「どうやら、バカップルとエイトガーディアンが向こうに向かったようだ。あそこに、今回の騒動の黒幕がいるようだ」
「な!」
騒動の黒幕がセントラルタワーにいる。そのことを聞いてレースンは急いで向かおうとしたが、急に体が重くなった。
「ぐ……体が……」
「かなり疲れているようだな。まだ休んだ方がいい。その体でセントラルタワーへ向かっても役には立たない」
「はい……」
レースンはその場に座り、セントラルタワーを見つめた。




