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タルト、ハリアの村に来る

 クルーガーの事件が終わった数日後、シュウはギルドの自室の掃除をしていた。


「銃の部品がたくさんありますね」


「ああ。いざという時にスペアをたくさん用意してるんだ」


 掃除の手伝いをしているクリムは、銃の部品がしまってある引き出しを見てこう言った。そんな中、クリムは大事そうにしまってあるペンダントを見つけた。


「あ、このペンダント。ギルドの方にも持ってきてたんですね」


「ああ。小さい頃からのお守りみたいなもんだからな」


 シュウはそのペンダントを手に取り、昔の事を思い出した。


 まだシュウが幼いころ、自身の事をティラから聞かされていた。本当の母親が盗賊に殺され、自分だけが生き残った事。そして、身元の判断をするような物がないから、本当の母親や父親が誰だか分からないと。分かったのが、その母親が死に際に放ったシュウと言う名前、そして大事そうに持っていたそのペンダントだった。


 ペンダント自体は各地の土産物店で売られている安物だったため、盗む価値がないと判断されて残されたんだろうと、ティラは推理していた。


「唯一の母親の形見だから、無くさないようにちゃんと持ってろって師匠が言ってたな」


「先輩のお父さん……どんな方なんですかね?」


「分からん。本当にどんな人か分からんな」


 その時、勢いよく扉が開いた。


「久しぶりの休みだから遊びに来たよー」


 中に入って来たのはシュガーだった。シュガーはシュウが手にしているペンダントを見て、興味を持って近付いてきた。


「あー、それってオルゴール型のペンダントだよね。それに一致した鍵がないと開かない奴」


「何だ、知ってるのかシュガー」


「うん。これ有名なお土産だよ。少しおしゃれだし、値段も安いからお土産に最適だって」


「結構有名な物なんですね」


「結構古い型だけど、いつの?」


「多分、俺が生まれた時に販売されてたと思う。あまり詳しい事は分からないんだ」


 と、話している時だった。ミゼリーが慌ててシュウの部屋に入って来た。


「シュウ……皆。丁度良かったわ」


「何かあったんですか?」


「エイトガーディアンのタルトが来てるわ。あなたに用があるって」


 その言葉を聞き、シュウは驚いて声を上げた。




 ハリアの村ギルド入口。エイトガーディアンの人が来ているからか、村人やギルドの戦士達がタルト、そしてハヤテとナギを囲んでいた。


「いやー、有名なギルドの戦士がこんなド田舎に来るなんてねー」


「ありがたやありがたや。テレビでたまーに来る人を生で見られるなんてねぇ」


「あの……私は人間なので、拝まれても特に何もないんですけど……」


「テレビでタルトさんの活躍が流れてるから、皆知ってるのね」


 ナギはため息を吐きながら、小さく呟いた。だが、横のハヤテはピースで写真に応じていた。


「何してんの?」


「ファンサービス」


「はぁ、あほらし。さっさとシュウさんって人に会いに行きましょうよ」


「ああ……すみません、ギルドの方に入りたいもので……」


 タルトたちはギルド内へ入り、シュウが来るのを待った。数分後、シュウとクリム、シュガーが姿を現した。


「あ、あの人‼」


 少し前にシュウの写真を見たからか、ナギはシュウの姿を見て立ち上がった。


「えーっと……俺がシュウ・バイソンです」


「休みの中、本当にすまないね。私がタルト・クリーヴッ!?」


 タルトが自己紹介をしようとした時、ナギが突如シュウの目の前に現れた。その時の衝撃で、タルトは後ろに転んでしまった。


「私はナギ・グオールと言います。突然で済みませんが、メアドを教えてもらってもいいでしょうか?」


「ダメです」


 と、クリムが先輩に近付いてんじゃねーぞこのメスがオーラを発し、ナギを動揺させていた。


「クリムちゃーん。ちょっと落ち着いてねー」


 と言って、シュガーはクリムの尻を掴んだ。そんな中、ハヤテはシュガーの胸を見て、ボーっとしていた。それに気付いたナギが、ハヤテに延髄蹴りを食らわせてこう言った。


「何胸を見てるのよ? セクハラ野郎‼」


 ハヤテとナギの喧嘩を無視し、タルトは苦笑いでこう言った。


「すまないね……あれでも、彼らは一応エイトガーディアンなんだよ……」


「そうですか……」


「話がそれたね。本題に入ろう」


 タルトはそう言って、胸ポケットから小さなおもちゃの鍵を取り出した。それを見て、シュガーが声を出した。


「それって、あのペンダントの鍵?」


「そうだ。少し……確かめたいことがあってここに来たんだ」


「確かめたいことって?」


「シュウ君、君は鍵がないオルゴール型ペンダントを持ってるかい?」


 その言葉を聞き、シュウは慌ててペンダントを取りに部屋に戻った。しばらくし、シュウはペンダントを持ってタルトの元へ戻ってきた。


「これです」


「……少し……貸してくれないか?」


「はい」


 シュウからペンダントを取り出し、タルトはペンダントの鍵穴に鍵を刺した。すると、ペンダントのふたが開き、途切れ途切れだが音楽が流れだした。


「鍵が開いた」


「何でこの人があのペンダントの鍵を……」


 流れる音楽を聴き、タルトはその場で立ち止まっていた。


「あの……タルトさん?」


「……名前が同じなんだ。17年前、盗賊に襲われて行方不明になった息子の名前と……君の名前が……」


 タルトの言葉を聞き、クリムは察した。


「じゃ……じゃあまさか……あなたは先輩の……」


「ああ……私が……シュウの父親だ」

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